「混合性結合組織病(MCTD)」とは?症状や原因について医師が解説!

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混合性結合組織病(MCTD)という名前を聞いたことがないという人も多いのではないでしょうか。

混合性結合組織病(MCTD)とは、女性に多く発症する指定難病の1つです。メカニズムや原因など解明されていない部分が多く、根本治療も見つかっていません。

症状には個人差がありますが、肺高血圧症を合併すると命を落とす可能性もあるため、早期発見・早期治療が重要です。

本記事では混合性結合組織病(MCTD)の症状・原因・治療法などについて紹介します。

混合性結合組織病(MCTD)の症状と原因

混合性結合組織病(MCTD)とはどのような病気ですか?

混合性結合組織病(MCTD)は全身性エリテマトーデス様強皮症様多発性筋炎/皮膚筋炎様のうち2つ以上の症状が混在し、血液検査で抗UI-RNP値が高値陽性となる病気です。
日本で1993年に厚生労働省から特定疾患の認定を受けた難病の1つで、男女比は1:13~16と女性の発症割合が圧倒的に多いです。
発症年齢は30~40歳代に多くみられますが、小児から高齢者まで幅広く発症します。米国では全身性強皮症の亜系や複数の膠原病が重なった病気の1つとみなされています。小児が発症した場合は、全身性エリテマトーデス様症状が強く出て、ほかの強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様の比率は少ないです。

混合性結合組織病(MCTD)にはどのような症状がありますか?

症状は、共通してみられる症状と全身性エリテマトーデス様・強皮症様・多発性筋炎/皮膚筋炎様の症状が混ざる混合症状・合併症があり、どの症状が出現するかは個人差があります。共通症状としては、レイノー現象が約80~90%の人にみられます。
レイノー現象は混合性結合組織病(MCTD)の特徴的な初期症状です。寒冷刺激や精神的な緊張によって手足の血管が収縮することで、手足が白くなった後に紫色・赤色と変色を経て元の状態に戻るのが特徴です。末梢への血流量が減少することで症状が出現し、手足の冷感・しびれ・手指の腫脹がみられます。
全身性エリテマトーデス様症状としては、多発関節炎・リンパ節腫脹・顔面紅潮・心膜炎、胸膜炎・腎炎がみられます。関節炎は、関節リウマチのような手指の変形を伴う場合もあり、区別がつきにくいです。腎炎は全身性エリテマトーデスより軽症であることが多く、ネフローゼ症候群や腎不全にまで至ることは少ないとされています。
強皮症様は手指に限局した皮膚硬化・間質性肺炎・食道機能低下が出現し、全身性強皮症と酷似しています。食道機能低下の自覚症状は、胸やけ・つかえ感などです。
多発性筋炎様症状は体幹に近い手足の筋力低下が見られますが、自覚症状は少ない傾向にあります。立てなくなってしまったり、寝たきりになってしまったりするほど重症化するのは稀です。
ほかにも無菌性髄膜炎や三叉神経障害だけでなく、生命に影響を及ぼす肺高血圧症を合併することもあります。疲れやすい・動作時の息切れ・動悸が初期の自覚症状として現れるので、症状が出現した場合は早期発見・早期治療が重要になります。

混合性結合組織病(MCTD)の主な原因は何でしょうか?

混合性結合組織病(MCTD)を発症した人の血液中に、抗UI-RNPという自己抗体が検出されるため、自己免疫疾患の1つに分類されています。しかしほかの膠原病と同様に、何故この抗UI-RNPができるのかはまだ解明されていません。
また抗UI-RNPが自分自身の体に障害をきたしている証拠もなく、混合性結合組織病(MCTD)のメカニズムは不明です。しかし遺伝的要因が関係しているのではないかと考えられています。

混合性結合組織病(MCTD)の発症率

混合性結合組織病(MCTD)の発症率はどのくらいですか?

厚生労働省が行った疫学調査では、1998年に6,840人が発症し、2014年には11,005人が医療費受給者証保持者という結果が出ています。国内での有病率は100,000人に対し8人程度と考えられています。
その中でも肺高血圧症の合併率は約5%で、特発性肺高血圧症の一般人口における有病率が100万人あたり1~5人程度なので、混合性結合組織病(MCTD)の肺高血圧症合併率は極めて高いといえるでしょう。また、症状の有無に関係なく膠原病患者に肺高血圧症があるか調べたところ、混合性結合組織病(MCTD)の約16%に肺高血圧症がみられたというデータもあります。
臨床症状の有無に関わらず肺高血圧症を発症している可能性があるため、混合性結合組織病(MCTD)と診断された際は、肺高血圧症を合併していないか心エコーで検査する必要があるのです。経過中にそれまでは問題なくても、急に現れることがあるので繰り返し検査が行われます。

混合性結合組織病(MCTD)はどのような人が発症していますか?

