●アンシミ界隈の台風の目、NUXが絶妙なやつを出してきた

アンプモデラ―、アンプシミュレーターなどと呼ばれる、人気のアンプサウンドをモデリングしたシステムが人気だ。実物を買うよりも手軽、かつ安価に同等のサウンドが手に入れられるだけでなく、曲調や参加バンドのカラーに合わせてアンプごと変えていきたいという欲張りニーズにも応えられるからだ。今回は、そんなアンプモデラ―の中でも話題となっている「NUX Amp Academy(NGS-6)」を入手したので早速試してみたいと思う。

寸法105(L) x 115(W) x 58(H) mmと、お菓子の箱程度の大きさながら、なかなか使えます

○さまざまな用途を想定したアンプモデラ―

2022年5月に発売が開始されたNUXの「Amp Academy(NGS-6)」。激戦区でもある、アンプモデラ―、アンプシミュレーターのジャンルに堂々と投入されたペダルユニットだ。

チャンネルA(クリーン系)に「Vintage」「Classic」「Modern」、チャンネルB(クランチ系)に「Brown」「Red」「Iridium」の6つのジャンルにそれぞれ2種類ずつのモデリングアンプが登録されており、それぞれNUX独自のTSAC-HD(WHITE-BOX algorithm)によりリアルな再現力を持たせている。またこのジャンルでよく使われるサードパーティー性のIRデータのロードも可能で1024種類のキャビネットIRが搭載可能だ。

本体のトグルスイッチで選択できるアンプは6種類だが、PCと接続しソフトウェアで設定すると、クリーン系のAチャンネル(左)とクランチ系のBチャンネルル(右)から、各6種類、合計12種類のアンプが選べる



こちらで実際のサウンドを紹介しているので是非参考にしていただきたい。使用ギターは、Jacson Pro series Dinky、アンプはHughes & Kettner TubeMeister 18 COMBOで、Amp Academyから直接アンプのインプットへ入力し、アンプはクリーン、アンプ側のリバーブはゼロにして録音した

これらのアンプはA/Bフットスイッチによって、クリーン系、クランチ系を使い分けられる。本体のトグルスイッチと併用することで、先ほど記述したA、Bそれぞれ3つのジャンルから1種類ずつを踏み分けられ、SCENEフットスイッチにはノイズゲートやエフェクター、適用するIRデータ、EQ、センドリターン、リバーブなどをブロック化したものを3パターン登録しておくことができる。

つまり、A/Bフットスイッチ、SCENEフットスイッチによって、かなりのサウンドバリエーションを使い分けられる。あらかじめ本機と接続したPCで細かい設定を行っておけば、録音時だけでなくライブでも実に心強い存在になってくれるのも魅力だ。

フットスイッチは2つ。チャンネル用のフットスイッチとセッティングを記憶させているSCENEをセレクトするフットスイッチがある。両方を同時に押すとバイパスされる。同社の同価格帯のアンプシミュレーターで、本機よりも多くのモデリングアンプを搭載している機種もあるが、可搬性やとっさの場合の操作のわかりやすさを考えると、ライブやスタジオ練習のお供には本機の方が適しているのではないだろうか

ちなみに、細かなセッティングはUSBケーブル接続によりPCで管理することになるが、そのままUSBオーディオインターフェイスとしても使用可能なほか、DIポートもあるのであらゆるスタイルの卓録にも対応。近年のギタープレイの多様な楽しみ方に合わせて、様々な次元に対応できるマルチデバイス的なところも併せ持つ、サウンドメイクの中核的なペダルユニットが「Amp Academy(NGS-6)」なのだ。

○直感的なサウンドメイキング

本体に用意されているのは8つのコントローラーと、要所に採用されているトグルスイッチが目に入る。コントローラーノブは、選択しているアンプのパラメーターを変更するのに使うのはすぐに理解できる。フロントパネルにあるトグルスイッチはA/Bそれぞれのチャンネルの3種類のうちどれを選ぶかを指定し、SCENEトグルスイッチはメモリーしている3つのバンクを指定するのに使うものと覚えれば簡単だ。誤操作を防ぐためか、トグルスイッチはコントローラーノブの合間に配置されているので、曲中ではなく、曲間にかがんで操作することになるだろう。

背面にはインプット、アウトプットのほかインサートジャックも採用されていて、専用のTRS Yケーブルでセンドリターンにエフェクターなどをインストールすることができる。DI GND LIFT、IR OUTのトグルスイッチも用意されているが、これはそれぞれDIのノイズ発生時の出力調整やIRブロックのオンオフを指定するときに使う。

背面のインターフェイス。楽器と接続するINPUT/OUTPUTジャック、DI出力時のノイズ低減用のDI GND LIFT and IR OUT トグルスイッチ、付属のTRS Yケーブルを使用して他のエフェクターをセンドリターン接続するINSERTジャック、PCと接続するUSBポート、電源ジャックがある

