やらなきゃいけないことがあるのに、ついついそこから目を背けてダラダラしてしまう…。「サボり」というと、そんなネガティブな印象を持っている人が多いかもしれません。しかし、見方によっては、サボりは仕事や生活を充実させる息抜き・アイデアとも言えるのではないでしょうか。

ここでは、「サボり」を独自に解釈しながら、13人のクリエイターが仕事や生活を語った書籍『よく働き、よくサボる。一流のサボリストの仕事術』(扶桑社刊)から、ポジティブにサボりながらいきいきと生活するための“サボり術”をいくつかご紹介します。

 

さらば青春の光・森田哲矢さん。「サボれないなら、そんな自分も受け入れる」

さらば青春の光の森田哲矢さんといえば、テレビのバラエティ番組にYouTube、ライブなど、幅広いフィールドで活躍し、さらには個人事務所「ザ・森東」の社長も自ら務めているという、今、多忙を極めているお笑い芸人さんのひとりです。

そんな森田さんは、「常に仕事に対する不安があって、休みの日でも『ネタつくらんでよかったのかな…?』とか思ってしまう」と、あまりうまくサボれないタイプなんだそうです。

「(久々のお休みでディズニーランドに行ったものの)なんの気なしにそれをTwitterに投稿したらバズり出して、その期待に応えるように実況を始めて。『結局俺、休んだんか?』っていう感じになりました」と、せっかくのお休みでもついサービス精神を発揮してしまうのだとか。

しかし、結果的に休めない行動が仕事につながるようなこともあって、「サボりきれない性格も捨てたもんじゃないなと思いますけど。それはそれで楽しめてるし、向いてるんでしょうね」と、その性格を前向きに捉えているといいます。

うまくサボって効率的に働く、というのがベストな形のひとつではありますが、「サボる/サボらない」はまず自分ありき。うまくサボれない自分を受け入れ、その状況を楽しむことができるのなら、それも自分に合ったひとつのスタイルだといえそうです。

●思いきって仕事につなげてしまうのもひとつの手

また、森田さんは仕事に対する不安から、以前は趣味も楽しめなかったそうですが、それも「トークのネタになるかも」「仕事につながるかも」と考えることで、広がりが生まれたといいます。

フィンランド発祥のスポーツ「モルック」を紹介され、ネタのつもりで練習会に参加してみたところ、「そのままトントン拍子に日本代表としてフランスまで行けたっていう。フランスに行ったことでテレビにも呼んでもらえたので、すごい広がり方でした」と、趣味として楽しみながら仕事にしてしまったそう。これもあえて仕事の要素を趣味に持ち込んだことで、うまくいった例だといえます。

ただ、そんな森田さんにも無になれる息抜きの時間はあるようで、「古着が好きなので、お店やネットで古着を見てる時間は、なにも考えずに楽しめてると思います」と語っています。

「自分がモテを捨ててでも唯一着たいと思えるもの」というほど、理屈抜きで好きな古着という存在があることで、うまくバランスがとれているのかもしれませんね。

画家の塩谷歩波さん。「ときには無理に切り替えなくてもいい」

銭湯を建築図法によって詳細に描きながらも、いきいきとした人物描写や、温かみのあるタッチが魅力の「銭湯図解」が話題となった画家の塩谷歩波さん。かつては建築事務所で働いていたものの自らを休職まで追い込み、絵を仕事にするようになってからも日常生活そっちのけで絵に集中していたという塩谷さんにとって、銭湯はまさに癒しのサボりスポットだったようです。

しかし、自分にとってムリのないスタイルを考えるうちに、「最近は『無理に切り替えなくてもいいんじゃないか』と思うようになってきたんですよね。独立してひとりで過ごす時間が長くなると、怒りや悲しみの感情を引きずってしまうこともあるんですけど、無理に切り替えようとすると逆にストレスがたまる気がして」と、心境に変化があったそう。

塩谷さんの場合、「抱えている感情や考え事を捨てずに煮詰めていく。そうすると、だんだんネガティブな感情が消えたり、問題の捉え方が変わったりするんです」というように、リフレッシュしないでいることが、一歩前進するきっかけになるケースもあるのだとか。ときにはあえてサボらず、向き合うべき感情から逃げないことも大切なようです。

●日々の暮らしを大事にすることだってサボりになる?

とはいえ、日常生活までおざなりにして仕事ばかりしていると、逆に仕事の効率を下げてしまうもの。塩谷さんも「最近になってようやく、生活を充実させると、意外と仕事も充実することがわかってきたんですよ」と語っています。それから必要以上に自炊に力を入れたり、お風呂掃除に異常なまでに時間をかけたりするようになったことで、面倒だと思っていた家事が楽しいものに変わっていったそうです。

家事のほかにも朝のランニングを習慣化するなど、健康的な日常生活を送るようになると、結果的に体調もよくなり、体力がつき、頭も冴えるようになったのだとか。仕事の効率を考えた結果、「生活」にたどり着いたというユニークなサボり論ですが、自分にとってなにが快適で、なにが効率的なのか、一から考えることはあまりないのではないでしょうか。とことん自分と向き合い、トライアンドエラーを繰り返してみると、意外な発見があるのかもしれません。

●「サボり」目線で仕事や生活を考えてみよう

このように、他人からは全然サボっていないように見えたり、当たり前のことのように見えたりする行為も、自分にとってムリなく働き、生活するための最適な方法であれば、ある種のサボりであるといえそうです。

仕事も生活もサボりも、日常においてどれかひとつでは成り立たないもの。こうしたクリエイターのサボり術をヒントに「サボり」という視点で自分を見つめ、心地よく働き、生活できるスタイルを考えてみると、ちょっと日々が過ごしやすくなるかもしれません。