多摩川に架かる首都高の高速大師橋が架け替えられます。その方法は、既存の橋の隣に新しい橋を作っておき、スライドさせるというもの。現地ではその準備が大詰めを迎えていました。

スライドのための「レール」も現地に


多摩川の首都高で組み立て済みの新しい橋桁。スライドして一気に入れ替える(乗りものニュース編集部撮影)。

 首都高の橋を「わずか2週間で架け替える」――大動脈をなるべく止めないように、老朽化した橋をリニューアルするために編み出されたのが、「事前に隣に橋を作っておいて、丸ごとスライドして取り替える」というものです。

 架け替えが行われるのは、1号羽田線・K1横羽線の高速大師橋。2022年11月16日には、多摩川にかかるこの橋が、来年2023年5月下旬から2週間通行止めとなることが発表されました。当該区間の開通は1968(昭和43)年で、半世紀が経過し疲労き裂も目立つようになってきたため、抜本的な対策として完全更新とするほか、新しい桁に「疲労き裂が発生しにくい」構造を採用するといいます。

 16日には、この「事前に橋を作っておく」作業が進む、高速大師橋の現場が報道陣に公開されました。

 架け替えられる区間は東京都側の約300m。すでに現場では、既存の橋のすぐ下流側に、寄り添うように「新しい橋」が姿をあらわしています。橋桁はIHIの横浜事業所で造られたのち、ことし4月から5月に2ブロックに分けて台船で運ばれ、現地で組み立てられました。東京タワーが寝転んだのとほぼ同じ長さのこの橋桁が、一斉に既存の橋桁を置き換えることになります。現場には、スライドをおこなうための「レール」がすでに敷設されています。

 現時点で「新しい橋」は、橋の転落防止柵(高欄)の設置工事が進行中。最終的にほぼ完成形まで仕上げられる予定で、スライドしてからの主な作業は、桁下に点検用足場を設置するのみだそうです。

 現在の橋と新しい橋の大きな違いとしては、橋脚が1か所あたり1本から2本になることです。これは先述の構造強化にくわえ、幅員を両側に85cm拡幅することなどで、重量が増加するのに対応しています。すでに2本1組の橋脚が水上に顔をのぞかせており、新しい橋桁と一体化した門型の橋脚上部が、スライド後に「合体」するのを待っています。

 架け替えにかかる費用は437億円。通行止めを5月下旬としたのは、工事の進捗状況と、交通量の影響が少ない時期を考慮して決定したといいます。