混合性結合組織病(MCTD)は圧倒的に女性に多い疾患で、男女比は1:13~16です。
患者は40歳代に最も多くみられ、平均年齢は45歳です。なお推定発症年齢は36歳で、30歳代の発症頻度が高くなっていますが、小児から高齢者まで幅広い世代で発症します。

混合性結合組織病(MCTD)に遺伝などはありますか?

混合性結合組織病(MCTD)の症状の1つである全身性エリテマトーデスは家族内発症が多く、一卵性双生児では特に高確率で発症することから、遺伝的要因が強く関係しています。一方、混合性結合組織病(MCTD)は遺伝的要因はあまり認められていません。
しかしある調査の中では若干名家族内での発症が認められたことから、遺伝的要因が全く否定できるわけでもありません。混合性結合組織病(MCTD)が遺伝するというよりは、混合性結合組織病(MCTD)になりやすい体質が遺伝する程度だと考えて良いでしょう。

合性結合組織病(MCTD)は予防することはできますか?

混合性結合組織病(MCTD)はまだ解明されていない部分が多く、予防方法も見つかっていません。しかし混合性結合組織病(MCTD)は日常生活の注意点を守れば、薬物療法をせずとも症状の緩和が期待できます。

過労は避け、症状悪化時は休養を取る

寒冷期はなるべく外出を控え、外出時は手袋を着用

冷水ではなく温水を使用

ハンドクリームをこまめに使用し、外傷予防する

紫外線の強い日は帽子・長袖などを着用し、直射日光を避ける

刺激物はなるべく摂取しない・便秘対策

肺高血圧は喫煙・感染症・発熱・貧血・塩分・水分の過剰摂取・寒冷・疲労がリスク因子のため、これらを避けることが大切です。なお混合性結合組織病(MCTD)を発症しても、軽症であれば妊娠・出産は可能です。
しかし肺高血圧症を合併した場合、肺高血圧が悪化すると有効な手段がないまま死に至る可能性があるため、確実な避妊が必要になります。また軽症であっても命を落とす危険性はあるため、発症中に妊娠・出産を希望している方は、担当医とよく相談する必要があります。

混合性結合組織病(MCTD)の治療方法

混合性結合組織病(MCTD)は治りますか?

混合性結合組織病(MCTD)は原因不明の疾患なので、根本治療はありません。しかし発病からの5年生存率は96.9%で、初診時からの生存率は94.2%と比較的予後は良好です。
主な死因は肺高血圧症・呼吸不全・心不全など循環器・呼吸器系疾患による死因が全体の60%を占めています。

混合性結合組織病(MCTD)にはどのような治療法がありますか?

混合性結合組織病(MCTD)は自己免疫疾患のため、根本治療がありません。基本的には、対症療法として抗炎症療法免疫抑制療法を行います。NSAIDsの非ステロイド抗炎症薬が使用されることもありますが、稀に無菌性髄膜炎を誘発するリスクがあります。
急性期の主な治療は、副腎皮質ステロイドの投与です。中枢神経障害・急速に進行する肺や腎症状・血小板減少症などは大量にステロイドが必要になります。また一旦開始してしまうと長期投与になるため、骨粗鬆症・糖尿病・感染症予防に注意しなければなりません。
ほかにも混合性結合組織病(MCTD)の重篤な合併症の1つである肺高血圧症に対して、近年いくつかの薬剤が使用できるようになりました。

混合性結合組織病(MCTD)に手術は必要ですか?

基本的に混合性結合組織病(MCTD)の治療は薬物療法のため、手術する必要はありません。しかし肺高血圧症の中でも慢性マクロ血栓塞栓性肺高血圧症の場合は薬物療法が効かないため、外科的治療として肺血栓内膜除去術を行うことがあります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

混合性結合組織病(MCTD)は女性に多く発症する病気で、根本治療がないため長期に渡って症状と付き合っていく必要があります。また妊娠を希望している方は、主治医としっかり相談することで出産できる可能性があります。
しかし肺高血圧症を合併していると命を落とす危険が高いため、日頃から肺高血圧症を予防しつつ、混合性結合組織病(MCTD)の症状が悪化しないよう気をつけることが大切です。
混合性結合組織病(MCTD)を早く発見するために、レイノー現象・息切れ・動悸・風邪症状のない発熱が1日に何度もある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ


混合性結合組織病(MCTD)は原因不明の病気で、予防法も分かっていません。

もし発症した場合には周りの理解・協力を得ながら、上手く付き合っていく必要があります。

また重篤な合併症である肺高血圧症予防も、とても重要です。

もしレイノー現象・風邪症状のない発熱・息切れ・動悸などが1日に何度も出るようであれば、早めに医療機関を受診してください。

早期発見・早期治療を行うことで、合併症を予防し辛い症状も緩和できるでしょう。

参考文献

混合性結合組織病(MCTD)(日本リウマチ学会)

混合性結合組織病の診断と治療の進歩

混合性結合組織病の診療ガイドライン(改訂第3版)