増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ

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・松川議員のミスと位置エネルギー
すでに散々指摘されていますが、もちろん松川議員の行動は何一つ正当化できず、さらには元アイドルの今井絵理子議員の擁護という燃料投下によって、さらなる炎上となりました。事の善し悪し、研修の成果の有無だけでなく、こうした情報の取扱いによってそもそも政治家としてのセンスも疑われています。さらに私はそこにリスク管理の視点欠如も挙げたいと思います。

出張などでも仕事だけをする訳ではなく。食事接待や宴席、業務後の観光地訪問などはまああることでしょう。でもそんなアソビは黙っているのもおとな会社人のエチケット。中には出張の度にそうしたアソビ話だけをペラペラ自慢する輩もいますが、だいたい仕事ができない人物としてバカにされます。

東大法卒・外務官僚出身の超エリートである松川議員は、そんなことすら想像が及ばないほど浮世離れした感覚であり、またそうした待遇で文字通りの「外遊」をしていることが白日にさらけ出されました。この時点で政治家センスがゼロ以下です。女性問題の現地での意見交換や研修に意味があったかどうか判断できませんが、それでもよりによってこの時期に行くというセンスも最低です。

増税と物価高にあえぐ庶民は海外旅行なんて夢のまた夢。何とかいけるにしても超ハイシーズンで繁忙期割増の、こんな夏休みど真ん中ではなく、閑散期を選んで行けるのがせいぜい。という、状況などもちろん知らないし、知るつもりもないし、関心が無いことでしょう。

防衛政務官も務めた安全保障専門家、庶民からうらやまれる立場ですが、それは一方でミスがあれば足を引っ張られるという自らの「位置エネルギー」を考えていないようです。自らが批判される高リスク者という自覚や危機感はなかったのでしょう。

・就活で「自分の強みはコミュニケーション力」と言ってしまう学生
ESや面接指導を長年やっていますが、就活を「正解を当てるテスト」と勘違いしている学生は高偏差値・上位校と呼ばれる大学・院にも多く見られます。就活は採用する企業にとってビジネスの一環であって、テストではありません。ビジネスである以上、広い意味での「雇うメリット」、多くは採用することで得られる利益への期待から内定になるのです。

自分で「コミュニケーションに自信がある」と答えるのは、単にハードルを上げるだけなのです。目指すゴールは「この人はコミュニケーション能力が高いと『思わせること』」であって、自分で申告しただけで納得するはずがありません。学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)や大学院生に研究内容説明を求めるのは、そのガクチカの中身、ネタ、研究内容の価値を検証するためではなく、その説明能力を見たいからです。

私は長年大学院博士後期課程学生の民間企業就職を支援していますが、「役に立たない」とも批判される地味な基礎研究を行っている博士学生が、毎年何人も就職できています。ネタ勝負で採否は判断されないことは明らかで、求められるコミュニケーション能力とは、説明して相手を納得させたり、説得して物事を進める事業推進力を見ているからです。

・「有意義な外遊」「成果はある」と説明するコミュニケーション力
ESや面接で「学生時代にボランティアで活躍しました」「アルバイトでお客様の信頼を勝ち得ました」「サークル副部長でチームを優勝に導きました」というのは、どれも採用を決める上で、何の役にも立たないダメアピールです。なぜか?こうツッコんだら終りだからです。

「それってアナタの感想ですよね?」

エビデンスもなく、言った者勝ちで採否を決めるようであれば、そんな会社は危険です。

ボランティアもバイトも副部長も、何も問題ありません。しかし「そう言った」だけで採用するほどまぬけな人物が面接官を務めていたら、危ないといえるでしょう。

松川議員や今井議員は「(外遊は)実りがあった」「無駄な外遊ではない」と述べていますが、すべて「あなたの感想」以上の説明になっているでしょうか?

研修結果を発表するとも言っていますが、民間企業であれば、出張後すみやかに報告提出が求められます。「アナタの感想」などと揶揄する声を黙らせるコミュニケーション能力で、即座に報告を出し、ぜひ批判をねじ伏せていただきたいと思います。