人気オンラインゲーム「フォートナイト」の開発元として知られるEpic GamesとAppleは、これまでアプリ内課金や独占禁止法などの争点で何度も法廷での論争を繰り広げてきました。2023年4月に行われた控訴審において「AppleはApp Storeのアプリに外部決済オプションへ誘導することを認めるように」との判決が下されたものの、大部分でAppleの主張が認められる結果となりました。この判断を受けてEpic Gamesは、最高裁判所に対して控訴裁が下した「外部決済オプションへの誘導」を係争中に有効にするように求めました。しかし、最高裁判所はこのEpic Gamesの申し立てを棄却しています。

No. 23A78 - Supreme Court of the United States

https://www.supremecourt.gov/search.aspx?filename=/docket/docketfiles/html/public/23a78.html



US Supreme Court refuses Epic bid to let App Store order take effect in Apple case | Reuters

https://www.reuters.com/legal/us-supreme-court-refuses-epic-bid-let-app-store-order-take-effect-apple-case-2023-08-09/



Supreme Court denies Epic’s request to open up App Store payments during appeals | Ars Technica

https://arstechnica.com/gadgets/2023/08/supreme-court-denies-epics-request-to-open-up-app-store-payments-during-appeals/

iOS向けアプリストアのApp Storeでは、アプリ内課金などの売上の30%が手数料としてAppleに徴収される仕組みになっており、以前から「手数料が高額すぎる」との開発者からの指摘が寄せられていました。そんな中、Epic Gamesは2020年8月に「EPICディレクトペイメント」という新たな支払方式を導入し、App Storeの決済システムによって徴収される手数料を回避することを計画していました。

一方でAppleはApp Storeを経由しないアプリ内課金を認めておらず、Epic Gamesの決定は規約違反だとして、App Storeから「フォートナイト」を削除しました。これに対し、Epic GamesはAppleを相手取って訴訟を起こし、2020年からEpic GamesとAppleの法廷での論争が続いています。

「フォートナイト」開発元のEpic GamesがAppleを提訴 - GIGAZINE



2023年4月24日にアメリカ第9巡回区控訴裁判所で行われた控訴審では、「App Storeでサードパーティーの支払いシステムを認めるように」という2021年9月の判決が支持された一方で、AppleがApp Storeにおいて独占禁止法に違反しているとのEpic Gamesによる主張は認められませんでした。この裁判では、Epic Games側からの10件の請求のうち、9件でAppleにとって有利な決定が下されました。

Apple対Epic Gamesの控訴審で「App Storeで外部決済システムへのリンクを禁止してはいけない」という判決、しかし大部分でAppleが勝利 - GIGAZINE



アメリカ第9巡回区控訴裁判所は2023年7月に、Appleに対してApp Storeの規約変更に応じるか、裁判所の判決を不服として連邦最高裁判所に上告するかを決めるための猶予として、90日間の期間を設けました。

これを受けて、Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOは「また正義は先延ばしになりました」と語っていました。





Epic Gamesは2023年8月7日、最高裁判所に対して「AppleによるApp Storeのルールを長い間そのままにしておくことは、Epic Gamesだけでなく、無数のユーザーやアプリ開発者を長期間にわたって傷付けることにつながります」と主張し、「AppleはApp Storeのアプリに外部決済オプションへ誘導することを認めるように」との控訴裁の判決をただちに発行するように請求しました。

Epic Gamesによる訴えが認められれば、アプリ開発者はApp Storeのアプリのページに、Apple以外の独自の決済システムへのリンクやボタンなどを表示することが可能になり、売上の30%が手数料として徴収される、いわゆる「Apple税」をただちに回避できることになります。

しかし、現地時間2023年8月9日、最高裁判所のエレナ・ケーガン裁判官は、Epic Gamesによる「Appleに対する命令の実施を事実上遅らせた控訴裁の決定を無効にすべき」との請求を棄却しました。



最高裁判所の決定について、記事作成時点ではEpic Games、Appleともにコメントを残していません。