第71回菊池寛賞を受賞した東京新聞社会部記者の小沢慧一さんが11月6日の大竹まことゴールデンラジオに出演。今年8月に発売した著作『南海トラフ地震の真実』について伺った。

大竹「この『南海トラフの真実』の帯には、「発生確率70%～80%」と書かれていて、その横に「実は20%！？」とあります。菊池寛賞の受賞理由はこう書かれています。「30年以内に70%～80%という『南海トラフ』地震の発生確率は水増しされており、予算獲得などのために科学が歪められる実態を丹念な取材で明らかにした」。私共は巷の噂とかで「南海トラフが来るぞ」とたくさんあちこちで言われて、脳の半分以上は来るんじゃないかなと思っておりましたが、そうじゃない？」

小沢「確率で言うとそうではない。まず私は、『南海トラフ』が来ないと言ってるわけではありません。地震が来ないから今まで備えて損したと思われるのは、そういうことではないんですね。ただ、70から80%という数字を出す上では、かなりいろんなことが水増しされるという実態があって、地震学であったり研究であったり確立を出す上での政府・各省庁の予算の獲得の競争であったり、そういうものがすごく絡んだ上で、この数値が出ているということを、この本でお伝えしたかったと思っております。」

大竹「各省庁は年間予算がほしいわけですよね。そのためには『南海トラフ』の予測も、水増しされていることが、各省庁が予算をとることに優位になる？」

小沢「都合がいいということですね。1970年ぐらいから東海地震というのを皆さん聞いたことあると思うんですけども、それを広げたのが『南海トラフ』です。2000年ぐらいから『南海トラフ』という名前が呼ばれるようになったんですけど、もともと東海地震が明日来るかもしれないと言い続けていて、それで地震を予知しようなどの試みがされて、多くのお金が研究者や各省庁に降りていく、そういう体制が出来上がっているんですね。地震を予知するの「予知」とは、明日地震が起きるということを計測などを見ながら言い当てるということなんですけど、これはもう全く科学的根拠がないと、ほぼ決着がついたと言われています。」

大竹「なにかの記事で読んだんですけど、本当の予知はできないんじゃないかっていう意見が出てきてる、ってところまでは僕も知ってるんですけど、予知は無理なんですか？」

小沢「今のところは無理で、それはもう2013年に政府も認めてるんですね。もともと地震予知ができると言って、予知できたらデパートとか閉めて電車を止めて、みんなで避難しましょうという法律まで作ったんですね。それで予算をつぎ込んで対策しましょうって言ってたんですけど、当時から予知に科学的根拠がないことはわかっていたんですね。」

大竹「ええ？」

小沢「ただ、それを言っちゃうと、今度は研究費が出なくなりますよね。だからみんなそこまで言わなかったです。できないってことをはっきり言わなかったんですね。結構お茶を濁すような感じで、これから高精度を上げるとか、そういうようなことを言いつつやっていたと。」

大竹「でも本来ならば、来る来ないに関わらず、予算が取れる取れないじゃなくて、ある程度の予算は確保しておきつつ、いろんな研究はしてほしいと私は思うんですけど。」

小沢「おっしゃる通り。それで研究をして行けばいいんですね。ただ予知をしたいっていうのは、ある種、国・国民の願いでもあるんですけどね。それを実現してほしいと、お金をつぎ込む気持ちは分かるんですけど、できないことを、できるふりするのはよくない。それが結局出来ないと分かったのが阪神大震災です。神戸の方では地震が起きないとか、そういう神話みたいなのができていましたけど、そういう油断によって、あの被害が起きてしまったんです。次は東海地震が起こる。それは予知できるだから。だからそれで逃げればいいと、そういう間違った認識が国民に広まって起きてしまった。そこで当時の科技庁長官だった田中真紀子さんが怒って、こんな予知にお金かけるんだったら元気なナマズ飼った方が良いって言い放ち、一回政府の体制を解体して今の政府の研究機関を作ったんですけど、実態は看板の架け替えに過ぎなくて、中にいる人や体制はあまり変わってない現状があります。」