大手私鉄の中古車両を導入するケースが多い地方私鉄ですが、伊予鉄道が67年ぶりに「完全新設計の新型車」を導入します。どのような背景があるのでしょうか。

新型車両は流線形のフォルムで未来感たっぷり

 伊予鉄道は2023年11月14日(火)、新型車両7000系を導入すると発表しました。同社によると、1958年に導入されたモハ601・602以来、67年ぶりとなる完全新設計の新型車両になるといいます。


伊予鉄の3000系(乗りものニュース編集部撮影)。

 伊予鉄は、松山観光港などに向かう電車を「郊外電車」、路面電車を「市内電車」と呼んで区別しています。新型車両は「郊外電車」の横河原線、高浜線、郡中線で運用する予定です。
 
 新型車両は「愛媛らしさ」を表現した鮮やかなオレンジ色で、流線形のフォルムが特徴。1両あたりの車体長は、既存車両と同じく18mです。
 
 車内にはLCD式車内次駅案内表示器を備えるほか、全扉上部にデジタルサイネージを設け、中吊り広告は廃止するとしています。英語車内アナウンスも実施して外国人観光客に対応します。
 
 今後は、2025〜27年度にかけて毎年6両(2編成)を導入し、合計で18両を近畿車両で製造する予定。投資額は約39億円で、環境省の国庫補助金を活用するとしています。
 
 地方私鉄では、大手私鉄の中古車両を導入するケースが多く、新規設計の新造車両を導入するのは珍しいケースになります。
 
 伊予鉄道は、新造車両を導入する理由について「環境性能やバリアフリーを考慮し、新造車両を導入することにしました。特に大きな決め手となったのは環境性能です」と話します。
 
 新型車両は軽量ステンレス車体で、VVVFインバータ制御を採用するほか、補助電源装置の高効率化などを図る予定。これにより、既存車両より使用電力を約50%削減するとしています。

3種類ある既存車両はどうなる

 伊予鉄道の郊外電車には現在、京王電鉄5000系を改造した700系と、京王電鉄3000系を改造した3000系、伊予鉄が自社発注で製造した610系があります。
 
 610系は東武鉄道20000系をベースとした自社発注車であるものの、車体だけ新規設計で、京王5000系の機器類を流用しているため、「完全新規設計」ではありません。
 
 3000系はVVVFインバータ制御に改造されており、LCD式の車内案内表示器を備えるなど、大都市圏の通勤電車と比較しても遜色ないレベルまでリニューアルされています。
 
 伊予鉄道によると、「今回導入する新型車両の置き換え対象は700系です。610系と3000系に関しては今後も引き続き使用していきます」とのこと。700系は新型車両の導入に伴い、順次廃車するとしています。