Dynabookの「dynabook R」シリーズは、14型ディスプレイを搭載したクラムシェルスタイルのノートPCだ。3月18日に、第12世代Coreプロセッサーを搭載したモデルが登場している。

店頭モデルとして投入されたのは「dynabook R9/V」「dynabook R8/V」「dynabook R6/V」の3タイプで、それぞれ搭載するCPUやシステムメモリ、ストレージの容量が異なる。

なお、6月下旬における大型量販店実売価格はR9/Vが28万円前後、R8/Vが25万円前後、R6/Vが20万円前後となっている。

今回は、Dynabookが「プレミアムモバイルノート」と位置付けるラインナップで最も安価なモデルとなるdynabook R6/Vの実力を見ていこう。

Dynabookのプレミアムモバイルラインナップ“R”シリーズ3機種のうち、エントリークラスとなる「dynabook R6/V」

ボディーカラーはRシリーズだけに許されたダークテックブルーを採用する

dynabook R6/VってどんなPC?

dynabook Rシリーズは従来から、TDP28ワットタイプのCPUを採用したことによる処理能力と、薄型軽量なボディによる携帯性、そして大画面ディスプレイと余裕のあるキーピッチを確保したキーボードの使いやすさなど、いわゆる“全部載せ”を実現。ユーザーにとっては贅沢な、開発者にとってはすこぶる困難な仕様を盛り込んでいた。

安価モデルのdynabook R6/Vでも、そのコンセプトは変わらない。ボディサイズは幅312.4×奥行き224.0×厚さ15.9mmと、14型ディスプレイを搭載した最新モデルとしては群を抜いてコンパクトとは言えないものの、本体の重さが1キロを切る約940グラムで、14型ディスプレイ搭載ノートPCとしては十分に軽量の部類に入る。

カタログスペックでは本体重さは940グラムとされているが、評価機材を実際に測ると905グラム。量産モデルとは状況が異なるので参考情報として

軽量かつ薄型なボディでは、どうしても堅牢性が気になるところだ。多くのノートPCではボディに受けた衝撃を“吸収”して強度を確保するが、薄いdynabook Rにはその余白がない。そのため、開発陣は物理演算シミュレーションを重ねて衝撃を分散する構造を検討することでMIL-STD-810H準拠の堅牢性能を実現している。

また、対防水についても、キーボードの下層に防水フィルムを敷くことで、液体が基板層に到達するまでに電源をシャットダウンしてショートによる基板破損を防ぐようにしている。

○第12世代Intel Coreのi5-1240Pを搭載

処理能力の要となるCPUは、第12世代Coreプロセッサー世代でミドルレンジクラスのCore i5-1240Pを搭載する。

同時期に登場したdynabook Rシリーズの上位モデルで採用するCore i7-1260Pと同じくTDP(Processor Base Power)は28Wで、Performance-cores(P-core)を4基、Efficient-cores(E-core)を8基実装し、同時対応スレッド数がP-coreの4×2=8スレッド+E-coreの8スレッドなのも同様だ。

ただ、スマートキャッシュの容量が12MB(Core i7-1260Pでは18MB)で、動作クロックがP-coreでベース1.7GHzのMax Turbo Frequency4.4GHz、E-coreでベース1.2GHzのMax Turbo Frequency3.3GHzに抑えられている(Core i7-1260PではP-coreでベース2.1GHzのMax Turbo Frequency4.7GHz、E-coreでベース1.5GHzのMax Turbo Frequenc3.4GHz)。

CPU-ZでCore i5-1240Pの仕様情報を確認

また、CPUに統合するグラフィックスコアもCore i7-1260Pと同じIris Xe Graphicsだが、こちらも演算ユニット数が80基、動作クロックが1.3GHzと異なる(Core i7-1260Pは96基に1.4GHz)。

GPU-Zで統合しているIris Xe Graphicsの仕様情報を確認。シェーダユニットの欄は96基となっているが実際には80基動作となる

その他、R6/Vの処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5-4800を採用していた。容量は8GBでユーザーによる増設はできない。ストレージは容量256GBのSSDで試用機にはSamsungのMZVLQ256HBJDを搭載していた。接続バスはNVM Express 1.4(PCI Express 3.0 x4)だ。

ベンチマークで前世代Core i7越えの実力を発揮

Core i5-1240Pを搭載したdynabook R6/Vの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Time Spy、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施した。

なお、比較対象としてCPUにCore i7-1165G7(4コア8スレッド、動作クロック2.8GHz/4.7GHz、L3キャッシュ容量12MB、統合グラフィックスコア Iris Xe Graphics)を搭載し、ディスプレイ解像度が1,920×1,080ドット、システムメモリがDDR4-3200 8GB、ストレージがSSD 512GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

CPU世代が比較対象より新しいことが幸いしてが、ほとんどのベンチマークテストで比較対象を上回るスコアを出している。

PCMark10において、ともにCPU処理能力のウェイトが高いEssentialとProductivityのスコアでは、動作クロックがより高いCore i7-1165G7を搭載した比較対象ノートPCのスコアが上回っているが、グラフィックス処理のウェイトが高いDigital Content Creationのスコアではdynabook R6/Vのスコアが比較対象を大きく引き離している。

