通信障害を謝罪するKDDIの高橋誠社長(写真・時事通信)

 7月2日未明から続くKDDIの大規模な通信障害。3日午前11時、KDDIは記者会見を開き、通信障害の原因などを説明した。会見に出席したITジャーナリストの法林岳之氏に、トラブルの原因などを聞いた。

ーー通信障害の原因は?

法林 東京・多摩のネットワークセンターでおこなった機材の定期メンテナンスで、ルーターと呼ばれる機器を交換したことが発端です。新しい機器で故障が発生し、15分間音声が断絶しました。それが7月2日午前1時35分から50分の間です。

 その後、決まった手順に沿って復旧を試みたがうまくいかず、VoLTE交換機で輻輳が発生。どんどん影響が広がり、全国的なネットワークの障害に至った、ということです。

ーー「VoLTE交換機の輻輳」とは?

法林 高速なデータ通信である「LTE」を使って音声をやり取りする方式が「VoLTE」。スマホなどの通話はデータに変換されてやり取りしているのです。「輻輳」とは、簡単にいえば「回線のパンク」です。以前、チケット予約で電話が殺到して回線がパンクするということがよくありましたが、あれと同じと考えていいでしょう。

ーーネットでは「太陽フレア(太陽の表面で起きる爆発現象)の影響では」という声もあります。

法林 それはないでしょう。そうであれば、ドコモやソフトバンクも影響を受けています。総務省が6月21日に、「大規模な太陽フレア通信障害が起きる可能性がある」という報告書を公開しています。100年に1度という規模の太陽フレアを想定したものです。今回の件と発表のタイミングが近かったので、連想する人が多かったのでは。

ーー「サイバーテロではないか」という書き込みも多数見られます。

法林 それに関しては、ないとは思いますが、可能性はゼロと言い切れません。というのも、障害発生のきっかけとなった機器の故障原因がまだ調査中だということ。その調査結果が出るまで、「絶対にない」とは言い切れません。

ーー復旧の見通しは。

法林 台風が接近中ということもあり、西日本を優先した結果、すでに西日本の復旧作業は終了しています。今後は順次回復していき、東日本は3日17時30分をめどに作業は終了する予定です。遅くとも4日朝までには回復するものと見ています。

ーーauの約款には「24時間連続で障害が発生した場合は損害を賠償する」とありますが、実際に補償はあるでしょうか?

法林 auや UQ mobile 、povoなど、最大で約3915万回線に影響が出たとみられています。どのような形になるかはまだわかりませんが、何らかの補償はされるはずです。3日の会見では、KDDIの社長が「一律に補償するか、まだ回答を持っていない。今回の障害の内容をもう少し見た上で検証していく」と話しています。

ーー今回のトラブルの教訓は?

法林 今回はau回線のトラブルですが、同じようなことはドコモ、ソフトバンクでも起きる可能性があります。通信ができなくなると、それをユーザーに通知する方法はホームページくらいしかありません。しかし、スマホしか持っていない人も多い。今後このようなトラブルが起きたときの対処法として憶えておいていただきたいのは、「Wi-Fiスポット」を探すことです。Wi-Fiがあれば、通信ができますから。