「歩道は低く」がトレンド、知ってました? 実は変化している歩道の“高さ” 格段に利用しやすく
歩道でベビーカーや車いすを利用する際、横断歩道や車両乗り入れ部の急勾配で怖い思いをした人もいるのではないでしょうか。それは古い設計の歩道かもしれません。新しい設計の歩道は大きく改善されています。
バリアフリーを考えた「セミフラット形式」
道路の設計は年々新しくなっています。この道路は古い設計か、新しい設計か、沿道の風景以外で見分けるポイントのひとつに「歩道の高さ」が挙げられます。
セミフラット歩道。車道よりも少し高い位置にあるが、全体がフラット。車道と縁石と柵で仕切られている(大貫 剛撮影)。
歩道には自動車が入ってこないように、車道との境目に段差をつけます。従来の歩道は、車道より1段高く盛り上げた「マウントアップ形式」と、車道と路面の高さは同じで、白線やブロックで仕切られただけの「フラット形式」がありました。
どちらを採用するかは、道路の排水溝の位置も関係します。「フラット形式」は歩道の端に排水溝を設けているので、車道に降った雨水が歩道へ流れてきます。市街地では車道と歩道の境目に段差をつけ、そこを街きょという排水溝にして両側から雨水を集める「マウントアップ形式」を採用するのが一般的です。
しかし、「マウントアップ形式」では歩道と車道の高低差が15〜25cmもあるので、横断歩道や車両乗り入れ部には急な勾配(坂)ができてしまい、車いすなどの通行には不便です。また歩道と車道の境目にも5cm程度の段差があるので、車いすの前輪やベビーカーなど、小さな車輪では引っ掛かってしまいます。
そこで考えられたのが、2つの形式の中間をとった「セミフラット形式」という新しいタイプの歩道です。「セミフラット形式」では歩道全体を車道より5cm高くし、横断歩道や車両乗り入れ部の急勾配をなくしました。
また歩道の路面は、雨水を車道へ流すため、車道へ向かって2%の勾配(1mにつき2cmの高低差)をつけるのが標準ですが、水たまりができにくい透水性舗装を用いる場合には1%以下の勾配にしても良いことになりました。勾配を抑えれば車いすがまっすぐ走りやすくなります。
ブロックを斜めにカットして通りやすく
「セミフラット形式」の歩道と車道の境目には、縁石として高さ15cmのコンクリートブロックを並べています。これは「フラット形式」の歩道と同様ですが、市街地では「マウントアップ形式」に慣れた自転車が歩道側からブロックに近付いて、ペダルを引っ掛けて転倒するおそれもあるので、別途、柵を設置するのが基本です。また歩道に降った雨水が車道へ流れるよう、水抜きのスリットが設けられています。
さらに横断歩道では、コンクリートブロックを斜めにカットした形状に変更することで、車輪が引っ掛かるような段差を減らしています。少しだけ段差を残しているのは、視覚障がい者が歩道と車道の境目を認識できるようにするためです。
マウントアップ歩道。横断歩道にかけて急勾配ができる(大貫 剛撮影)。
2005年に国土交通省が「歩道の一般的構造に関する基準」を改正し、「セミフラット形式」を基本とすることになりました。このため近年に建設された新しい道路や、拡幅などの改築が行われた道路は「セミフラット形式」が多くなっています。また従来の「マウントアップ式」の道路で補修が行われる場合も、歩道の勾配を従来より緩くしたり、「セミフラット形式」と同じ斜めにカットされたブロックを使用したりすることがあります。