「腟がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!
膣がんとは名前の通り、女性の膣にできるがんのことをいいます。
子宮頸がんや子宮がんは聞いたことがあるという方も、膣がんについて詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。
膣がんは罹患率が女性の生殖器がんの内およそ1%と大変めずらしい病気です。
今回は、膣がんの原因・初期症状・治療方法など、どのような病気なのかを詳しく解説していきます。
早期発見をして適切な治療を行うことが大切な病気ですので、ぜひ参考にしてみてください。
腟がんという病気
あまり聞き慣れないのですが腟がんとはどんな病気ですか?
膣がんとは、膣の粘膜に発生するがんです。膣は女性器の外側と内側をつないでいる臓器のことをいいます。ワクチン接種や自治体ごとに定期検診が行われるなど、耳にする機会も多い子宮頸がんとは異なり、罹患率が女性生殖器がん全体の約1%と非常にめずらしい病気です。病期(ステージ)はⅠ期~ⅣB期の6つに分かれていて、病状の進行具合によって異なります。膣がんは進行するとがん細胞が粘膜から筋膜へ広がっていきます。その後、膀胱や直腸などの近い臓器への転移がみられるでしょう。ステージが6つ目のⅣB期まで進行すると脳や肺など離れた臓器への転移がみられ、治療ができなくなる場合もあるため注意が必要です。
腟がんは何が原因で発症するのでしょう?
主な発症原因は子宮頸がんと同じく、ヒトパピローマウイルス(HPV)であるといわれています。ヒトパピローマウイルスは性交の経験がある女性の約50%が生涯で一度はかかるとされる感染症です。このウイルスは自然に排出されることもあり、感染したからといって必ず他の病気に罹患するわけではありません。しかし、性交を初めて経験する年齢が年々低くなっていることから、若い女性の感染率が増えています。がんは健康な若い女性であっても引き起こす可能性がある病気です。不特定多数の方との性交は避け、コンドームなど避妊具の装着が望ましいでしょう。
また、小学6年生~高校1年生相当の女の子を対象とした、ヒトパピローマウイルス感染症を予防するワクチン(HPVワクチン)が存在しています。ウイルスにはさまざまな型があるのですが、このワクチンは特にがんを引き起こしやすい型に対して効果を発揮するため、がん発生を50~70%防ぐといわれています。ワクチンの接種時期などについてはお住いの地域の自治体に問い合わせてみてください。
腟がんの初期症状が知りたいです。
膣がんは初期症状が分かりにくいという特徴があります。不正出血や血が混ざったおりものが出たり、性交痛や排尿痛が起こったりします。また下腹部痛やしこりがみられることもありますが、自覚できる症状が出てきたときには病気が進行していたという例も多いです。がんは早期発見が重要な病気ですので、症状が発現してから対応するのではなく、子宮頸がん検診などでヒトパピローマウイルスに感染していないかどうかを確認しましょう。ウイルス感染があればあらゆるケースを想定して医師へ相談するなど、行動に移すことが大切です。
腟がんが進行している際にみられる症状を教えてください。
病気が進行している場合の症状としては、生理時以外の出血や悪臭が挙げられます。膀胱や直腸に転移している場合は、下腹部・腰に激しい痛みを伴い血尿や血便が出ることもあります。痛みや臭いなど自覚しやすい症状が出ているときには、がんが進行していると考えて良いでしょう。初期症状も少ないため自分で病気を発見することは難しいですが、違和感をおぼえた際は些細なことでも医師に相談し検査を受けるようにしてください。
腟がんの診断・検査やリスク
腟がんではどんな検査をしますか?
膣がんは子宮頸がんの検査で見つかることが多いです。がんを引き起こす原因が同じヒトパピローマウイルスであることが多いのが理由とされています。ヒトパピローマウイルスに感染しており、がんを疑われた場合は下記の検査へと進みます。内診
コルポスコープ診
組織診
がんが確認された場合は、その程度を調べるために下記の検査を行います。
超音波(エコー)検査
CT検査
MRI検査
PRT/CT検査
自覚できる初期症状がほとんどないといわれる病気なので、自らの行動が早期発見の鍵となります。自治体で行われている子宮頸がん検診などは定期的に受けるようにしましょう。
腟がんを放置してしまうリスクを教えてください。
膣がんに限ったことではありませんが、がんを放置すると他の臓器へ転移するリスクが上がります。膣がんは早期発見であれば、定期的な通院は欠かせないものの完治を望める病気です。しかし転移がみられた場合、進行状況によっては治療が困難となり命にかかわることもあります。このことから、がんは転移が非常に恐れられている病気です。気になる症状が現れた際は放置せずに、早めに婦人科を受診するようにしてください。
腟がんは10代でも発症するリスクはあるのでしょうか?