グラフィックス処理能力の高さは、ゲーミングベンチマークテストの3DMark、ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズのスコアでも如実に示されている(どちらも比較対象と比べて1.5倍の値)。なお、CINEBENCH R23も高いスコアを示している。特にMultiスコアはCore i5-1240P搭載システムとしても高い値となっている。

dynabook R6/Vのバッテリー駆動時間はDynabookの公式データにおいてJEITA 2.0の測定条件で約20.5時間となっている。内蔵するバッテリーの容量はPCMark 10のSystem informationで検出した値で48,741mAhだった。

バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは7時間14分(Performance 5680)となった(ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定)。

発熱は? 駆動音は? インタフェースは?

dynabook Rシリーズの設計について、Dynabookは「あくまでも定量的に28ワットを放熱する、という前提で設計しました。どれだけ上(28ワット)に張り付いて粘り強く動かせるか、というところがDynabook開発陣の腕の見せ所」(dynabook RJ74開発者インタビュー 第12世代Core搭載の14型で1kg切り「Rの称号を持つdynabook」より)としている。

そのため、高効率なクーラーユニットをボディに組み込むことになるが、本体の発熱やクーラーファンの発する音量は気になるところだ。

電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行し、CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。

ヒンジ奥に排気スリットを設けており、ディスプレイを開いた状態でパネルに沿って排熱されていく

底面には奥側に広範囲に吸気用スリットを設けている

ホームポジションキートップとパームレストの表面温度では、FキーとJキーで共に40度を超している。キーボード左側エリアは「あちっ」とまではいかないが、それでも「うーん、暑い」と感じてしまうほどだ。底面では、スリット中央奥周辺が最も温度の高いところで43度台に達している。

本体に搭載するインタフェースは、Thunderbolt 4(USB 4 Type-C)×2基(電源コネクタ兼用)、USB 3.2 Gen1 Type-A×2基(1基はパワーオフUSB充電機能に対応)、ヘッドホン&マイク端子のほかに、映像出力用としてHDMI出力(Standard A)、そして、ビジネス用途や最近ではネットワーク対戦用の高速有線LAN接続用としてRJ-45を用意する。

また、メディア用インタフェースとしてはmicroSDスロットも載せている。無線接続インタフェースでは、IEEE802.11axまでカバーするWi-Fi 6(2.4GHz対応)とBluetooth 5.2を利用できる。

左側面には、 HDMI出力にUSB 3.2 Gen1 Type-A、2基のThunderbolt 4(USB4 Type-C)を備える

右側面には、マイク&ヘッドホンコンボ端子にUSB 3.2 Gen1 Type-A、有線LAN用RJ-45、microSDスロットを用意する

正面

背面

ACアダプタは右側面中央に位置するThunderbolt 4に接続する。標準付属のACアダプタのサイズは60×60×27ミリ。重さはコード込みで実測246グラム。出力は20Vで3.25Aだ

○Webカメラには物理カバーを用意

本体にはディスプレイ上側にカメラを内蔵。720p対応で有効画素数が約92万画素、ステレオマイクはビデオミーティングで周囲の音声を集音しやすいように上面に組み込んでいる。

カメラ機能では、AIが背景ぼかしなどをしてくれる「AIカメラエフェクター」を利用可能。また、カメラとともにテレワークで需要が増えているリモート会議のための機能としては、周囲の雑音を抑える「ノイズサプレッサー」を備えている。

ディスプレイ上部に配置した有効画素数約92万画素のカメラ

ハードウェアでレンズシャッターを用意している。上面に2つある孔は周囲の音声を収音しやすくしたマイクアレイ

キーボードは「フカフワ」の感触

キーボードは、キーピッチが約19ミリ(キートップサイズは実測で15.5ミリ)、キーストロークが約1.5ミリを、それぞれ確保している。タイプした感触は軽い、というよりは柔らかい。一番下に押し切る直前に「フカフワ」とした緩衝材的感触が挟まる。

軽めタッチのキーボード。タッチパッドのサイズは110×86ミリと広いエリアを確保している

ストロークは1.5ミリを確保している

ディスプレイの最大開度は180度。対面の人と画面を共有可能

ディスプレイの解像度は1,920×1,200ドットとフルHDと比べて縦方向に情報量が多い。文章を書いているときには一行でも多く目視で追えたほうが見通しがいいし作業もはかどる。

そういう意味ではわずか180ドットといえどdynabook R6/Vのディスプレイは文章書きをメインとするユーザーにとって価値がある。また、非光沢パネルを採用しているので週以降が映り込まず表示内容に集中できるのも仕事の道具として評価したい。

縦方向の見通しがよく、非光沢パネルで画面に集中できるディスプレイ

DynabookはRシリーズを「革新のモデル」と位置付けている。

Windows 11と第12世代Coreプロセッサーを組み合わせ、「Processor Base Power 28ワットの高いベース電力の条件で、フルパフォーマンスをできるだけ長く継続して発揮することが実は重要」(前出インタビュー記事の発言より)という考えに基づく強力な冷却機構を用意し、処理能力チューニングを施した。

その成果が、Core i5-1240P搭載のエントリーモデルながらベンチマークテストでCore i7-1165G7搭載ノートPCを上回るスコアとなって示されたといえるだろう。

価格性能比に優れた軽量堅牢ノートPCを必要としているならば、dynabook R6/Vは購入検討に値するモデルとなりそうだ。