純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

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まあ、もうあの会社はダメだろう。銀行はどこも事なかれ主義で、損保会社などのように、金融庁やマスコミにいろいろ後ろ暗いところをあれこれ嗅ぎ回られるより前に、先回りして、とにかくむちゃくちゃな難癖をつけてでも、いっせいにあの会社からはカネを引き上げる。あれだけの急拡大を自己資金だけでできているわけがないから、固定費や人件費で現金が失血しつづけ、肝心の買取運転資金さえもすぐに枯渇して、遠からずひっくり返る。

全国に三百店舗。それも、ロードサイドの一等地で、ビックというだけあって、その大型店の敷地面積は2000坪以上! たとえば、奈良橿原店は3000坪。50坪の戸建てが60軒も建つ計算だ。これらがもうすぐ、いっせいに放出される。もちろん、幹線道路沿いなので、分割して住宅地になんかにするのは、もったいないし、坪単価が合わない。そもそも、自社所有地ではなく、定期借地のところも多いだろう。ただ、その場合にも、地主は、もはや定期など期待できず、かといって、いまさら畑にも戻せず、更地にして寝かしてもカネにならず、いまからすでに始末に困っているはずだ。つまり、いまなら破格の安値で借りられる、底地が買える、ということ。

連中は、もともと超大型パチンコ店跡地などを取得しまくっていたようだが、地域の客層は、おおよそそんなところ。手堅い新車より、見栄っぱりな中古高級車。品のいいおしゃれな地域ではあるまい。それも、なまじだたっ広いから、ほかに店も無く、周辺を歩いて通る人なんかいない。また、面積的にも、まとまっているわりには中途半端で、巨大駐車場棟まで併設する必要がある巨大ショッピングセンターなどはムリ。かといって、ファミレスのような飲食店としては、規模が大きすぎる。さて、こんな条件で、あなたなら、あのばかでかい空いた土地を、どう活用する? だれに転売する?

妥当なところとしては、ホームセンターか大型電気店。もしくは、複数の外食チェーン店を駐車場共有のフードコート形式にする。好調なのは、大手ドラッグストアチェーンや、かの雑貨の殿堂か。また、宅配関係の配送会社も、大型トラックが出入りしやすい幹線道路沿いの仕分拠点を喫緊に探している。とにかく、地主と地上げ交渉からやるのでは、手間がかかって仕方が無いが、手っ取り早く、間を置かず、場合によっては店舗もそのまま居抜きで使えるとなれば、地主も借り手もWinWin。手元に投資資金さえあるなら、こんな絶対に儲かるチャンスはそうそう無かろう。とはいえ、実際に潰れてからでは遅い。先に話を持って行って、ともに相談すれば、地主の心象もいい。まさに早い者勝ちの最高の商機だ。