米国戦も同点の特大ソロを放った村上宗隆【写真:Getty Images】

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WBC優勝記念連載「世界一の裏側」#6、NPBでは4番の山川&牧が喜んだ村上の活躍

 野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表「侍ジャパン」は3大会ぶり3度目の優勝を成し遂げた。大谷翔平投手(エンゼルス)ら一流選手の団結力で掴んだ世界一。「THE ANSWER」では米マイアミで行われた熱戦を現地取材。大会を通じて伝えきれなかった選手、監督の思いや現地でのエピソードを連載「世界一の裏側」として連日紹介していく。

 第6回は不振に苦しみながら、準決勝メキシコ戦で日本を勝利に導くサヨナラ打を放った村上宗隆内野手(ヤクルト)。米国戦でも同点の特大ソロを放つなど復活。苦悩から解かれた村上の言葉と、その復活を信じ、喜んだ仲間たちの思いを紹介する。(取材・文=THE ANSWER編集部・宮内 宏哉)

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 トンネルの出口は、眩い笑顔が広がる夜のマイアミだった。20日(日本時間21日)のメキシコ戦、1点を追う9回無死一、二塁の場面。ここまで4打数無安打3三振の村上が打席に立った。「バントもよぎった」という若き大砲に、城石コーチが栗山監督の言葉を伝えた。「ムネに任せた。思い切っていってこい」。腹をくくった。

 初球ファウル、2球目ボールで迎えた3球目だった。相手右腕ガイェゴスが投じた高め速球をはじき返した。鋭いライナー性の打球が中堅手の頭を越えてフェンス直撃。二塁走者の大谷、一塁代走で起用されていた周東が快足を飛ばしてホームインし、サヨナラ。苦しみ抜いた男を、同僚たちは手荒く祝福した。

「(最後の打席は)やるしかないなと。結局、何度も何度もチャンスで回ってきますし、そういうところで打てずにいたので。小さい頃に(2009年WBC決勝・韓国戦の)イチロー選手の決勝タイムリーを見た時に感じていた思いもあったので、最高の一打になった」

NPBではライバル球団の4番を張る2人も「凄かった」「嬉しかった」

 昨季NPB日本人新記録となる56本塁打。史上最年少の三冠王にも輝いたが、WBCでは不振が続いた。この打席まで打率.190。それでも、栗山監督は最後まで村上を信じた。NPBではライバルとなる他球団の4番を張りながら、主にベンチスタートから戦況を見つめてきた2人も、村上の復活打を信じ、優勝後に喜びを口にしていた。

 DeNAで昨季4番に座った牧秀悟は今大会2本塁打ながら、準決勝は代打、決勝は出番がなかった。アメリカ戦後、今大会の最も印象に残るシーンを問われると「ムネが凄かった」と一番に挙げ、「やっぱりムネがあの苦しんだ中で、準決勝で最後打ったところからチームとして、凄くまとまったなという感じがある」と1歳年下の劇的な活躍が更にチームの結束を高めたと語った。

 更に、西武で3度の本塁打王を獲得している山川も「いやあ〜……でも、ムネ。やっぱりムネが打ったのは本当に嬉しかった」としみじみ振り返った。

「誰がどう見ても苦しんでたじゃないですか。よく分かるんですよ、苦しみが。自チームで4番打ってるし……あの苦しさはやってる人じゃないと味わえないので。打てないときは打てない。でもどうにかしないといけない。でもムネは凄いっすよ。元気出して、一生懸命やってあーでもない、こうでもないって最後打ちましたからね」

 腐らず試行錯誤を続けたその姿に、山川は「大谷は(凄すぎて)そういう次元じゃないから置いておいて、ムネみたいな選手になりたい。後輩ですけどね。凄い。カッコイイ」と手放しで称えていた。

 苦しみ抜いた村上は、決勝の米国戦では特大の一発。「ESPN」のデータ専門公式ツイッター「ESPNスタッツ&インフォ」で、今大会の本塁打の中で最速の打球速度115マイル(約185キロ)だったことが報じられるなど、最後はその実力の一端を見せた。「終わってみれば嬉しい気持ちもあるけど、悔しい気持ちもある」「3年後しっかり出て、次は全試合4番を打てるように頑張る」。最後に蘇った村上も見事だが、復活を信じて喜んだ2人にも心動かされた。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)