「開幕から思っていたようには波に乗れず、指揮官として責任を感じております。選手・スタッフはそんな中でもここまでしっかりついて来てくれました。心から感謝しています。ここからチームが奮起して、必ずJ1昇格できることを祈っております」

 監督交代のリリースにはこう書かれ、同時にブラジル人の新指揮官就任も発表された。

 開幕から不安定な戦いを見せていたチームに対し、クラブは安易な監督交代を行なわない方針だったとされるが、開幕直後の3月には降格圏直前の20位に沈む。4月を3勝1分1敗とし、いったんは立ち直ったかに見えたが、5月は2勝1分3敗と負け越したことで監督交代の可能性が浮上、後任のリストアップも進められたと見られている。なかでも影響が大きかったと思われるのが5月25日の18節・千葉戦だ。

 千葉戦でチームは連戦を考慮し先発を8名入れ替えて戦い、千葉の5バックを崩すことができぬまま、ロングキックとサイド攻撃で効率良く攻めた相手に2失点。先発したクリスティアーノ、カイオ・セザールといった主力外国籍選手も力を発揮しきれずに敗れてしまった。この試合後に関係者が一室に集まる様を見て、その雰囲気から監督交代の可能性を感じた者もいたという。
 
 昨年にあれほど機能した松田サッカーが、これほどに苦戦した理由は複数ある。

 ひとつは前述した補強バランスの悪さだ。昨季の序盤は、秋野央樹、ルアン、富樫敬真、フレイレ、徳重健太といった選手中心のポゼッションで戦い、途中から米田隼也、加藤大、江川湧清、鍬先祐弥、都倉賢といった選手中心の堅守速攻へ方針転換。さらに相手のスカウティングが進んできた終盤は植中朝日、加藤聖、ウェリントン・ハットといった選手が台頭している。実質2.5チーム分と言えるほど戦力的な幅があったのだ。

 だが、昨年のレギュラー格だったウェリントン・ハット、毎熊晟矢、名倉巧の3人をはじめ、ポゼッションを志向した選手の多くが去り、堅守速攻に適応する選手主体となった結果、今季の戦力の幅は狭まった。特に守備の約束事を徹底できないウェリントン・ハットを守備でフォローしつつ、10アシストを記録した毎熊の離脱は大きく響いた。

 もともとポゼッションを志向していたチームが守備の約束事を取り入れるより、守備のチームがポゼッションを高めることは難度が高い。守備には約束事があるため、規律を持ち込めばある程度は理論で対応できるからだ。だが個やひらめきといったものに左右される攻撃はうかつに持ち込めば守備の約束事を壊すこともある。