上手に寝付けなかったり頻繁に中途覚醒してしまったりする不眠症に悩まされている人の中には、なかなか眠れない夜に「今は何時だろう」と頻繁に時計を確認している人もいるかもしれません。しかし、このように時間を確認する行為自体が、余計に不眠症を悪化させる可能性があるという研究結果が報告されました。

Use of Sleep Aids in Insomnia: The Role of Time Monitoring Behavior | Psychiatrist.com

https://doi.org/10.4088/PCC.22m03344



Losing sleep over losing sleep: How watching the clock impacts insomnia, use of sleep aids: IU News

https://news.iu.edu/live/news/28256-losing-sleep-over-losing-sleep-how-watching-the-clock-

Doing This One Thing Makes Insomnia Even Worse, Psychologists Warn : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/doing-this-one-thing-makes-insomnia-even-worse-psychologists-warn

厚生労働省によると一般的な成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しており、約10%が慢性的な不眠症を患っているそうです。不眠症はうつ病や心血管疾患といった健康問題に関連しているため、不眠症の解消につながる研究は非常に重要です。

当然ながら不眠症を患っている本人も早く眠りたいと思っているはずですが、時計を頻繁に見て時間を確認する行動(time-monitoring behavior:TMB)は欲求不満を増大させて不眠症を悪化させたり、睡眠導入剤の使用量が増えたりする原因になり得るとのこと。

そこで、インディアナ大学の臨床心理学者であるスペンサー・ドーソン氏が率いる研究チームは、アリゾナ州の睡眠医療センターでアンケートに回答した患者4886人のデータを分析しました。そして、「不眠症の重症度」「寝ようと試みた際にTMBに費やした時間」「睡眠導入剤の使用量」について分析しました。



分析の結果、「不眠症の重症度」「寝ようと試みた際にTMBに費やした時間」「睡眠導入剤の使用量」の3つの変数に強い関連性が見つかりました。不眠症とそれに関連する精神状態を有している人は、より多いTMBと睡眠導入剤の使用を報告したとのことです。

研究チームが被験者に対し、TMBとそれ自体が引き起こす欲求不満について尋ねたところ、TMBによって生じた欲求不満と睡眠導入剤の使用の間に関連が見られました。これは、TMBの結果として生じる欲求不満が不眠症を悪化させ、睡眠導入剤の使用を促進するという仮説の証拠になるとのこと。

ドーソン氏は、「人々は睡眠不足を心配して、眠りに就くまでや起きる時間を計算し始めます。ストレスが多いほど入眠は難しくなるため、これは入眠に役立つ行為ではありません」とコメントしています。そして不眠症に悩んでいる人に対し、眠る時は時計を隠したりスマートフォンを遠ざけたりして、時間をチェックしないようにした方がいいとアドバイスしました。