外から見えないように布団や洗濯物を干したいと、インナーバルコニーをつくる間取りが増えています。少し広めにしてイスやテーブルを置けば、ここでカフェ気分を味わうことも可能。しかし、配置する場所や広さを間違えると後悔するケースことも多い、要注意スポットです。ここで紹介するのは、典型的な失敗事例。どうすれば、大満足の場所にできるかという、一級建築士によるアドバイスも参考に。

外観と調和したデザインのインナーバルコニーに大満足

南に広がる庭側に、アプローチや玄関を配したYさんの家。「設計をお願いする際に、外観はシンプルな箱型にして、南側の2階に布団や洗濯物が干せるベランダが欲しいと伝えました」(夫妻)。

そして完成したのが、2畳ほどのインナーバルコニー。2つの個室にはさまれるように配置され、屋根はバルコニーいっぱいにかけられています。さらに外観アクセントとなるように、庭側にはアール状の垂れ壁が。

「この壁がおしゃれで、洗濯物が外から気づかれにくい点も気に入ってます」(夫妻)。

 

インナーバルコニーでは、洗濯物が乾かない!?

しかし問題が。「インナーバルコニーは、屋根が雨よけになって、風もほどよく通ります。羽毛布団や子どもの運動靴など、陰干しできるのでとても便利なのですが…」(妻)。

聞けば、日差しは奥まで届かず、洗濯物を乾かすには、インナーバルコニーからはみ出すように干さないとならないのだとか。

「これでは、外から洗濯物が丸見えで、外観デザインが台なしに。こんなことになるなら、屋根に天窓を取りつければよかった」と、後悔します。そうすれば日差しがたっぷりと入り、物干し場として大活躍したのにというわけです。

 

また、テーブルやイスを置いて、カフェテラスにすることも考えていたのですが…。奥行きがなさすぎて窮屈。そもそも、干し場として使いにくい!

もう少し広くつくっていれば、お茶やお酒を楽しんだり、読書したりして、毎日が楽しめたかも…。後悔することしきりです。

インナーバルコニーで重要なのは、広さと室内とのつながり

せっかくインナーバルコニーをつくっても、「洗濯物が乾かない」「おうち時間も楽しめない」では残念すぎますね。ではどうすれば、よかったのでしょう。一級建築士・大島健二さんが詳しく解説してくれました。

 

●一級建築士・大島さんのアドバイス

インナーバルコニーという用語に厳密な定義はありません。一般的には以下のように理解されています。

●建物の内側に設けられた、屋根つきの広い空間で、洗濯物を干すだけではなく、リビングの延長のようにさまざまなアクティビティを可能にする空間

重要なポイントは「広い」ということと、室内とのつながりです。

またリビングのくつろぎの延長にあるので、アウトドアリビングと呼ばれることもあります。1、2畳の広さでは、庇(ひさし)のついたマンションのバルコニーとなんら変わらず、洗濯物を干すだけに終わってしまいます。せめて角に設けて東と南の2面を外部に開放するなどの工夫が必要です。

インナーバルコニーは、「家の中により屋外的な空間が欲しい」という社会のニーズから生まれたもの。昨今、外出の自粛を余儀なくされる時期があったことなどにより、さらに注目されています。とくに庭を設けられない都市部の住まいなどにおいて、そのメリットを大きく発揮することができると考えられます。

●教えてくれた人:大島健二さん
一級建築士。OCM一級建築士事務所主宰。住宅から商業施設まで、和・洋・中の概念を超えたデザイン性の高い空間を提案している。『家づくり解剖図鑑』『建てずに死ねるか!建築家住宅』『下町の名建築さんぽ』など著書も多い