左側面には、ライブ、スタジオで活躍しそうなDIポートとAUX、ヘッドフォン端子がある

このペダルユニットのキモとなるUSBポートはCタイプとなっているがケーブルは別売りとなっているので注意が必要。本機は足元で、PCはデスクの上と考えるとUSB Cケーブルは長めのものがよいだろう。

そして忘れてはいけないのがPCの準備だ。NUXのオフィシャルサイトへ行き、最下層からドライバとなる「NUX AUDIO Driver」(サイトにはNUX ASIO Driverと表記されている)と管理ソフトウェアの「NUX AmpAcademy Editor Software」を入手してインストールしておこう。

オフィシャルサイトからソフトウェアとドライバを入手する。Windows用、Mac用があるので間違えないように

ちなみに2022年5月現在、ドライバがV3.29.0、管理ソフトがV2.4.7となっており、筆者の環境ではWindows10だと普通に動くが、Windows11だとドライバがうまくインストールできない。別のWindows11環境で試せたわけではないので、固有の現象である可能性もあるが、おそらく早い段階で対応してくれると思うので、うまくインストールできないという方がいたら参考にしていただきたい。

●試奏すると極上サウンドが待っていた

○極上のモデリングサウンドが待っているぞ

さて、機能をある程度理解したらさっそく音を出してみよう。とはいえ、それほど難しく考える必要はなく、まずはシンプルにギターを差してアンプで鳴らしてみればいい。Aチャンネルの各モデルはどれも極上でゲインやEFXをコントロールすることで、クリーンから極上の軽い歪みまで自由自在に楽しめる。

EFXに登録されているエフェクターはブースター系が多いので、歪みの質や深みによって各エフェクトをセレクトすればよい。アンプによってはハイ側がきつく聞こえる人もいると思うので、その場合はブライトネススイッチがあればそれをオフに、なければイコライザーで微調整もできるのでサウンドメイクは容易だ。

専用のソフトウェアの画面。操作はシンプルで、ひとまずA/Bチャンネルでのcurrent(トグルスイッチで選択される方)を設定し、あとは本体同様のコントロールノブ、キャビネの選択、「EFX」での各エフェクターの調整でことは足りる。なお、右上の「NUX」という文字の下にあるのが設定保存、読み込み関係のアイコンで、文字の右にある丸いアイコンは練習用のドラム演奏を呼び出すアイコンだ

ちなみに、チャンネルA(クリーン系)の場合、歪み量のコントロールとしてギター本体のボリュームノブが効きやすく感じられ、個人的にとても好みだったりもする。きれいに聞かせたいときはボリュームを絞り気味で、ガッツのあるサウンドにしたいときは少し上げ気味にといった使い分けができるのは、いわゆる“本物”っぽさがあるので気分が盛り上がる。

チャンネルBはクランチ、とメーカーはいうが、実際にはBROWNのアンプでもかなりヘビーな歪み方をしてくれる。サウンドメイクの際にはゲインを上げ過ぎないように注意しなければならないほどで、Iridiumのアンプになると筆者の所有ギターでは低音弦が不足するほどの激歪みも可能になる。セッティング次第でハードロックからラウドロックやエモ的なサウンドまでカバーできるのは驚きだ。

実際のサウンドメイクはA/Bチャンネルに登録したいアンプを選び、コントローラーノブでサウンドの大枠を作る。ブースターが必要ならEFXで好みのエフェクターをかまして、IRで音の広がり方を決める。微調整はイコライザーで締めるといったやり方なら、狙ったサウンドにたどり着きやすいように感じた。

Bチャンネルに関してはノイズがどうしても発生する組み合わせもある。その場合はノイズゲートのNRをオンにするとしっかり低減してくれるので重宝する。もちろん、SENS、DECAYのパラメーターも調整できるので、効きすぎを防ぐことも可能だ。

○収録アンプ、エフェクター、リバーブとモデリング元ネタリスト

選択できるアンプはこちら。チャンネルAが Vintage(Twin Rvb、Super Rvb)、Classic(Vibro King、Mr.Z 38)、Modern(Cali Crunch、Brit Blues)。チャンネルBがBrown(Fireman、Brit 800)、Red(Dual Rect、SLO 100)、Iridium(Uber、DIE VH4)の12種類(Amp Academy単体で選べるのは6種類)。人気のアンプをビシッと並べたラインアップで、これをアンプごと切り替えるなんてリアルではなかなかできない。収録アンプ数だけなら同社のMG-30の方が多いので、携帯しやすさや足元操作の明確さならAmp Academy、アンプ数重視ならMG-30、という区分けでよいのではないだろうか ※当画像と以下2つは製品サイト(http://www.ariaguitars.com/jp/items/other-brands/nux/effector/Amp-Academy/)より転載

EFXで選べるエフェクターはこちら。上段左から時計回りに、ROSE COMP、K COMP、KATANA、RC BOOST、CRUNCH、Red Dirt、MORNING DRV、T SCREAM、AC BOOSTの9つ

