スペイン戦で見事なミドルを決めた名和田。勝利には導けなかったが、実力の一端は示した。写真:佐藤博之

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 大会通算5ゴール。韓国との決勝では鮮やか直接FKを決めてヒーローとなった。U-17アジアカップで得点王&MVPに輝き、評価を高めて、注目度は右肩上がり。ワールドカップでの活躍を誰もが待ち望んでいた。しかし――。FW名和田我空(神村学園)にとって、世界の舞台でのパフォーマンスは納得いくものではなかった。

 インドネシアで開催されているU-17ワールドカップ。日本の全4試合のうち、名和田に与えられたプレータイムは合計138分。2試合で先発したが、1ゴールしか挙げられなかった。

 11月21日に行なわれたラウンド16のスペイン戦。1−2で敗れた後、ミックスゾーンに現われた名和田はぼう然とした表情で言葉を紡いだ。

「本当にもう終わりかという気持ち」

 あふれてくる感情を噛み締めるように話した名和田にとって、今大会はアジアと世界の差を痛感させられる場となった。

 14日のグループステージ第1節・ポーランド戦(1−0)。名和田は本職のFWではなく、右サイドハーフで起用された。佐藤龍之介がコンディション不良でベンチスタートになり、白羽の矢が立ったのだが、70分に途中交代した。

 守備のタスクに追われ、アイデアに富んだプレーや右足から繰り出す高精度のシュートは影を潜めてしまう。そして、何より強度が足りず、相手のパワーに押されてほとんど何もさせてもらえなかった。
 
 初戦のパフォーマンスでは森山佳郎監督を納得させられず、2、3戦目はベンチスタート。いずれの試合でも最後まで出番は巡って来ず、躍動するチームを外から眺めるしかなかった。

「フィジカルがある戦いを考えた時に、やっぱり選択肢になっていかないといけない」

 3戦目の後に森山監督が名和田の起用についてそう言及したように、強豪国に対抗できるだけのパワーがなかったのは事実。ただ、そうした指摘も期待をしているからでもある。

「1戦目は自分の得意じゃないところでプレーをして、守備に追われて、2、3戦目は出してもらえず、相当悔しい想いをして、このゲームにかける思いは人一倍強かったと思う」

 森山監督の想いに応えるべく、名和田は腐らずに来るべき時に備えて準備を進めた。

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 そして、ベスト8進出を懸けたスペイン戦で先発に名を連ねる。

「あいつはゴール前で足を振り切れる。スペースが空くのも分かっていたし、分析通り。一振りできるスペースが生まれて、そこでクオリティは出してくれた」(森山監督)

 日本は早々に失点し、1点ビハインドの状況で迎えた41分。柴田翔太郎(川崎U-18)からパスを受けた佐藤龍之介(FC東京)が右サイドを抉って折り返すと、ペナルティアーク付近に走り込んだ名和田は相手ひとりを外し、冷静に右足を振った。

 シュートコースはDFの間しかなかったが、ここしかないというコースに打ち込んでGKが一歩も動けないゴラッソを決めた。ただ、その後、チームは失速し、後半の終盤に決勝点を献上。無念の敗退となった。

「得点はできたけど、チームが勝たないと意味がない。それが相手と自分のアタッカーの差だった」
 
 大会中にもう一度チャンスを得て、目に見える結果を出した。しかし、チームは敗戦。どんなに押し込まれても、どんなに苦しい状況でも、少ないチャンスを仕留めて勝利に導く――自分が理想とする姿は体現できず、力不足を痛感させられた。

「ゴリさんからも言われて、向き合わないといけない。この4試合、本当にチームに貢献できず、アルゼンチン戦とセネガル戦に出られなかったのは、自分の強度の部分が課題。神村学園に戻って一番強度を出して、ここから始まるぞという気持ちでやっていかないといけない」

 悔しさはそのまま、さらなるレベルアップの原動力になる。

「前を向いて、ここから成長しないといけない。自分はまだまだこれから。本当に、この経験を無駄にしたくない。スペインと再戦したら倒せるように」

 初めての大舞台で味わった屈辱は忘れない。良いことも悪いことも、経験はすべて自分に返ってくる。そう信じて、名和田は次の目標に向かって走り出す。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)