過敏性腸症候群(IBS)の便秘型で悩む読者の声が複数届いています。そこで、『慢性便秘症 診療ガイドライン2017』作成委員会委員長であり、消化器内科専門医・指導医、『胃は歳をとらない』(集英社)という著書が話題の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に連載にてお話しを聞いています。

前回までは、過敏性腸症候群は便の種類によって「便秘型」「下痢型」「便秘と下痢の混合型」「分類不能型」に分類されること、中でも「便秘型」は女性に多いことやその理由、症状、原因について聞きました(文末のリンク先を参照してください)。今回・第3回では、病院での治療法について尋ねます。

受診のタイミングは

前回、過敏性腸症候群の便秘型の主な原因はストレスであり、「脳腸相関」といわれること、また自律神経のバランスの乱れによること、さらに女性の場合は、女性ホルモンの関係で月経サイクルと関係することなどを教えてもらいました。便秘や、便秘と下痢のくり返しが続くとき、病院に行く目安はどうでしょうか。三輪医師はこう説明します。

「過敏性腸症候群かどうかのチェックを第1回でお話ししました。それにあてはまれば、早めに受診しましょう。チェック項目がわかりにくい、またあてはまるほどではないけれど気になる場合は、おなかの痛みと排便が関係しているかに注目してください。

便秘によって、あるいは下痢と便秘の混合型によって、おなかが痛むかどうか。おなかの痛みが排便によって緩和されたり、排便が増減する・便が硬くなる・軟らかくなるたびにおなかが痛んだりすることはありませんか。また、おなかが痛くなくても、便秘やおなかのハリが断続的に1ヵ月以上続く場合、あるいは症状がつらい場合はいつでも受診しましょう」

どこの診療科に行けばいい?

では、何科を受診すればいいのでしょうか。

「便秘や下痢の症状は、主に大腸のトラブルによって生じます。大腸とは、口から肛門まで続く『消化器官』に属します。そのため、消化器内科や胃腸内科が適切です。かかりつけの内科でもよいでしょう。ストレスが強く、ストレスによって便秘や下痢の症状があると考えられる場合は、心療内科を紹介されることもあります。心療内科とは、心因性による内臓のトラブルを診察する科です」(三輪医師)

問診で聞かれること

受診した際の診察はどのように行われるのでしょうか。三輪医師は、次の説明を続けます。

「まずは問診です。痛み方、頻度、腹痛と排便との関係、ストレスについて、おなか以外にも病気や不調はないか、過去の病気、服用中の薬についてなどを尋ねます。原因を明らかにすることが診察の第一歩です。患者さんご自身が原因を理解されると、ほっとして、治療に前向きになられます」

ここで三輪医師に、「問診で医師に聞かれること」について挙げてもらいましょう。

・不調の状態は。便秘か、便秘と下痢が交互に続くのか。
・不調はいつごろから始まったか。
・不調が始まったころから体重に急な変化はあるか。
・不調の頻度は週に〇回など、どのぐらいか。
・1日に何回ぐらい排便があるか。
・1回の排便にどのぐらいの時間を要しているか。
・便の状態はどうか。硬い、軟らかい、日によって変化する、細いなど形状は、血液が混じっていないかなど。
・腹痛はあるか。ある場合は、1週間に何回ぐらいか。
・腹痛がある場合は、排便とどう関係するか。必ず腹痛があるか。排便後に改善するかなど。
・どんなときに悪化し、また改善するか。
・腹痛、便秘、下痢以外に、どこかに不調はないか。
・薬を飲んでいるか。どのような薬で、効果はどうか。
・日常生活にどのように影響しているか。例えば、おなかが痛くて睡眠中に目が覚める、食欲がないなど。
・食物繊維が豊富な野菜・キノコ類・海藻類などの摂取は足りていそうか。
・睡眠の状態はどうか。よく眠れているか。
・運動はしているか。
・ストレスはあるか。その状態はどうか。
・近ごろ、引っ越しや転職など、ライフスタイルに変化はないか。
・家族に同じ症状や、過去に同じ症状だった人はいるか。
・基礎疾患はあるか。あればその治療はどうか。

「思い当たることがあれば、書き出しておくと診察がスムーズでしょう。また、自分の体調の整理ができて、日ごろから気を付けたい点やセルフケアの方法が見えてきます」と三輪医師。

内視鏡検査をする?

「受診して、内視鏡検査をするようにと言われるのが嫌だ」という友人がいます。過敏性腸症候群の疑いがある場合でも、内視鏡検査はするのでしょうか。

「すべての人に実施するわけではありません。問診によって必要と判断した場合や、50歳以上の方、過去に大腸の病気をしたことがある方、家族が大腸の病気をしたことがある方などは、大腸内視鏡検査や、CTによる造影検査などを行います。

大腸内視鏡検査では、大腸にポリープや炎症、がんがないかを調べます。前処置として下剤を飲む必要がありますが、検査そのものは個人差があるものの、30〜40分以内です。多くの患者さんは、『あっという間に終わった』と言われます。

問診に加えて、これらの検査で大腸に異常がないと判明した場合に、過敏性腸症候群と診断されます」と三輪医師。

聞き手によるまとめ

過敏性腸症候群の診察では、問診が重要だということです。問診で聞かれそうなことを書き出してみると、診察時の役に立つうえに、症状を自ら冷静に見つめることができるというメリットもありそうです。まずは医師に伝えたいことの書き出しを試してみる、そして消化器内科、胃腸内科などを受診したいものです。

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