首都高の上限料金が一気に500円以上引き上げられてから1年半ほどが経ちますが、阪神高速でも上限料金の課題が顕在化しているようです。

1320円で据え置きのままの阪神高速「上限料金」

 国土交通省は2023年11月10日、道路政策を話し合う有識者審議会「第60回国土幹線道路部会」を開催。高速道路の料金施策などについての検討で、阪神高速道路の料金について、同社側の説明も交えて議論が交わされました。
 
 ここで焦点となっているのが「上限料金」です。


阪神高速13号東大阪線の渋滞状況(国土交通省の審議会資料より)。

 阪神高速のETC料金は2017年から対距離制となっており、普通車で下限300円、上限1320円に設定。1320円分以上走っても、料金は上がりません。これは510〜930円のエリア制料金から変更するうえでの“激変緩和措置”として導入されていました。

 この料金体系は首都高も同じでしたが、2022年4月、上限料金が普通車で1950円まで一気に引き上げられたのは記憶に新しいところ。ETCで短距離利用するうえでは影響ないものの、現金車は距離によらず一律で上限料金を徴収するので、実質的に値上げとなりました。

 現状の阪神高速の料金では、発着点によってはNEXCOをまたぐルートの方が高くなるため、都心を経由するほうが都心を迂回するより割安になることがあります。

 阪神高速で上限料金を超える距離(普通車の場合32.3km以上)を走行するクルマは全体の約12%あり、「長距離利用になるほど距離当たり単価が低くなり、不公平感が存在」すると阪神高速道路は説明しています。「道路の損傷度合いと費用負担のバランスが崩れ、原因者負担の原則にも合致しない」ともされています。

やっぱり深夜割引も?

 2020年には6号大和川線が開通し、都心を迂回する経路の選択肢が増加。阪神高速道路はこれを機に、都心部で長期の通行止めを伴うリニューアル工事を進めているほか、今後は2号淀川左岸線の延伸など、迂回ルートの選択肢がさらに増える見込みです。そうしたなかで、「適正な経路選択の実現の観点からも改善が必要」とされています。

 また、首都高では上限料金引き上げと同時に深夜割引も新設されましたが、阪神高速でも「夜間等には交通量には十分な余裕」があるとしています。こちらも合わせて検討されると見られます。


阪神高速の現状の上限料金は1320円(乗りものニュース編集部撮影)。

 部会では各団体のヒアリング内容も提示されていますが、関西経済連合会は「既に整備済みの環状道路を有効に活用して都心部の交通混雑を緩和させるため、迂回利用割引制度の導入が必要」「阪神高速の利用料金改定にあたっては、首都高速の料金改定時に採用されたものと同様の割引制度の導入・拡充が必要」と述べています。

 これら内容は、首都高の上限料金引き上げの際にも同様の課題が指摘され、議論がなされています。阪神高速の上限料金引き上げも、規定路線なのでしょうか。