膣がんは50~60代以降の閉経後の女性の罹患が一般的です。ただし、性交経験年齢の若年化から、10代での発症のリスクも0ではありません。これは、ヒトパピローマウイルスが発症の原因と考えられていること・子宮頸がんの流れで発症することが関係しています。がんは年齢に関係なく誰にでも罹患する可能性があります。若い方はがんの進行スピードが早いケースも多いため、より注意が必要です。若い方の中には人に相談しづらい内容だと感じ隠してしまうケースもありますが、勇気を出して周りの大人や医師に相談するようにしてください。
膣がんの治療方法
膣がんの治療方法を教えてください。
病気の進行具合にもよりますが、一般的な膣がんの治療には下記が行われます。外科手術
放射線治療
抗がん剤投与
外科手術は名前の通り、がん細胞を切除します。ステージⅠの場合は部分的な切除で済み、女性器を温存することも可能です。Ⅱ期に進行すると膣周辺組織へがんが広がっていることから、子宮などの摘出もあり得ます。
Ⅲ期以降になると骨への転移もみられてくるため、手術を施すことはほぼなく放射線治療や抗がん剤の投与が一般的となります。放射線治療は高エネルギーのX線などでがんに直接攻撃して傷つける治療方法です。
抗がん剤は経口投与や静脈注射など薬によって投与方法が異なります。抗がん剤は血流に乗って全身に運ぶことができるため、転移したがんにも効果を望めます。ただし、抗がん剤のみでの完治は難しいとされているため、外科手術など他の治療方法と併用されることが一般的です。
膣がんは治療で完治するのでしょうか?
膣がんは完治を望める病気です。ただし、進行し他の臓器への転移がみられる場合には長期的な治療が余儀なくされます。病気の進行具合によっては命の危険を脅かすこともあるため、完治を望むのであれば早期発見が非常に重要といえます。
膣がんの治療中や治療後で注意することはありますか?
治療中は抗がん剤による副作用があることをおぼえておきましょう。一般的に吐き気や脱毛が主な副作用として挙げられます。対策としては薬の量を減らす・治療の中止です。治療後は経過観察として、定期的な通院が必要です。期間は治療後から年単位で少しずつ間が空きます。
1~2年目:1~3ヵ月おき
3年目:3~6ヵ月おき
4~5年目:6ヵ月おき
6年目以降:1年ごと
がん細胞は転移する可能性のある病気です。罹患した部位が完治しても、違う部位で再発するケースも少なくありません。治療したからといって安心せずに、医師の指示の元、通院を欠かさないことが大切です。
膣がんが再発する可能性はあるのでしょうか?
再発の可能性は残念ながらあります。再発がみられた場合は、転移している部位や病状の進行具合によって治療方針を決めていきます。再発は治療後5年以内に起こることが多いというデータがあるため、治療が終わっても5年間は定期的な経過観察を行うことが一般的です。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
膣がんは完治が望める病気ですが、病状の進行具合や転移した部位によっては治療が難しくなり、命にかかわることもあります。早期発見が何よりも重要になるため、どのような些細なことでも違和感をおぼえた際は婦人科を受診しましょう。また、膣がんは他のがん同様再発の可能性があります。治療後は治ったと安心せずに、医師の指示の元、定期的に通院をし経過観察を行うことが大切です。
編集部まとめ
膣がんは女性器がん全体のわずか1%程度といわれるとても希少な病気です。
閉経後にみられることが多いですが、子宮頸がんと同じヒトパピローマウイルスによって引き起こされることが多いため、若い方であっても感染しないとは言い切れません。
早期発見であれば、女性器機能を失わずに完治が望めます。
大切な身体を守るためにも、正しい性知識を身に付け、違和感をおぼえた際は早めの受診を心がけましょう。
参考文献
腟がん(国立がん研究センター 希少がんセンター)
腟がん(がん情報サービス)