TBS近藤夏子アナウンサー・インタビュー後編

2019年にTBSに入社した近藤夏子(こんどう・かこ)アナウンサーは、ずっとスポーツ番組に携わりたいという願いを持っていました。そして今年4月から、念願の『S☆1』メインキャスターに抜てき。スポーツ現場を飛び回り、アスリートに出会う毎日です。事前の準備を入念に行ない、番組後には「反省ノート」を欠かしません。番組での印象的な出来事や苦労、取材したアスリートの裏話をお伝えします。


スポーツ番組『S☆1』のメインキャスターを務めるTBS近藤夏子アナウンサー

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「楽しかった!」と思って寝たい

近藤夏子 楽しいのはやっぱり人と話している時です。仕事じゃなくても、会話が一番楽しいんですよ。あとスポーツを見ている時ですね。うれしいのは、アスリートの方にお話を聞ける時です。

 毎日楽しかったー!と思って寝たいんですよ。今、楽しいですよ。疲れることはありますけど、つらかったと思うことはあまりない。疲れたけど楽しかった、という感じです。

 今まであまり知らなかったスポーツや、テレビでしか見たことのない競技の現場に足を運べて、近い距離感で見られて、なおかつその選手に話を聞けるって、なんて貴重な経験でしょうか。ありがたいなって思っています。

 仕事で大変なのは準備ですね。心配性なので準備が100%できてないと、怖くて仕事に行けないんですよ。「今度、〇〇選手を取材する」となったら、生年月日や血液型、出生地はもちろん、こういう経歴で、このチームからこのチームに入って、こうなって今ここにいるんだ、とか。好きな食べ物は何だろうなど、記事をひとつずつ読んだりしています。

 先輩方の知識にはもちろん及ばないですけど、あまりにもゼロ知識でお話を聞きに行くのはとても失礼なことだなと思って。たとえば、前の試合を少しでも見ていれば、「あの試合のあのパスのことだ」とか、そういうのがわかって取材できる内容が全然違うと実感しています。準備100%というのはないですが、時間の許す限りはやっています。

欠かさずつけている反省ノート

 番組が終わったあとには反省ノートを書きます。今日もさっき『S☆1』の反省ノートを、オンエアを見返しながら書いていました。いろいろ書いてありますよ。スタジオでのやりとりもそうですし、この選手についてこの部分に触れて紹介すればよかった、というような反省も書きます。

 たとえば、この間、千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手の企画があったんですが、スタジオで「近藤さん、実際に佐々木投手の話を聞いていかがでしたか?」って聞かれた時に、番組の尺を気にしてVTRを見た感想を交えて答えられなかった。とっさに思ったことを言えたらよかったな......とか。

 反省とともにゲストや出演者に関するメモも書き込みます。サッカー選手にインタビューした時は、「南野拓実選手が関西弁だった、そうだ、ずっと大阪だったもんな」とか「伊東純也選手はやっぱり金髪だった、でも宣材写真では黒髪だな」とか(笑)。ノートには、その日の台本も貼りつけています。

 スポーツの知識に関しては、まだまだ勉強中ですし、わからないことも多いです。スポーツを伝える側として意識していることは、その選手の人柄や素の部分を伝えていけたらいいなとすごく思っています。

 素の部分や意外な一面を知ると、試合で見た時のギャップを感じられますし、ふだんすごく努力をしてるから活躍できるんだ、といった内面的な部分を伝えたいですね。あと笑顔です! 普通の表情や言葉をよりフラットに伝えていきたいなと。

 だからこそ、準備がものすごく必要だなって感じています。カメラの回っていないところでもSNSの投稿を話題にしてみたり、好きな食べ物を聞いてみたりと話をしています。そういうなんでもない話もけっこう大切にしていますね。

 アスリートの方々とお話できるのは、うれしい反面、ものすごく緊張もするんですよ。私なんかが話を聞きに行って大丈夫かな......と思ったり。でも、「こんにちは! よろしくお願いします」から入って、直接的な質問じゃない話から入っていくと、皆さんすごく優しいし、話も慣れてらっしゃるので、こちらが変な質問をしてしまっても、ちゃんと答えてくださいます。

