中日・岡林勇希【写真:荒川祐史】

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高卒3年目・岡林が走攻守で覚醒…最下位チームの明るい材料

 立浪和義新監督が率いる中日は、今季も苦しい戦いを強いられている。残り1か月足らずで最下位に甘んじているが、チームには明るい材料も。その筆頭格が、高卒3年目で定位置を奪取した岡林勇希外野手。リードオフマンとして生きのいい打撃もさることながら、守備のデータでは球界の名手・源田壮亮内野手も遥かに上回る貢献度を見せている。

 三重・菰野高時代に最速153キロを誇った“元二刀流”は、2019年ドラフト5位で中日入団後は外野に専念。三拍子揃った潜在能力はチームメートの誰もが認めるところで、昨季の春季キャンプで臨時コーチを務めた立浪氏が最も熱心に指導したひとりでもあった。

 昨季は1軍で24試合に出場。チームでは、ブレーク候補としてドラ1の根尾昂や石川昂弥の“金の卵”が真っ先に注目されていたが、「根尾や昂弥より早くレギュラーを獲るかも」と予想していた関係者も。今季、石川昂は1軍で大器の片鱗を見せたが、5月に戦線離脱。根尾も投手に転向する中で、予言が的中するように岡林が一気にレギュラーに駆け上がった。

 8日時点で123試合に出場し、リーグ7位の打率.284、同4位の19盗塁をマーク。ベテランの大島洋平とともに上位打線と外野を担う不動の存在になりつつある。指揮官の“眼力”に狂いはなく、懸念だった外野2枠のひとつが埋まった。

守備指標は12球団トップ、走塁の貢献も屈指の数字

 データでは、躍進ぶりがさらに際立つ。セイバーメトリクスの観点からプロ野球のデータを分析する「DELTA(デルタ)」の8日時点の数値を見てみる。守備全般の貢献を表す「UZR(ultimate zone rating)」は、全選手トップの「21.2」。同じ守備位置の平均的な選手に比べ、どれだけ失点を防いだかを得点化した指標で、実に1人で21失点を阻止した計算になる。源田が「13.9」、西武の外崎修汰がパ・リーグトップの「15.8」なのを考えても頭抜けている。

 さらに、盗塁と盗塁以外での得点貢献を合わせた走塁の総合評価指標「BsR(Base Running)」も「7.9」と12球団屈指の数値。チームが勝てないだけに脚光を浴びる機会は少ないが、走攻守で大きな貢献をもたらしている。

 石川昂は故障さえなければクリーンアップに定着しそうな逸材で、ドラフト2位ルーキーの鵜飼航丞も広い本拠地を物ともしない豪快アーチを見せつけた。根尾も投手として可能性を示すなど、若手が花開こうとしているのも確か。低迷脱出の足音は、確かに聞こえ始めている。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1〜3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。