ステーションも気軽に移動できる電動バイクから精密造形可能なフィラメントまで 日本ものづくりワールドレポート

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6/22(水) 〜 24(金)の日程で東京ビッグサイトにて「第34回 日本ものづくり ワールド」が行われた。主催はRX Japan株式会社。設計・製造ソリューションや機械要素技術、3Dプリンター、そしてロボットなど複数のものづくり関連展示会からなる複合展示会で、様々な技術が出展されている。

●「タタメルバイク」と「ハコベルコンテナ」 オリジンとICOMAのコラボ



ICOMA「タタメルバイク」。オリジンブース
そのなかで面白かったのは、ベアリングやトルクリミッタなどの精密機構部品や合成樹脂塗料を製造販売する株式会社オリジン
のブース。スーツケース大に折りたためる電動バイク「タタメルバイク」を開発中のスタートアップ 株式会社ICOMA
(イコマ)とコラボレーションして、タタメルバイクと組み合わせられる可搬式EVインフラステーション「ハコベルコンテナ」を参考出展していた。



ハコベルコンテナとの組み合わせ
タタメルバイクは折りたたみ可能な電動バイク。デスクの下にも置けるくらいコンパクトなサイズになる電動バイクである。ポータブル電源も付いている。「Maker Faire」や「国際ロボット展」など各種展示会で出展されてきているし、テレビで取り上げられたこともあるので、見たことがある読者も多いと思う。

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開発者である生駒崇光氏は、このバイクを作って販売するために独立・起業し、量産化に向けて開発中だ。ただ、変わった電動バイクだが、バイクはバイクである。これまでは生駒氏の個人プロジェクトといった感も強かった。

だが今回のコラボではバイクだけでなく、オリジンの軸部品や塗料などを使った可搬式EVインフラステーション「ハコベルコンテナ」と組み合わせたコンセプト展示へと一気に進化した。コンテナはタタメルバイクを収納し、必要に応じてロックを解除して引き出すことができる。

コンテナなので、コンテナごと軽トラックに積んで必要な場所に移動させることもできる。レンタルのための決済システムなどと連携させることができれば、無人レンタルバイク・ステーションとすることもできる。

上面は太陽電池になっていて、発電・蓄電もできる。もしものとき、災害時にはコンテナ自体が電源にもなる。そういうコンセプトだ。



未来の活用シーンの提案
オリジンとしては、特殊な塗料や送り機構部品などの活用だけでなく、今の時代に求められている人や環境に優しい技術という提案でもある。同社はエレクトロニクス事業、コンポーネント事業、メカトロニクス事業、ケミトロニクス事業の4事業を手がけている。この4事業のシナジー効果を提案する一つとして今回の展示を提案してみたとのことだった。



オリジンの塗料を使用。同社の塗料はスマホなどにも使われている
生駒氏は「EVバイクはこのくらい軽快なほうがいいんじゃないか」と語ってくれた。「バイク自体も完全新規設計でまったくの新型」とのことだったが、このコンセプトの提示自体に驚いてしまった。



株式会社ICOMA 代表取締役社長 生駒崇光氏。
一つ一つは目新しいわけではない。だが、組み合わせたかたちで実物を提示されると、様々な発想が圧倒的に容易になる。他社とのコラボレーションもやりやすくなるのではなかろうか。



バイク自体も実は完全に新規設計しなおしたものとのこと。量産に向けて着実に進んでいる
生駒氏は国際ロボット展でのパネルディスカッション『LOVOT、タタメルバイク、人型重機の開発者が語る「日本のロボット産業への想い」』では、まずは現在の社会に馴染みやすいが、ちょっと変わったモノを出していくことで、徐々に世の中が変わっていくのではないかといった趣旨の話をしていた。だからまずはトンがったロボットではなく、既に世にあるプロダクトであるバイクなのだ、と。

今回のコンセプト展示はその一例ということなのだろう。いま世の中にあるバイクとは、ちょっと毛色の違うプロダクトであり、それゆえ、使われ方も少しだけ違い、新しい可能性も持っている。そんなことが感じられる展示だった。予想していなかっただけに嬉しい驚きだった。



オリジンの精密機構部品は身近な機械にも使われている

●アタッチメント式電動ハンドバイク「SAVER」



日邦電機 アタッチメント式電動ハンドバイク「SAVER」
その他の展示もいくつかご紹介しておきたい。日邦電機株式会社
はアタッチメント式電動ハンドバイク「SAVER」を出展。車椅子にアタッチメントとして取り付けることで電動化する。使用者最大体重は100kg、連続走行距離は30km程度。車椅子を使っているがアクティブなユーザー向けで、2023年春に発売予定だ。

