意外に多い「あおり運転から逃げたらオービスに!」との主張…裁判官はどう退ける?

写真拡大

「後続車が急接近してきた。追突しそうなほど車間をつめ、左右に蛇行したりパッシングしたり。隣の車線はクルマがつらなっていて逃れられない。怖くてついアクセルを踏んでしまった。直後、オービスの赤いフラッシュが光った。出したくて出したスピードじゃない!」

首都高速における速度違反の刑事裁判で、被告人と弁護人がそのように主張するのを私は傍聴席からさんざん見てきた。

いわゆる飛ばし屋はオービスの設置場所を熟知している。一般車両に恐怖の“あおり運転”を仕掛け、オービスの餌食にさせて楽しむ、仲間たちと“撃墜数”を競う、そんな連中がどうもいるようだ。以前、それらしきネット投稿を私は見たことがある。

なぜスピードを出したかをオービスはまったく気にしない。そもそもオービスは、通過車両の速度を自動的に測定し、設定速度を超えていたら自動的に撮影する、それだけの機械なのだ。

警察は、写真に写ったナンバーから違反車両の持ち主をつきとめ、違反者を出頭させる。違反者は「恐怖の暴走車にあおられ…」と説明する。しかし警察官は聞き流し、淡々と違反切符を切る、それが普通だ。たいていの運転者は、切符を切られる前はあれこれ文句を言うけれども、切られたらあきらめ、泣き寝入りする。警察官はよく承知だろう。

その先どうなるか。細かなところは省略し、「恐怖の暴走車におあられ…」という主張がどう扱われるか、という点についてだけ述べよう。

違反者の説明によっぽど信憑性があり、かつ超過速度があんまり高くなく、特段の違反歴もなければ、検察官が不起訴とすることはある。「あおり運転のせいにしてゴネたらチャラになったよ」とかSNSに書かれては困る。そのへんも検察官は考慮するだろう。

検察官が不起訴とせず、公判請求(正式な裁判への起訴)をしたらどうなるか。そうなったらもうアウトだ。必ず有罪、相場どおりの刑を言い渡される。「恐怖の暴走車にあおられ…」という主張を退ける理由は2段仕立て。1段目はこうだ。

裁判官「本件オービスが被告人車両の次に撮影した違反車両は×時間後であった。また、本件オービスの写真では、運転席の被告人に恐怖の表情等は見受けられない。よって、そのような後続車があったという被告人の供述は信用できない」

撃墜数を競う連中は当然、オービスの手前で自分は減速する。恐怖のあおりをされたら普通は表情が固まる。「そんなことも分からないのか。裁判官はバカか!」という考えはしかし間違っていると私は思う。