 ですから、ただ質問するだけにならないように。カメラが回ってなかろうが、ちゃんと「会話」をしようと心がけています。

選手たちの「素」を伝えたい

 最近、驚きなのが多くの選手が年下なんですよ。みんな若いのにすごいね、私も頑張る!みたいな勇気をもらえます(笑)。

 たとえば、佐々木投手は20歳。本当に誠実で優しい方でした。身長大きいですね、いつ伸びたんですか?というような話から入ったんですが、にこやかにお話してくださいました。

「岩手は凄いぞプロジェクト」という企画で、出身である佐々木投手にインタビューしましたが、「岩手は震災もあったし、何もないところですけど、ひとつでも子供たちの希望になれれば僕はうれしいです」とおっしゃっていました。

 意外な一面といえば、球は速いけど意外としゃべるのゆっくりだなぁ......ということでしょうか。あとお酢がすごく好きなんですって。関東のお寿司は酸っぱさ足りないですか?と聞いたら「お寿司はそんなに酸っぱくなくていいです」って(笑)。

 他に楽しくて印象的だったロケは、サッカー日本代表の田中碧選手と三笘薫選手の取材ですね。小学校から幼馴染であるふたりの母校へ一緒に行ったんですが、ふたりの仲がすごくいいのも伝わってきて、楽しかったです。何よりふたりを見た時の子どもたちの笑顔が本当にうれしそうで。先輩で、しかも日本代表が来たらそりゃうれしいだろうなって。みんなで卒業文集を読んだ際に、ふたりの人柄が特に出ていましたね。

 カメラが回っていないところでも、移動の間に「好きな給食について」とかいろんなお話をしていました。田中選手は普通のメニューだったのですが、三笘選手は「ワンタンスープ!」が好きだと。本当に楽しいロケでした。

 そんな素の表情を知ってから代表戦の取材へ行くと、やはりギャップを感じます。試合に出ている時のすごさだったり、努力の大切さを実感したり。田中選手がネイマールとやり合っている!とか、三笘選手アシストさすが!とか、応援もより熱が入ります。

 試合が終わったあともインタビューしたんですが、「この間はありがとうございました! お疲れさまでした!」といった感じで、距離を近く感じられて、すごくうれしかったです。


サッカー日本代表の取材でスタジアムへ(写真=本人提供)

「面白い」が最高の誉め言葉

 アスリートからいただいた言葉で忘れられないのは、カヌーの羽根田卓也選手に「近藤さんがこんなに面白い人だと思いませんでした」って言われたんですよ。囲み取材でテレビ各社代表として質問したんですが、羽根田選手がすごくニコニコしていらして。その時面白いことを言ったとかそういうわけではなかったんですが、それまでの取材の間に壁がなくなったのかな。

 私、カヌーのライフジャケットを気に入っちゃって。抱えているとすごく安心するんですよ(笑)。それで、ずっと抱えながら取材していて、「外していいよ」って言われたけど「大丈夫です、安心するんで」って言ったら、「今度、ライフジャケット送るね」みたいな。そういうのを面白がってくれたのかなと思います。「面白いね」って言われるのは、どんな誉め言葉よりうれしいかもしれません。

 これからも、ひとつでも多くの現場に足を運んで、ひとりでも多くの人の話を聞いて、国際大会へも行きたいです。そして、視聴者の方にスポーツの魅力を伝えていきたいですね。『S☆1』のオープニングに「Sportsには世界を1つにするチカラがある。」というフレーズがあるんですけど、本当にそのとおりだと日々実感しています。

(終わり) インタビュー前編を読む>>

【プロフィール】
近藤夏子 こんどう・かこ 
1996年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にはタレントとしても活躍し、卒業後の2019年にTBSにアナウンサーとして入社。現在、テレビでは『S☆1』(毎週土曜・日曜)のキャスター、『ジロジロ有吉』(毎週金曜)の進行などを務める。ラジオでは『土曜朝6時 木梨の会。』(毎週土曜)のアシスタントを担当。父親は元アメリカンフットボール日本代表で、自身は中学では陸上部、高校ではラクロス部に所属するなどスポーツが身近な環境で育った。