●200kgを運べるようになったTHK「SEED-Mover」



タキゲンブースのTHK「SEED-Mover」
ロボット部品などを手がけるタキゲン製造株式会社
のブースには、開発中のメカナム車輪「K-1777」を使ったTHKの移動台車「SEED-Mover」がデモを行なっていた。従来のメカナムに比べて耐荷重を大幅に強化し、1車輪あたり50kgfとした。4輪でおおよそ200kg程度のものを運ぶことができる。THKでは工場内搬送などの用途も視野に入れているとのことだった。



開発中のメカナム車輪「K-1777」。45度のローラーが15本使われており滑らかな全方向移動を実現。

●小型の産業用ロボットの可能性

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台湾のChieftek Precision Co.,Ltd.
(CPC)は小型の6軸産業用ロボット「DB0」と、同じく小さな6軸協働ロボット「S0」を出展。「DB0」は本体4.7kg、可搬質量0.5kg。協働ロボット「S0」は本体が3.5kg、可搬質量0.5kg。「cpcStudo」というPLCやNC、ロボットなどのプログラムを作成できる開発環境も用意されている。

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小型のロボットは、限られたスペースで用いることができるので、より大型のロボットのちょっとした面倒を見たり、専用機へのワーク投入などに使われている。島根自動織機の小型パラレルリンクロボットもその一つ。他の自動機械のなかに組み込むことができる。



島根自動織機の小型パラレルリンクロボット
株式会社MOS
も以前からそういう提案をしている会社の一つ。DOBOT社の小型ロボットを同ロボットの代理店Techshareと共同で、小型ロボットを使ったアプリケーションをデモしていた。また今回はそれだけでなく、事前の3Dシミュレーションによるライン立ち上げの高速化をアピールしていた。



MOSの小型ロボット活用

●精密分取・分注ユニット



アステクノス 精密分取・分注ユニット
静岡のFAソリューション企業・株式会社アステクノス
はPCR検査の前処理などに用いることができる精密分取・分注ユニットを開発して出展していた。検体チューブキャップを自動で開栓し、自動化設備のなかに組み込むことができる。ある程度の粘性の変化にも対応できるとのこと。こういった用途のロボットは増えつつある。

●大塚化学 ポチコンフィラメントを使ったロボット部品



大塚化学のコンセプトロボット。表にはロゴが貼られていた
大塚化学株式会社
は、日本3Dプリンター株式会社
のブースで、同社が開発した熱溶解積層方式3Dプリンタ用材料「ポチコンフィラメント」を使ったコンセプトロボットを出展していた。内部にはドリンクが入っていて、それを提供するためのボールネジや減速機、回転機構などを全て3Dプリンタで造形したというもの。足回りはスマートロボティクス社
による。



足回りはスマートロボティクス製。同社の「SR-UVC」モデルCの面影がある
ポチコンフィラメントのポチコンとは「Potasslum Titanate Compound」の略。同社が開発したチタン酸カリウム繊維「TISMO(ティスモ)」をバイオベースポリアミド樹脂に配合したもので、高精密・高寸法精度での造形が可能とのこと。詳細はこちら(https://premium.ipros.jp/otsukac/product/detail/2000553112/
)。

3Dプリントされたサイクロイド減速機なども出展されていた。耐久性は現在もなおテスト中とのことだが、いよいよ全樹脂製のロボットが可能になるかもしれない。



精密造形が可能なポチコンフィラメントを使った各種部品を出展

●そのほかにもロボットはいっぱい



THKブースのカワダロボティクスのヒト型協働ロボット「NEXTAGE Fillie
(ネクステージ フィリー)」。デモしているポンプキャップ供給ラインの省人化などに使われている


株式会社三明
。メカニクスの三明機工、エレクトロニクスの三明電子産業と共同で複数ロボットを連携させるデモを紹介


トーアメック株式会社
は同社が代理店販売を行っているRapyuta Robotics社のAMRを出展。


ミスミブース。同社がスポンサードしている二足歩行ロボットコンテスト「ROBO-ONE」のロボットの一つ「シズラー」を出展。「シズラー」もミスミのデジタル部品調達サービス「meviy(メビー)」で作られているとのこと。「meviy
(メビー)」は3D CADデータをアップロードするだけで即時見積もりと加工が可能なサービス。


ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズブース。通称「バイボ」と呼ばれているaiboの2倍サイズモック。