登録販売者と薬剤師の違い、説明できますか? 現役薬剤師が詳細を解説

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薬を販売する代表的な職業と言えば、「薬剤師」を思い浮かべる方が多いと思いますが、たまにドラッグストアなどで「登録販売者」という名札を付けた方も見かけます。例えばドラッグストアで薬を購入するときに、登録販売者の方から薬の説明をされることもありますが、登録販売者と薬剤師の違いはご存知でしょうか? 今回は登録販売者について薬剤師の山口さんに詳しく説明していただきました。

監修薬剤師:
山口 佳蓉(薬剤師)

2018年北海道医療大学卒業。大学卒業後は、大手調剤薬局に就職。北海道内の調剤薬局に薬剤師として従事する。様々な診療科の処方を経験。約5年間の臨床経験を経て、2023年6月からライター活動を開始する。薬剤師ライターとして「正確な情報をもとに、健康を読者に届ける」をモットーに執筆活動中。

登録販売者と薬剤師の違いは?

編集部

登録販売者と薬剤師の大きく違う点は何ですか?

山口さん

登録販売者と薬剤師では、販売できる一般用医薬品薬の分類が異なります。一般用医薬品は以下の3つに分類されます。

第1類医薬品:薬による副作用や飲み合わせのリスクで、服用に特に注意が必要な一般用医薬品

第2類医薬品:薬による副作用や飲み合わせのリスクで、注意が必要な一般用医薬品

第3類医薬品:薬による副作用や飲み合わせのリスクで、上の2つより安全な一般用医薬品

これらは副作用や他剤併用のリスクで分類されています。第1~3類が販売できる市販薬ですが、登録販売者は第2類、第3類医薬品のみ取り扱えて第1類医薬品は販売できません。薬剤師が不在であったとしても、登録販売者が代わりに第1類医薬品を販売することは禁じられています。しかし、一般用医薬品の多くが第2類、第3類医薬品に該当しますので、登録販売者はほとんどの一般用医薬品を取り扱えます。

編集部

登録販売者は国家資格ですか?

山口さん

登録販売者は国家資格には該当しませんが、総務省より「国が認めた資格」と認定されています。薬剤師などほかの国家資格と同様、一度取得すると一生仕事に活用できます。

※参照:総務省, 国の資格制度一覧
https://www.soumu.go.jp/main_content/000158239.pdf

編集部

登録販売者と薬剤師では、資格の取得はどちらが難しいですか?

山口さん

難易度は格差があり、薬剤師の方が圧倒的に難関です。登録販売員の場合、取得までにかかる期間は3か月~半年程度で、受験資格も学歴や経験などの条件はありません。一方、薬剤師の場合は取得までに最短で6年必要です。大学の薬学部で6年制薬学過程を修めることで国家試験の受験資格が付与され、授業やテストも難しいために取得までに6年以上かかってしまう方もいらっしゃいます。

編集部

薬剤師よりも登録販売者の資格を取るメリットはありますか?

山口さん

登録販売者の方が資格取得までの時間と費用が圧倒的に少ないことです。6年制大学の卒業が必須である薬剤師は、時間も費用も莫大にかかります。一方、登録販売者はしっかり勉強すると半年以内での取得が可能です。また、薬剤師は薬学部に通わなければ資格取得ができませんが、登録販売者は通信講座など独学で取得可能です。もちろん、専門学校に通うなどの方法もあります。

編集部

登録販売者の資格があれば、調剤はできますか?

山口さん

薬剤師の指導下や最終確認が必要となりますが、計数調剤(錠剤や軟膏チューブなどの取り揃え)は可能です。一方、軟膏・粉薬・シロップ剤の計量や混合調剤は薬剤師のみで、登録販売者はできません。

編集部

薬学部に在学しながら登録販売者の資格は取れますか?

山口さん

薬学生の方でも登録販売者の取得は可能です。販売従事登録を行えば、薬剤師になる前でも実際に登録販売者としてアルバイトで働くこともできます。薬学部で学ぶ内容と登録販売者の資格取得の勉強内容は重複している部分があるため、知識の定着にもつながるでしょう。

登録販売者になるためのステップは?

編集部

登録販売者の資格を獲得するにはどうしたらよいでしょうか?

山口さん

最初にやることは、登録販売者の資格試験合格のための勉強です。登録販売者になるためのスクールや講座、問題集はたくさんあります。どのように学習していくかご自身に合っている方法を選びましょう。そして、年1回実施されている資格試験に受験し合格すると、登録販売者の資格を獲得できます。

編集部

試験に合格するだけで登録販売者として働けるのでしょうか?

山口さん

試験合格だけでは就業できず、働く前に「販売従事登録」が別に必要となります。「販売従事登録」の申請先は、就業先の都道府県になります。詳しい提出方法や必要書類については、自治体のホームページなどで確認しましょう。

編集部

登録販売者としてひとり立ちするためのステップアップはありますか?

山口さん

「販売従事登録」に加えて、実務経験を積んで管理者要件を満たすことが必要です。管理者要件を満たす条件はさまざまですが、最短で1年ほどでひとり立ちすることが可能です。また、実務経験を証明するためには、以下の「実務従事証明書」と「業務従事証明書」が必須になるため注意しましょう。

実務従事証明書:一般従事者としての実務期間を証明する書類

業務従事証明書:登録販売者としての実務期間を証明する書類

登録販売者はどこで働くことができる?

編集部

登録販売者の主な就業先はどこですか?

山口さん

登録販売者がいる場所として、ドラッグストアや調剤薬局をイメージする方が多いでしょう。そして最近だと、スーパーやコンビニ、漢方薬局でも登録販売者は働いています。このような場所は登録販売者が少ないため、ひとりでも就業可能な「管理者要件」が必要になる場合があります。逆に、調剤薬局は薬剤師が常駐しているため、登録販売者として薬の販売をするよりは、処方箋の入力や受付など調剤事務と兼務するケースが多いでしょう。

編集部

就業する場所で業務の違いはありますか?

山口さん

どの就業先でも共通するのは、薬の相談です。また、就業する場所によっては、以下のように別の業務と兼任するケースがあります。

調剤薬局:処方箋入力や受付・会計などの調剤事務の業務を兼任

コンビニ・スーパー・ドラッグストア:品出し・在庫管理・レジ打ち・清掃業務など一般の店員と同じ業務を兼任

不安な方は、登録販売者として就業する前に就業先に確認するとよいでしょう。

編集部

登録販売者は全国で働けますか?

山口さん

登録販売者の資格があれば、全国のドラッグストアやコンビニ・スーパーなどで働くことが可能です。就業する都道府県で申請先が異なりますので注意しましょう。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

山口さん

登録販売者となるためには薬剤師と同様、資格が必須となります。薬剤師よりも取り扱える市販薬の種類は少ないものの、薬の販売に携わりたい方や興味のある方は資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

登録販売者は、薬剤師よりも業務内容の範囲が狭い反面、資格取得までのコストと期間が少ないことがメリットとして挙げられます。登録販売者として実際に働くためには、都道府県へ申請が必要となるため注意しましょう。薬に関する仕事をしたいと思う方は、ぜひ登録販売者の資格について調べてみてください。

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