女性の更年期の不調、男性ホルモンを用いた治療法もあるそうです(写真:nonpii/PIXTA)

人間には人生に2度、避けては通れないホルモンの分泌量が大きく変わる時期があります。1度目は思春期。そして2度目は更年期。

更年期というと女性のものというイメージがあるかもしれませんが、実は男性の6人に1人は更年期障害になるといわれています。男性の場合、女性の閉経のような節目がないため、自分では気づきづらいのがネックなのだとか。

年を重ねるにつれ、物覚えが悪くなる、ちょっとしたことで不安を覚えるようになる。これらはすべて、男性ホルモンのテストステロンが少なくなっているからだと、女性医療クリニック・LUNAグループ理事長、医学博士の関口由紀さんは言います。
『性ホルモンで乗り越える 男と女の更年期〜知っておきたい驚異のテストステロンパワー』を上梓した関口さんに、本書を抜粋しながら、男女別の更年期障害への対処法について3回にわたって語っていただきました。

まずは、私が本書を書くきっかけとなった出来事についてお話します。

私が、「テストステロン」(代表的な男性ホルモン)の重要性に気づいたのは更年期に差しかかった頃。その頃悩まされていた「更年期うつ」がきっかけでした。

「更年期うつ」から解放された日

女性の更年期障害の治療というと、「女性ホルモン補充治療」を真っ先に思い浮かべる方が多いと思いますが、私自身、40代前半で乳がんを経験したがんサバイバーだったので、がん再発のリスクを高める女性ホルモン補充は避けたかった。

では、どうすればいいのか……。なかなか症状がおさまらず悩んでいた時、ふと、長年テストステロンを補充して男性化を促進しているFMT(女性femaleから男性maleへと性別変更した人のこと)患者のAさんのことを思い出したのです。

Aさんは、自分の望む性に近づくためにテストステロン補充をしたことで筋肉がつき、バイタリティーにあふれていました。そのキラキラ感を思い出し、「もしかしたら、閉経して女性ホルモンが減ってテストステロンの比率が高くなっている私とAさんは、体内ホルモン環境が似ているんじゃないかしら?」という仮説を立ててみたのです。

思い立ったが吉日。私はすぐにテストステロン補充をスタート。テストステロン剤を1カ月ごとに筋肉注射することを試みました。

するとどうでしょう。テストステロン補充を始めて2カ月経った頃、それまで抗うつ剤を飲んでも改善しなかった更年期うつが、ウソのように消失していたのです。それまでどこに行くにも気が重かった、全身の倦怠感もなくなっていました。

その後の私の生活は一変。現在は、日本メンズヘルス医学会テストステロン治療認定医として、更年期の症状に悩む患者さんに日々向き合っています。


ここで知っておいていただきたいのが、何も病院に定期的に通ってホルモン剤を補充することだけがテストステロン値を上げる手段ではないということ。

テストステロン値は治療に頼らず自ら上げることが可能だということをぜひ皆さんに知っていただきたいと思っています。

現に私は、週2回程度、筋トレと40分程度のウォーキングをしてテストステロン値を保っています。筋力がアップするとテストステロンの血中濃度が上がりますし、ウォーキングをするとオステオカルシンという若返り物質が骨から分泌されますし、脳下垂体や性腺を刺激してテストステロンを増やすこともできるからです。

ほかにも推し活、バランスのいい食事などでも、少しテストステロン値を上げることができます。それでも足りなければ、適切な量のテストステロンを補充すればいいのです。

この後、テストステロン補充の意義について、漫画家の赤星たみこが描いて下さった漫画をご紹介します。

テストステロンで生まれ変わった私


(『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期〜知っておきたい驚異のテストステロンパワー』より)


(『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期〜知っておきたい驚異のテストステロンパワー』より)

適度なテストステロンが必要な理由


(『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期〜知っておきたい驚異のテストステロンパワー』より)

(関口 由紀 : 医師・『女性医療クリニック・LUNAグループ』理事長)