近本光司

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 阪神・近本光司の連続安打記録が「30試合」でストップした。9回裏の近本の最終打席、打ち損じの打球が広島二塁手・菊池涼介の正面に転がったのと同時に、スタンドからため息が漏れた。「連続安打」は近本の個人記録だが、それをサポートするのは“チーム”である。9回表のディフェンスに成功していれば…。これが、今年の阪神の限界なのかもしれない。

 7月7日の広島戦に敗れ、完封負けは今季16度目である。

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 「9回表、無死一、三塁のピンチのあと2アウトまでこぎ着けるまでは良かったんですが。二死一、二塁となって、代打・松山竜平にセンターオーバーの二塁打を放たれ、そこで阪神ナインの集中力が完全に途切れてしまいました」(プロ野球解説者)

 松山の一撃が出るまで、スコアは「0-1」。1点を争う好ゲームだった。

 矢野燿大監督は失点こそしたが、好投を続ける先発・桐敷拓馬を5回で諦め、継投策に出た。その後、松山に2点適時打を打たれたのだが、そのセンターオーバーの二塁打は前進守備が裏目に出た結果でもあるのだ。

 「追加点をやりたくないと備えた守備陣営でした。その選択は間違っていません」(ベテラン記者)

 打たれたのは結果論だが、近本の心境を考えると、そうとも言い切れないようだ。

 「1点差なら、勝敗もまだ分かりません。でも、3点差に広がって9回裏の攻撃に入ったのなら、『今日は負けた』という雰囲気になっています。近本も『31試合連続安打』を狙う心境にはなれません」(前出・プロ野球解説者)

 ここまで、近本は3打数ノーヒット。1点差であれば、「自分が出塁して4番・佐藤輝明に」と、高いモチベーションを持って打席に立てたはずだ。

 「9回裏、近本に打席が回ってくることは分かっていました。ヒットが出て『31試合連続』となれば、球団新記録。近本を援護してあげたい気持ちはありましたが。全打席、もっとラクな雰囲気で打たせてあげたかった」(チーム関係者)

 試合中盤で同点に追いつくなど打線に勢いがあれば、近本の心境も違っていたはずだ。

 しかし、試合後の近本はこう語っていた。

 「やっぱり、そこで止まっちゃうんだなと、守備をしながら思ってましたね」

 3打席ノーヒットとなった時点で諦めていたのかもしれない。

 前出のチーム関係者は「彼の謙虚さから出た言葉」と説明していた。「緊張感を楽しめた」とも近本は語っていたが、今の阪神には個人記録をサポートするチーム力や、精神的な余裕もない。

 近本から「これからも」と前向きなコメントが聞かれたのは救いだが、こんな指摘も聞かれた。阪神がペナントレース後半のキーマンになる、と。

 「7月8日からの東京ヤクルト3連戦で阪神が勝ち越せば、ヤクルト独走の雰囲気も変わってくるはず」(前出・プロ野球解説者)

 矢野監督も「ストップ・サ・ヤクルト」の重責は感じている。近本の再スタートにヘンな重圧が掛からなければ良いのだが。(スポーツライター・飯山満)