中国政府は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行初期から、「漢方薬がCOVID-19の感染予防や治療に有効」という主張を展開してきました。そんな中国政府推奨の漢方薬について、COVID-19への有効性に疑念を呈する記事を公開した中国の医療情報発信企業のSNSアカウントが凍結され、新たな投稿が禁止されてしまったと報じられています。

DXY Weibo Ban: China Health Information Provider Social Media Accounts Go Silent - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-08-10/tencent-backed-china-health-information-unicorn-censored-online

China suspends major platform that doubted Beijing COVID policies - Nikkei Asia

https://asia.nikkei.com/Spotlight/Coronavirus/China-suspends-major-platform-that-doubted-Beijing-COVID-policies

中国の医療情報発信企業「Hangzhou Lianke Meixun Biomedical Technology Co.(杭州联科美讯生物医药技术有限公司/DXY)」は、健康に関するさまざまな情報をファクトチェックし、正確な科学的知識を一般の人々に説明するウェブサイトを運営しています。DXYは中国のIDG Capitalやテンセントといった企業からの投資を受け、2020年には時価総額が10億ドル(約1300億円)を突破しました。



一方で中国政府は、COVID-19の流行初期からはり治療や漢方薬といった中国の伝統医学がCOVID-19の治療に有効という主張を展開しており、2022年春にはCOVID-19が流行した香港で漢方薬を配布しています。

これに対しDXYは、香港でも配布された「連花清瘟(れんかせいおん)」という中国政府推奨の漢方薬について、「COVID-19の感染を防ぐ効果は確認されていない」とする記事を発表。また、上海でのロックダウン中に連花清瘟が食糧などの必需品より優先して配布された点についても疑念を呈しました。この記事はすでに削除されていますが、中国のネットユーザーからは「漢方薬批判だ」といった批判が集まったとのこと。

DXYが連花清瘟の有効性に疑念を呈する記事を発表してから約3カ月後、DXYが運営する少なくとも5つのソーシャルメディアアカウントが凍結され、新たな投稿が禁止されてしまいました。Weiboのアカウントには「規約違反」のラベルが付けられていますが、それ以上の詳細は明かされていません。検閲されたアカウントには合計869万人ものフォロワーがいるそうです。



近年の中国政府は、中国の伝統医学を積極的に推奨する方針を採用しており、COVID-19についても漢方薬による治療を推し進めています。国外でも、カンボジアに漢方薬専門家を派遣したり、パキスタンで漢方を使ったCOVID-19治療の臨床試験を支援したりしているとのこと。漢方薬メーカーはこの恩恵を受けており、連花清瘟の製造元であるYiling Pharmaceutical Co.(以岭药业股份有限公司)は、2021年に連花清瘟が41億元(約810億円)もの売上高をもたらしたと報告しています。

Bloombergは今回の件について、中国におけるインターネット検閲を担当する中国サイバースペース管理局(CAC)や、WeChatの親会社であるテンセント、Weibo、DXYなどにコメントを要請しましたが、いずれも返答はなかったとのことです。