ケック天文台の望遠鏡で捉えたオリオン座の光解離領域の赤外線画像。(c) Habart et al./W. M. Keck Observatory

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 オリオン座大星雲M42は冬の夜空を代表する存在で、恒星が誕生しつつある星の苗床としても有名だ。今は秋だが夜明け前の東の空でM42はしっかりと輝いている。

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 M42は地球からの距離が1350光年と比較的近く、恒星誕生領域をこれほど近くで観測出来る場所は他にない。また太陽系誕生の謎を解明する上でも、非常に有力な証拠が得られる可能性が高い領域として、注目されている。

 ハワイのケック天文台は6日、このM42の恒星誕生領域において、従来にないほどの鮮明な画像をとらえたと発表した。ケック天文台の研究者らによると、同領域は若い星が生まれたガスや塵の雲、特に太陽のような星が形成される場所にどのように影響するかを理解するための、有力な証拠が得られる可能性があるという。

 今後は最新鋭のジェイムズウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)での観測も予定されており、今回のケック天文台での取り組みは、その道しるべとなる位置づけだ。

 これまで星間物質の構造が環境にどのように依存しているか、特に大質量星から強い照射を受けた環境で惑星系がどのように形成されるかを、小規模で観察出来たことはなかった。そのため今回の観測で、惑星系における星間物質の遺産、つまり私たちの起源をよりよく理解出来るようになるかもしれないのだ。

 特に誕生間もない恒星が発する紫外線が、星間物質にどのような影響を与え、惑星系の進化をもたらすのかが注目される。ケック天文台の望遠鏡で解明出来ないより詳細なメカニズムの解明に、JWSTが今後威力を発揮すると期待されている。

 M42では、数十億年後に人類のような知的生命体が誕生しているかもしれない。だが、おそらく人類は彼らとその話題を共有出来ないのが残念だ。