みなとみらい線の元町・中華街駅の終点側地下に、鉄道車両を留め置く留置線を整備する工事が本格化しています。どのような背景や目的があるのでしょうか。

「港の見える丘公園」の地下に留置線を整備

 横浜高速鉄道みなとみらい線の終点、元町・中華街駅で、鉄道車両を留め置く留置線を整備する工事が本格化しています。どのような背景や目的があるのでしょうか。


みなとみらい線Y500系(画像:写真AC)。

 元町・中華街駅へは東急東横線からの列車が横浜から乗り入れてきます。日中時間帯でも1時間に16本の列車が発車し、多くが和光市や森林公園、小手指といった埼玉方面まで直通していきます。またこの駅は山下公園や中華街など観光地に近いことから利用者も多く、2021年度の乗降人員は1日あたり45066人を数えます。

 その元町・中華街駅で現在、駅の終点側から線路を延伸する形で留置線を整備する工事が進んでいます。総延長は約589メートルで、元町・中華街駅を出ると「港の見える丘公園」側に曲がり、留置線の大部分は公園敷地内の地下となる計画です。
 
 留置線の構造は、駅側から単線トンネル2本(約228メートル)、複線トンネル(約99メートル)、車両を留置する併設トンネル(約262メートル)となる予定。10両編成を最大4編成留置できるようにします。
 
 2017年から事業開始に向けて地元説明会がはじまり、2022年3月1日に駅構内工事に着手。2023年度も引き続きトンネル工事、駅構内工事が進められ、2024年度からは軌道工事や電気工事に着手する予定です。

 同社では「留置線への延伸のため、終端部の壁を撤去する必要があります。駅構内工事では、壁を撤去しても駅構造物の耐久性に問題がないよう、補強工事を行います」としています。

そもそもなぜ留置線が必要?

 みなとみらい線は2004年に開業した路線ですが、なぜ今のタイミングで、新たに元町・中華街駅に留置線を整備する必要があるのでしょうか。
 
 横浜高速鉄道は東急電鉄とは別に自社車両「Y500系」を6編成所有しています。これらは現在、直通先の東急東横線内にある「元住吉検車区」を賃借して車庫として使用していますが、東急電鉄から退去を求められており、自社線内に車両留置場を整備する必要があるといいます。

 また、本来あるべき自社の留置線は、「本牧延伸」にあわせて整備するはずでした。しかしいつまでたっても実現しないため、いよいよ今回の整備に踏み切ったというわけです。
 
 留置線整備の効果として、1番線と2番線の発着列車が平面交差しボトルネックになっていたのが解消される見込みです。さらに、これまで「来た車両がそのまま折り返す」しかなく、特急・急行などに使用される10両編成の車両と各停用の8両編成をそれぞれ柔軟に発車させるのが困難でしたが、留置線を用いて車両の発車順を適宜入れ替えることで改善が図られます。

 同様のケースでは東京メトロでも、多くの路線と直通する有楽町線小竹向原駅〜千川駅間で、ダイヤ乱れ時に輻輳が頻発して遅延拡大の原因となっていた平面交差を解消するため、連絡線を整備しています。

 横浜高速鉄道によると、留置線の使用開始は2030年度。みなとみらい線だけでなく直通先の東急・東京メトロ・東武・西武、さらには相鉄でも「定時運行の確保」や「乱れたダイヤの早期回復」といった恩恵を受けられそうです。