「老後は公的年金と退職金で悠々自適」という時代はとっくに終わり、自助努力が必須の時代に。

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 かつては定年まで同じ会社で働き、退職金を老後資金に充てると考える方が大多数でした。ところが近年は、退職金のない会社も多く、また退職金があっても転職等による勤続年数の不足から思った額を受け取れないというケースもよく耳にします。それでは「退職金のない夫婦」は、老後資金をどのように形成すればよいのでしょうか。マネレボ株式会社代表でファイナンシャルプランナーの大久保美伽さんにうかがいました。

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Q.そもそも夫婦2人の「老後資金」はいくら必要なのでしょうか?

【大久保さん】 2019年に政府が公表した資料をもとにした報道によって「老後に2000万円」という数字が独り歩きしましたが、ご夫婦で老後資金がいくら必要かは、そのご夫婦次第ということになります。そもそもこの「2000万円」というのはあくまでも65歳以上の平均的な収入と支出の差額を計算したもので、当然すべての方に当てはまるものではないからです。受け取れる年金や月々かかる生活費、持ち家の有無などを考慮し、自分の場合はいくら必要かを計算する必要があります。ざっくりですが計算方法を紹介しますので、自分なりの老後に必要なお金を計算してみましょう。

▼老後に必要なお金の算出方法

老後に必要なお金=老後の支出−(老後の収入+今の金融資産)

老後の支出:(老後の月々の生活費×12ヵ月×30年間)+一時的な支出

※老後の生活費は一般的には現役時代の生活費の8割で計算されます

※65歳で定年、95歳までの生活費と考えて30年としています

※一時的な支出とは、リフォーム費用や車、介護など一時的にかかる費用のことです。

老後の収入:ご夫婦の月々の公的年金×12ヵ月×30年+その他の収入

※その他の収入とは、相続のご資金や保険の満期金、不動産や株式からの収入など該当するものがあれば+します。

Q.「退職金なし夫婦」は具体的にどのような準備をすればよいでしょうか。

【大久保さん】 定年退職後の退職金の平均額は、全体平均で約2,000万円、大卒で大企業なら2,648万円、大卒で中小企業なら1,026万円が相場です(※)。ところが、ここ15年で退職金は減少傾向で退職給付制度そのものがないという会社も増えています。退職金がない方だけでなく、ある方においても、「老後は公的年金と退職金で悠々自適」という時代はとっくに終わり、自助努力が必須の時代になったと言えます。

 老後に向けた自助努力とは自分で資産形成をするということになるわけですが、具体的には国が用意しているiDeCoや新NISAの活用が資産形成の第一歩になります。

「iDeCo」や「新NISA」は、運用益が非課税になるなど税制面で優遇を受けながら将来に向けて資産を形成できる制度です。

 投資ですのでもちろんリスクはありますが、長期、分散、積立という投資の原則を守った投資を実践することでリスクを抑えながらも預貯金に比べると効率的に資産を増やすことができます。

 これからは公的年金も退職金も一層減少傾向が進んでいくと言われています。時代は厳しくなる一方投資環境はよくなっています。年金や退職金に依存するのではなく、若い時から時間を武器に資産形成をしていくことでゆとりのある老後を送ることは十分可能です。

 新NISAがスタートした今年こそ将来に向けて資産形成をスタートしていただければと思います。

※令和3年退職金、年金及び定年制事情調査|令和3年賃金事情等総合調査(確報)|中央労働委員会 参照

記事監修/大久保美伽

ファイナンシャルプランニング技能士1級、CFP、証券外務員1種、簿記2級、2級DCプランナー。元銀行員・大手金融機関勤務歴15年。約20年の会社勤めを経て2020年に独立。2021年にマネレボ株式会社を設立。どこの金融機関にも属さず保険も証券も販売しない中立な立場で普遍的なお金の知識と正しいお金の増やし方を伝えている。現在は老後に3,000万円差がつくオンライン投資講座を主宰。