平均年金「月14万円」だが…2024年〈年金減額の見通し〉に高齢者、絶望「どう生きていけばいいのか」

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厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』が発表され、公的年金の最新事情が明らかとなりました。そこから見えてきたのは、先行き不安な年金事情。みていきましょう。

最新年金月受取額…厚生年金受給者平均「14万4,982円」

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、2022年、厚生年金受給者の平均年金受給額は老齢厚生年金で月額14万4,982円。65歳以上の受給権者*の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円でした。

*裁定手続きにより年金もしくは一時金を受ける権利(受給権)が確定した人を受給権者、受給権が確定し実際に給付を受けている人を受給者という

また国民年金受給者の平均年金受給額は老齢年金(加入25年以上)で月額5万6,428円。基礎のみ、共済なし・旧国年の老齢年金受給者の平均年金月額は5万1,607円でした。

遡ること10年前となる、2012年。厚生年金の平均受給額は月額15万1,374円、国民年金は月額5万4,856円。さらに10年遡って2002年。厚生年金の平均受給額は月額17万3,565円、国民年金は月額5万2,291円でした。厚生年金は、この10年で4%減、20年で16%ほど減少しています。

また、2022年度の年金受給額を年齢別にみていきましょう。60〜64歳で大きく受取額を減らしているのは、繰上げ受給によるもの。現在、1ヵ月先に年金をもらうと減額率は0.4%。最大で24%の減額となります(昭和37年4月2日以降生まれの人)。また厚生年金は80代では15万円台となり、85歳で16万円に近づきます。他の年代に比べて平均受取額が多いのは、法改正によるところが大きいと考えられます。(関連記事:『【早見表】年齢別「平均年金受取額」…〈令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況〉』)。

さらに月受取額の分布をみていきます。厚生年金月受取額が平均以下となるのは、48.0〜53.9%程度。

また月10万円に満たないのが22.7%。さらに月5万円未満は2.0%と、50人に1人の水準です(関連記事:『【早見表】国民年金・厚生年金年金月受取額」分布…〈令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況〉』)。

マクロ経済スライド発動で、2024年は「年金目減り」の見通し

さまざまな角度から年金の受給額についてみてきましたが、日本の年金事情、良好とはいいがたいことが、どことなく感じられたかもしれません。また2024年度、公的年金の支給額は引き上げとなる見通し。ただし給付を抑制する「マクロ経済スライド」が発動となり、実質では目減りするといわれています。

マクロ経済スライドは、年金の増額幅を物価や賃金の伸びよりも小さくするよう調整するもので、年金財政を維持する仕組みとして2004年度に導入されました。年金保険料は現役世代の負担増に歯止めをかけるため上限を固定。その範囲で支給を賄うため、給付を少しずつ抑えていく必要があったためです。

しかしマクロ経済スライドは、デフレ下では発動できないルールがあり、導入以来、実際に発動されたのは23年度までに4回だけ。給付を抑制しきれずにいたわけです。

マクロ経済導入当時、給付抑制は2023年度に終了する予定でしたが、現在は国民年金(基礎年金)の抑制は2046年まで続くとされています。それに伴い、年金の目減りは続き、給与水準も下がり続ける見通しです。また国民年金の給付水準を維持、底上げを目指し、保険料を納める期間を60歳→65歳と、45年間にする検討も始まっています。

日本の公的年金制度は「100年安心」と称し、保険料さえ払っていれば「年金がもらえない」ということはないでしょう。ただこれまでの流れをみても、いまの現役世代が実際に年金をもらうようになったとき、現行制度と同じではないと考えるほうが自然ですし、受給額も同水準というわけにはいかないのも明白です。

厚生労働省『2022年 国民生活基礎調査』によると、「総所得に占める年金の割合が100%」という高齢者世帯は44%、「80〜100%」が16.5%。年金の依存度が8割以上の高齢者は6割にものぼります。そして暮らしぶりについて「苦しい(「大変苦しい」と「やや苦しい」の合計)」と回答した高齢者世帯は48.3%と半数近くにも上りました。

年金が頼りの高齢者にとって、物価高は脅威。総務省が発表した2023年平均の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.0%上昇。特に上昇が目立ったのが生鮮食品で8.0%増でした。

単月でみると、2023年12月の東京23区の消費者物価指数は、価格変動の大きい生鮮食品を除いて、前の年の同じ月に比べ2.1%上昇。伸び率は2ヵ月連続で鈍化し、急激な物価上昇に出口が見えてきました。それでも年金の実質目減りの見通しは変わりません。

――どう生きていけばいいのか

年金頼みの高齢者にとって絶望的な局面が続きます。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

厚生労働省『2022(令和4)年 国民生活基礎調査』

総務省『消費者物価指数(CPI)結果』