リバーブで選べるのはこちら。左からROOM、HALL、PLATE、SPRING、DAMPの5つ

本機に収録されているアンプ、エフェクターのモデリング元ネタと思われるものをまとめてみた。おおよその参考にしてほしい。

本機での表記

元ネタ

(元ネタの)特徴

chA Vintage Twin Rvb

Fender Twin Reverb

これがなくっちゃ始まらない。クリーンサウンドの超ド定番

chA Vintage Super Rvb

Fender Super Reverb 

これもド定番。TWIN REVERBより、歪みと枯れニュアンスがやや強まる

chA Classic Vibro King

Fender Vibro-King 

手作業製造アンプの最上位モデル。クラプトンも使用した名器

chA Classic Mr.Z 38

Dr. Z Maz 38 -

ローがしっかり出ていながらヌケがよい稀有なサウンド

chA Modern Cali Crunch 

Mesa Boogie Mark I 

メサブギー最初期のアンプ。強力なクランチサウンドが魅力で、サンタナや高中正義が使用したド名器

chA Modern Brit Blues

Marshall Bluesbreaker 

ブルースブレイカーズでクラプトンが使用したことで知られるコンボアンプ

chB Brown FIREMAN HBE

FRIEDMAN BE-100 HBE(HiGain Brown Eye)モード 

マーシャルを改造し、強化したアンプ。しっかり歪むが、ドライな感じでヌケが良いサウンド

chB Brown Brit 800

MARSHALL JCM800 

これまた超ド定番。イマドキの歪み系アンプほどは歪まないが、なんせ音が太い

chB Red Dual Rect

Mesa Boogie Dual Rectifier 

ラウド系のド定番。強力に歪むが、コードを弾いてもつぶれないサウンドが特徴

chB Red SLO 100

SOLDANO SLO-100 

ゲイリー・ムーア、スティーヴ・ルカサーが使用。ハムでもシングルでもいける

chB Iridium Uber

Bogner Uberschall

モダンハイゲインといえば、こちら。ドロップチューニング、7弦ギターでもグイグイ使える

chB Iridium DIE VH4

Diezel VH4 

メタリカのジェイムズ・ヘットフィールド使用で知られた、同アンプシリーズのフラッグシップモデル

EFX ROSE COMP

Ross Compressor 

後のコンプエフェクターのモデルとなった伝説的名器

EFX K COMP

Keeley COMPRESSOR 

Rossのクローンコンプの中でも傑作といわれる。自然なかかり具合が魅力

EFX KATANA

Keeley Katana Clean boost

出音のキャラ変をせずに、しっかりブーストしてくれる。単音フレーズをしっかり聞かせたいときに

EFX RC BOOST

Xotic RC Booster 

クリーンに音にハリを出してくれる定番。音が埋もれがちなセッション時の強い見方

EFX AC BOOST

Xotic AC Booster 

こちらも一世を風靡した名品。RC Boosterと比較すると、ゲインブーストに力を発揮する

EFX T SCREAM

Ibanez TUBE SCREAMER 

スティーヴィー・レイ・ヴォーンも使用した、世界に誇る日本の名器。クリアで太い音に

EFX MORNING DRV

JHS Pedals Morning Glory 

Marshall Bluesbreakerを参考にしたオーバードライブ。各音域がバランス良く歪む

EFX Red Dirt

Keeley Red Dirt Overdrive 

クリーンブーストからハイゲインまでカバーする使いやすいオーバードライブ

EFX CRUNCH

MI AUDIO Crunch Box Distortion 

こちらもクランチからハイゲインまでをカバー。太い音が魅力

○より実践的なアンプモデラ―ペダル

こうして作ったシステムはSceneにある3つのバンクに登録しておけばいつでも本体から呼び出せるのもうれしいところ。冒頭でも述べたようにライブやスタジオではPCでコントロールすることは難しいので、PCでのサウンドメイクに頼り切らずとも、簡単な操作で十分な数のサウンドが管理できるところに好感がもてる。

宅録派にもライブ派にもガンガン使ってもらいたいのが「Amp Academy(NGS-6)」だ。この激戦区において、メーカー標準価格が33,000円(税込み)、筆者調べでの実勢価格は26,000円前後というのが現在の状況。機能を見てみればコストパフォーマンスは最強の部類に入るうえに、この使い勝手の良さから即戦力にもなってくれるナイスなペダルユニットだと思う。初めてアンプモデラ―を買うという人にも安心してすすめられるので、気になる方はぜひ手に取って、アンプ大学に入学してみていただきたい。





こちらで実際のサウンドを紹介しているので是非参考にしていただきたい。使用ギターは、Jacson Pro series Dinky、アンプはHughes & Kettner TubeMeister 18 COMBOで、Amp Academyから直接アンプのインプットへ入力し、アンプはクリーン、アンプ側のリバーブはゼロにして録音した