テレビをリビングやダイニングのどこに置く?間取りの工夫を建築士が解説
リビングやダイニングのレイアウトを家づくりで考えるとき、テレビの位置に意外と悩むものです。スマートフォンの登場で、テレビとのつき合い方にも変化が。電源入れるものの、画面をずっと観ていなくてもいいという人も出てきました。今どきのテレビのレイアウトについて、一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて、考え方や工夫などを紹介します。
テレビのレイアウトは間取りと同時に考える
家の間取りを考える際。みなさんはおそらく、「光や風を採り入れたい」「庭や空への眺望がほしい」と考えながら、窓の位置を計画するのではないでしょうか。
一方、テレビについては、大抵の人が、壁面を背にして配置したくなるものです(加えて、ソファや家具・収納も同様に、壁面に配置しがちですね)。
そういう意味では、部屋のプランを決めることは、壁と窓のせめぎあいを調整していく作業ともいえます。また、テレビを設置する場所にはコンセントやアンテナ線の取り出し口も必要。
つまりテレビのレイアウトは、間取りと同時に考えるのが好ましいということです。
リビングのソファから観やすい位置にテレビを置く
ドラマ・映画・スポーツ・バラエティーなどテレビを長時間じっくり観たい、という方はまず「リビングのソファから観やすい位置にテレビを置く」ことを第一に考えてみては。
リビングのソファから観やすい位置にテレビを置けば、長時間でもリラックスしてテレビを観ることができます。
最近は、スマホやタブレットでSNSをチェックしながら、BGM的にテレビを流してニュースやドラマなどの情報を拾うという方も増えているようです。そんな過ごし方をするにも、スマホを片手に、くつろげるソファから観やすい位置にテレビがあると便利でしょう。
このお宅では、畳小上りスペースとリビングとを仕切る本棚の背面に、テレビを設置。ソファと正対するような位置関係になっています。
ダイニングから観やすい位置にテレビを置く
飲んだり食べたりが好きで、ダイニングにいる時間が長い。そんな方は、いっそのこと「ダイニングから観やすい位置にテレビを置く」という手もあります。
食事をしながらテレビを観ることができ、食後も場所を変えることなくそのままテレビを楽しめます。
リビングとダイニングの双方から観やすい位置にテレビを
とはいえ、「リビングでソファに座ってテレビを観たい。でも、ダイニングからもある程度観ることができたら便利」というニーズが実際は多いもの。筆者が今まで設計を手掛けた住宅の大半は、このケースかもしれません。
そのような場合は「リビングとダイニングの双方から観やすい位置にテレビを置く」という間取りをなんとか考えるようにしています。
このお宅では、リビングのソファ正面にテレビを置きつつも、それがダイニングからも観やすい位置となっています。
実際のところ、ダイニングからテレビまでの距離は、そこそこあります。ただし、角度的に見やすい位置に。
「キッチンで調理しながら、テレビもチラっと視野に入れたい」という方もいるでしょう。家族がリビングやダイニングで観ているテレビ番組の内容を、台所仕事している人も把握できれば、話題が共有できます。
このお宅は、対面キッチンでLDKがワンルームの間取りとなっています。キッチン(写真手前)で作業をしていると、遠目の正面にテレビが観えるレイアウトに。
このお宅も、LDKのどこからでもテレビが観られるレイアウトに。
リビングに窓が多い間取りの場合は、このようにコーナーにテレビを配置する手も有効です。
リビングとダイニングの双方にそれぞれテレビを置く
リビングとダイニングそれぞれでしっかりとテレビを観たい、というニーズから「リビングとダイニングの双方にそれぞれテレビを置く」という方針にしたお宅もあります。
ダイニングで視聴するテレビは、対面キッチンのカウンター端部に設置。キッチンのコンロからの油はねを防ぐための壁を背面にしています。
畳小上がりのリビングで視聴するためのテレビは、壁かけに。畳スペースを広々と使えるように、テレビボードまで、造作で壁に埋め込みました。
壁かけテレビとレコーダー(テレビボード内に設置)との間の配線は、壁裏(この家の場合だと、階段下の収納スペース)で処理してスッキリと見せています。
壁かけテレビにする場合は、このように配線ルートを壁裏や壁内に仕込んだり、テレビを保持できる強度をもった下地板を壁内に仕込んだりすることにしています。
これを収まりよくするには、設計時にきちんとテレビの配置やサイズを決めておくことが大切です。
テレビの位置決めは、間取りとライフスタイルを左右する
リビング・ダイニングにおけるテレビのレイアウトについて解説してきました。単なるたかがテレビの配置と思いきや、「リビング・ダイニングのどこにテレビを置くか」というテーマは、間取りとライフスタイルを大きく左右する大切な要素であることに気づきませんか?
設計士に間取りを検討してもらう際には「うちの家族は、こんなときにテレビを観ている」「テレビをこんなふうに観たい」といった要望をぜひ詳しく伝えましょう。家族の暮らしぶりにピッタリの間取りを実現していただきたいと思います。