全日本選手権男子フリー、白と黒の衣装で臨んだ大島光翔【写真:矢口亨】

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フィギュアスケート全日本選手権・男子フリー

 フィギュアスケートの全日本選手権(長野・ビッグハット)は23日、男子シングルのフリーが行われた。「スタァ」の愛称で親しまれる20歳・大島光翔(明大)は合計189.36点。21日のショートプログラム(SP)で愉快にスーパーマリオの世界観を表現したが、この日は一転して大人っぽい雰囲気の「ムーラン・ルージュ」を演じた。今年亡くなった祖父への想いを胸に「おじいちゃんに自分の演技で恩返しできれば」と今後も唯一無二のスケートを貫く。

 21日のSPでは、スーパーマリオの世界観を表現。この日は大きく雰囲気が変わった。白と黒の衣装、曲目ともにしっとりした大人の演技に。冒頭は4回転ルッツを予定していたが、ジャンプが抜けて2回転となった。ミスもあったが、フィギュアファンを楽しませた姿はまさに「スタァ」だった。

「悔いは残らず、思い切り自分の演技ができた。SP、フリー含めて1つの作品。SPからの落差だったり、大島光翔の幅じゃないですけど、皆さんに知ってもらえたら嬉しいなと思っていました」

 SPではスーパーキノコ、ファイアフラワーなどのゲームアイテムが装飾された独特の衣装で、ネット上でも話題に。ミスがあったため演技には悔いが残り、落ち込んだものの、周囲の声に勇気づけられた。「自信を無くさずフリーも滑れて感謝しかない」。心残りがあるとすれば、天国の祖父に4回転ジャンプを見せられなかったことだ。

いつしか「スタァ」と呼ばれるように 理由は不明も「光ってるね!って」

「誰よりも僕のスケートに対して応援の気持ちを込めて、欠かさず見てくれていた」

 大島の4回転ジャンプを見るのが祖父の夢だった。リンクで撮った思い出の1枚を頭に浮かべて明かす。「(3位になった)東日本選手権の後に不幸があって、夢だったり、思いが悔いの残る形で終わってしまった。これからもずっと見てくれていると思う。おじいちゃんに自分の演技で恩返しできれば」。感謝の心を、ずっと忘れない。

 いつしかファンに「スタァ」と呼ばれるようになった。きっかけは分からない。「でも、よく『光ってるね!』って言われるので(笑)。お褒めの言葉と思って受け取っている。皆さんから言っていただいて本当にうれしいなって」。父の大島淳コーチは元選手で元プロスケーター。アイスショーでも活躍し、その存在感は父親譲りだ。

 今大会は22位。得点評価の競技だが、必ずしもそれだけじゃない面もある。「SPは演技の内容と比例せず、自分の持ち味が多くの人に知ってもらえた。点数に固執したスケートをしていたけれど、そういう自分から解放されるようなきっかけにもなった」。新しい経験を一つ重ね、スケーターとしてより輝きを増していく。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)