BC栃木の入団会見に臨んだ「ティモンディ」高岸宏行【写真:荒川祐史】

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「僕の人生のテーマは“応援”です」選手と芸能人の二刀流に挑む

 お笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行の入団を19日に発表した、独立リーグのルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブス。昨年4月にNPB公式戦の始球式で“芸能人歴代最速”の142キロをマークした右腕は、人気芸人と野球選手の“二刀流”に挑む。栃木の江部達也球団社長に、獲得の経緯と真意を聞いた。

 最近はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出演するなど、芸能活動の幅を広げていた高岸は「肩書が何であれ、僕の人生のテーマは“応援”です。役者であれ声優であれ野球選手であれ、全てを通じてみなさんに勇気、元気を与えることが“応援”だと思っています。そこに命をかけていきます」と記者会見で高らかに宣言。「得意球はエール球(だま)。これで押せる投手になりたいと思います」とボルテージを上げた。

 単なる客寄せパンダではない。6月中旬に栃木県小山市内でトライアウト(入団テスト)を実施。高岸は所属選手2人を相手に計5打席対戦し、被安打1に抑えた。188センチの長身から投げ下ろすストレートは平均130キロ台後半を計測し、フォークで空振り三振に仕留めるシーンもあった。

 江部社長は「ウチは今季、首位に立ったこともあったけれど、現在3位に落ちている。投手力に課題があり、常に現場の首脳陣、編成担当者が補強を検討している中で、ご縁がありました」。あくまで獲得の要因が戦力補強にあることを強調した。実際、栃木は19日現在、シーズン半ばを過ぎたBCリーグで41試合18勝18敗5分。南地区4球団中3位で、チーム防御率はリーグ8球団中ワーストの5.11と低迷している。

球団は本気のトライアウトを評価、まずは練習生からスタート

 高岸は愛媛・済美高、東洋大で投手として活躍し、プロを目指したが、怪我で断念した経緯がある。江部社長は「10年ぶりの“現役復帰”だそうですが、トライアウトを見る限り、ストレートは138〜139キロ出ていた。そこは評価しました。野球をやりたい気持ちだけで140キロ前後のボールは投げられませんから」と話す。

 当面は練習生扱いで、25日にチーム練習へ初参加。その後、慎重に実戦登坂のタイミングを見極めていくと言う。芸能活動との両立は、チームと所属事務所で話し合いながら進めていくそうだ。高岸自身は「もともと芸能活動でも“投げる仕事”が多く、日々の生活の中でトレーニングを欠かしていませんし、今後も継続していきます」と自信をうかがわせ、「僕は今まで通り、基本的に指定された時間に指定された場所で命をかけるだけです」と語った。

「高岸さんは会見で『みんなを応援します』という言葉を使われた。ああいう気持ちは大事だと感じました。人として素晴らしい、若い選手たちの見本になると思いました」と江部社長。「観客動員や球団の認知度アップを狙って獲得したわけではありませんが、結果的にそうなるかもしれませんね」とも。芸能活動との二足のわらじは異例の挑戦だが、大きな波及効果を生む可能性があると見ている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)