さて、狭き門をくぐり抜けるのは誰か。
 あるいは、誰もくぐり抜けることはできないのか。

 7月19日開幕のE−1選手権のメンバーが発表された。
 国内組でのチーム編成ということもあり、10人が初代表である。国際Aマッチ出場経験のない選手も12人を数える。Aマッチのピッチに立ったことのあるGK大迫敬介、DF杉岡大暉、MF岩田智輝、森島司、FW相馬勇紀らも、海外組を含めたベストの編成では選ばれたことがない。FW宮市亮は10年ぶりである。

 パリ五輪世代からも、GK鈴木彩艶、MF藤田譲瑠チマ、FW細谷真大がピックアップされた。フレッシュな顔ぶれが揃っている。

 W杯を控えたタイミングでのE−1選手権と言えば、2010年2月開催の第4回大会が思い出される。南アフリカW杯を4か月後に控えたタイミングで、当時は東アジア選手権として開催され、日本がホスト国を務めた。

 Jリーグ開幕前に行なわれる大会は、そもそもチーム作りが難しい。中国との第1戦を前にベネズエラとテストマッチを消化しているが、トップコンディションへ持っていけるわけもなかった。

 中国戦は0対0で引分け、格下の香港を3対0で退けるものの、韓国には1対3で完敗した。1点ビハインドで迎えた41分に田中マルクス闘莉王が退場し、反撃ムードを削がれたところはあったが、韓国も後半開始早々に退場者を出していた。10対10の攻防で反発できず、70分に決定的な3点目を喫する展開は、岡田武史監督の解任論につながった。

 新戦力を有効活用することもできなかった。09年のJ1で3連覇を達成した鹿島アントラーズのMF小笠原満男、直前のアジアカップ予選で代表デビュー戦ハットトリックを達成したFW平山相太を招集した。同じイエメン戦でデビューしていた金崎夢生、09年10月にデビューを飾ったDF徳永悠平らもメンバー入りしていたが、戦力の底上げは実現されなかった。海外組の中村俊輔、松井大輔、長谷部誠、本田圭佑らは欠場していたが、韓国に比べると主力が多く揃っていただけに、ファン・サポーターが不満を溜めるのは避けられなかった。

 一方で、ポジティブな印象を残したのは13年大会だ。

 東アジアカップとして行なわれた大会で、アルベルト・ザッケローニ率いる日本は初優勝を飾る。この大会でAマッチデビューを果たしたDF森重真人、MF青山敏弘、山口蛍、FW柿谷曜一朗、大迫勇也、齋藤学は、14年のブラジルW杯でメンバー入りを果たすことになる。

 今回のメンバーで注目が集まるのは、やはりFW陣だろう。
 3月、6月の活動に参加しなかった大迫は、クラブでのプレータイムを伸ばしている。ただ、先発でフル稼働するには至っていない。

 カタールW杯のグループステージは、中3日で3試合を消化する。そのすべてで、彼の起用を計算できるか。現時点では不確定要素が多い。

 ストライカーでは武藤嘉紀、西村拓真、町野修斗、細谷の4人が選ばれている。基本システムの4−3−3に当てはめると、武藤と西村はCFで、町野と細谷はウイングだろうか。彼らのタレント性を生かすなら、4−2−3−1や4−4−2でも面白い。

 水沼宏太と宮市亮の選出も、話題を集めている。横浜F・マリノスでプレーするふたりは、水沼が32歳での初選出であり、宮市はほぼ10年ぶりの代表入りだ。森保監督が「サプライズはない」と話していた反動として、彼らがクローズアップされているのだろう。

 個人的に推したいのは杉岡大暉だ。17年に湘南ベルマーレの一員となった彼は、1年目から出場機会をつかみ、東京五輪世代の中核を担っていく。19年には若手中心のメンバーで挑んだコパ・アメリカで、日本代表デビューを飾った。