「アメリカさん、早くF-16を…」アルゼンチン空軍 次期戦闘機をとにかく切望する理由
2023年5月6日、ザビエル・ジュリアン・アイザック准将が、アルゼンチン空軍の記念式典に出席した際に、報道陣にF-16戦闘機導入に向けての進捗状況について問われました。実は同国では超音速戦闘機が現在ありません。
音速を超えるジェット戦闘機の運用がゼロに!!
2023年5月6日、アルゼンチン空軍の参謀総長であるザビエル・ジュリアン・アイザック准将は、アメリカ製のF-16戦闘機導入へ向けた進捗について次のように発言しました。「最終的な提案がない。アメリカは、我々に多くのものを提供してくれると言ってきたが、まだそれは果たされていない」。空軍の記念式典で報道陣からの質問に答えました。
アルゼンチンが購入を目指しているデンマーク空軍のF-16(画像:デンマーク空軍)。
アルゼンチンでは一刻も早いF-16の導入が待たれています。というのも、同国は現状、飛行している超音速の戦闘機がゼロになっているからです。
かつてアルゼンチン空軍は超音速戦闘機としてフランス製のミラージュIIIを運用しており、南米国家の中では有力な空軍力を保有していました。1982年に起きたフォークランド戦争では、イギリス海軍のBAe「シーハリアー」と空中戦を行ったこともあります。
しかし戦争後、長く続く同国の経済的困窮により、空軍の予算は減少が続き、機体の老朽化による維持費増大も重なり2015年には保有するミラージュIII全機の退役を決定します。これにより、アルゼンチン空軍では超音速の戦闘機がゼロになり、「43年間の運用実績と13万1000時間の飛行時間による技術の蓄積が失われた」などと現地メディアでは報じられています。現在は、わずかに残るA-4AR「ファイティングホーク」がジェット機として防空任務についています。
経済以外にイギリスの横槍も影響
経済的な問題のほかにも、フォークランド戦争で戦ったイギリスからの武器禁輸措置、政治の混乱などの影響により、アルゼンチンは長らくミラージュIIIの役目を継ぐ戦闘機を探せずにいました。
かつてアルゼンチン空軍が運用していた超音速戦闘機であるミラージュIII(画像:アルゼンチン空軍)。
一時はスウェーデン製のサーブ39「グリペン」をブラジル経由で購入することを検討しましたが、同機がイギリス製の部品を使用しているため、これをイギリスが拒否。また、中国製のJF-17の購入も検討されたものの、こちらは射出座席がイギリス製のため改造が必要となり、2017年2月に予算不足で断念することになりました。
絶望感すら漂っていた次期戦闘機の候補選びに再び光明が差したのが2022年9月でした。F-35を取得するデンマーク空軍から中古のF-16を購入できる可能性が出たためです。アルゼンチンはこの機体をアメリカの対外有償軍事援助として購入する可能性を模索しており、2023年2月には、アルゼンチンにデンマーク空軍、アメリカ空軍、製造しているロッキード・マーチンの代表者が訪問し交渉をしていました。
しかし前述の通り、まだ最終決定には至っていないようです。
仮に同機の購入が許された場合でも、アルゼンチン空軍での運用上の問題点なども残っています。アルゼンチンが保有している空中給油機と互換性がないため、同機購入の場合は、空中給油機の更新もしなければいけないことから、予算が減少し続けているアルゼンチン空軍に維持できるのか、という懸念もあるようです。