台湾映画「I(アイ) 〜人に生まれて〜」の一場面 ©2021 Flying Key Movie Co., Ltd. All Rights Reserved.

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(台北中央社)性分化疾患を抱える少年を主人公にした台湾映画「I(アイ) 〜人に生まれて〜」(生而為人)が22日に日本で公開される。メガホンを取ったのは中国出身の監督、リリー・ニー(倪曜)。脚本も自身で手掛けた。ニー監督に同作の製作の背景などを書面インタビューで聞いた。

性分化疾患(インターセックス)とは、染色体や性腺、内性器、外性器が多くの人とは異なる型をとる疾患群のこと。主人公の14歳の少年シーナンはある日、突然の腹痛でトイレに駆け込んだところ、赤く染まった尿を目の当たりにする。病院での検査で性分化疾患だと判明するが、両親はシーナンには病気のことは伝えぬまま、性転換手術を受けさせる。女性の「シーラン」になったシーナンは自身の性別への認識の違いに悩みつつ、新しい街で生活を始める―という物語が展開される。性分化疾患の少年が自分の生き方やアイデンティティーに葛藤する姿を描いた作品だ。

当初は中国で製作する予定だったものの、検閲制度の問題で断念。プロデューサー2人が台湾人だったことに加え、台湾が性の多様性を題材にした映画の製作に対し「非常にオープン」(ニー監督)であることから、台湾での製作が決まった。撮影は2020年に台湾で行われ、台湾では21年に公開された。

同作の主人公はニー監督の親しい友人がモデルになっている。ニー監督は友人を長い間同性愛者だと思っていたが、後になってインターセックスだと教えられ、衝撃を受けた。これがインターセックスについて関心を持つきっかけになったのだという。

台湾では2019年に同性婚がアジアで初めて合法化され、今年7月にはジェンダー平等関連3法の改正案が閣議決定されるなど、多様な性の受容やジェンダー平等を実現するための動きが進められている。ニー監督は「私は中国本土で育ったので、台湾のことはあまり知る機会がありませんでした」と明かしつつ、台湾映画を数多く見ることで「(台湾が)さまざまな性的指向やジェンダー問題に対して寛容で、映画製作に自由があることを知りました」と語る。

日本での公開を前に、同作で伝えたい最も重要なメッセージは「世界中でインターセックスの人々に対する『性別適合手術』が止められることを願っている」ということだとニー監督は強調する。「人間として生まれた以上、私たちはみな平等で自由であり、体の自己決定権について他人に干渉されるべきではありません」と訴えた。

(名切千絵)