年末に大掃除をする人は多いのではないか。お片づけ習慣化コンサルタントの西崎彩智さんは「12月は片付けや掃除には適していません。気温が低くて汚れが落ちにくいし、外注するにも価格が高い。1年の中で一番掃除に適しているのは実は『今』なんです」という――。
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■12月13日はすす払いの日

そもそも、なぜ12月に大掃除をするかご存じですか。実は12月の大掃除のルーツは「すす払い」。昔は、家の中にいろりやかまどがあったので、12月13日をすす払いの日として、新年を迎える準備のために大掃除を始めたようです。また秋から続く農作業が一段落したタイミングであったという説もあります。

今の時代、いろりやかまどを使ったり、農作業をしたりという人は一部ですが、現代人は現代人で忙しい。特に働くお母さんたちは、12月は忙しいですよね。

25日にクリスマスを楽しんで、忘年会をして、年末年始に実家に帰って、気づいたら年明けでクリスマスツリーを出したままの自宅に帰る……、それがいやでクリスマスツリーすら出さないという人も聞いたことがあります。

とはいえ、12月はそれなりに楽しみたいもの。そこで、おすすめしたいのが、10月の大掃除です。そのメリットは5つあります。

■なぜ12月はダメで10月大掃除なのか

1.年末は忙しくて余裕がない

12月に大掃除をしないほうがいい一番の理由は、先程からお伝えしているように12月は忙しいからです。コロナ禍も落ち着いてきて、そろそろお友達を呼んで、クリスマスや忘年会を楽しみたいですよね。それなら10月に大掃除をしておけば、12月にあわてずにすむし、綺麗な家に人を呼べます。また家族で大掃除をする場合、それぞれに忙しいので、家族全員のスケジュールを合わせるのは、なかなか難しいでしょう。

さらにお子さんが小学生の場合、12月に冬休みに入ると、学校で保管していた体操着やお道具箱、上履きなどを一気に持ち帰ります。家で一時的にキープするためにも、10月の大掃除で保管場所をつくっておくとよいでしょう。冬休みの宿題を置くケースを準備しておくのもいいですね。

心の余裕のない12月よりも、気持ちも時間も余裕のある10月にやっておいたほうがいいということです。

■気温、天気、掃除業者…あらゆる点で10月が有利

2.寒いと汚れが落ちにくい

気温が下がると、キッチン周りの油汚れや、お風呂の皮脂汚れなどの汚れがかたまって落ちにくくなります。また窓を開けて掃除するのも寒いので、窓拭きや網戸、ベランダ掃除はきつい。でも10月なら、水を使っても、それほど寒くありません。

写真=iStock.com/bee32
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梅雨から夏にかけて、バスルームなどに広がったカビも、10月のうちに綺麗にしておくとよいでしょう。

さらにカーペットやラグなどの大物も、10月なら天気がいいですし、厚手のものも乾きやすい。これが12月になると、なかなか乾かないわけです。ベッドやソファのマットレスもベランダに立てかけて干しておけば、カラッと乾いて気持ちいい。干している間に、ベッドやソファの下も、しっかりと掃除できます。

3.ゴミが出しやすい

年末年始に、気をつけたいのがゴミ出し。せっかく大掃除しても、ゴミの収集が終わってしまって出せないこともよくあります。特に粗大ゴミを出すときは予約が必要ですが、12月になると予約がなかなか取れないこともあります。その結果、ゴミと一緒に年越しするという事態に……。

4.衣替えの季節だから

10月は、ちょうど衣替えの季節。季節の変わり目に大掃除をすると、この夏着なかったものを人にあげたり、ネットで売ったり、うまく処分できます。この夏に着なかったということは、7月、8月、9月で100回ぐらい着るチャンスがあったのに、着なかったということ。そういうアイテムを果たして来年着るかということですね。

衣類の入れ替えついでに、クローゼットの中を全部出すと、奥に置いているものが見つかることも。持っている洋服を一回リセットできるのも、10月に大掃除するメリットです。

5.プロに安く頼める

大掃除は家族だけでする必要はなく、プロに頼むのもアリです。特に窓やバスルーム、換気扇はおすすめ。自分たちでやるよりは、はるかに早く綺麗に仕上がります。ただし12月になると混み合うので、予約が取りにくく値段はピークに。その点10月なら、秋のキャンペーンなどで安く頼めます。私も、この秋の窓と網戸の掃除は、すべて業者にお願いしました。床のワックスがけも、この時期なら乾きやすいので、頼むことが多いですね。

大掃除のコツは3つ

10月に大掃除をする理由については、おわかりいただけたと思います。大掃除の基本は、普段しないところをすること。窓拭き、バスルームのカビ取り、照明や換気扇の汚れ落とし、また巾木(はばき)の上部分のほこりを取ったり、皮脂でベタベタになったドアの取っ手やスイッチプレートを拭いたりする。クローゼットや押し入れの中のものは、すべて出して、奥まで掃除して、ほこりを取るのも大掃除で行うことです。

大掃除をスムーズに進めるコツは、次の3つです。

1.タスクを書き出し、こまめに実行

大掃除をお祭りのように一日でやろうとすると、疲弊しがち。途中で嫌になってやめてしまわないために、今日はクローゼットの中、週末は天気が良さそうだから照明を全部拭こう、と少しずつ進めていくのがおすすめです。

そのためには、まずやることをすべて書き出して、それぞれにかかる時間を書き出します。タスクによってかかる時間は異なりますが、だいたい1回30分から1時間を目途にしましょう。

写真=iStock.com/AndreyPopov
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2.家族でうまく分担する

夫や子どもなど同じ家族でも、その人その人に特性があります。ですから、やることリストを書き出したら、それぞれに「どれができる?」と相談するといいでしょう。お願いベースよりは「こんなふうにやりたいんだけど、どうやったらできるか一緒に考えてよ」と相談ベースにするほうが、家族でうまく分担できます。

たとえば、私の息子は背が高いので、窓を拭いたり、高いところにあるものを下ろしたり、そういった作業は楽にできます。その代わり、狭いところがダメなので、お風呂掃除はしてくれない。でも娘は細かい作業が得意なので、お風呂掃除を頼むと、けっこう細かくやってくれました。

また家族で大掃除を行うときのコツがもう一つ。日程を決めるときは、選択肢を提示することです。

たとえば「土曜日の午前中にお願いね」と言ったら、「いやいや、こっちにも予定があるだろう」と、たいてい反発されます。ノーと言われると、こちらもイラっとくるし、悲しい気持ちがします。でも「この3つの候補日だったらどう?」、もしくは「別の日ならどう?」という選択肢を与えると、その中から選ぼうとするので、ノーと言われることはほとんどありません。これはビジネスでも当たり前にしていることだと思うので、それを家族間でも行うといいでしょう。

3.ゴールを明確にする

たとえば家族に窓拭きを頼んだ場合、窓だけ拭くのか、サッシの溝まで綺麗にするのか、あるいは網戸まで洗うのか、どこまでしてほしいのか具体的に伝えておきましょう。「やったよ」というゴールが違うと喧嘩のもとになります。

ここまでやってくれたら助かると、あらかじめゴールを共有することを覚えておいてください。

■終わり良ければすべて良し

10月に大掃除をしておけば、年末の忙しさの中で「やんなきゃ」という追い込まれ感が解消します。ずっとやんなきゃ、やんなきゃと思っていると、家族で一緒に食卓を囲んでいても、カーテンが汚いなとか、窓も汚れているし、とイライラしてしまう。そうすると家族にも当たってしまい、いいことは何もありません。

心理学では、ピークの時と最後の時の2点だけが印象に残る「ピークエンドの法則」があります。また「終わり良ければすべて良し」という言葉もあるように、1年の最後に大掃除が終わっていれば、その年は良く終わった気がします。「今年の私、よく頑張ったな」、10月に大掃除をすれば、年末にはきっとそんなふうに思えるはずです。

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西崎 彩智(にしざき・さち)
お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表
1967年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、住宅メーカーのインテリアコーディネータとして従事。結婚し、20年専業主婦を経験したが離婚。その後はヨガスタジオの店長としてスタジオに通う多くの女性のさまざまな相談に応じる。2015年、得意の片付けを生かして起業。お片づけ習慣化強化講座「家庭力アッププロジェクト」修了生は全国で1500名を上回る。
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(お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表 西崎 彩智 構成=池田純子)