「ミスがなければあと15点取れていた」は甘えである…東大生の母が"残念なミス"を絶対に見過ごさなかったワケ
※本稿は、佐藤亮子『子どものやる気がどんどん上がる魔法の声かけ 3男1女東大理三合格の母が12歳までにかけた言葉』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
■「◯◯ちゃんは100点だったのに」は言ってはダメ
✕ なんでそんなに悪いの! ちゃんとやらなかったでしょ。/○○ちゃんは良かったのに
◯ どこで点を取れなかったのか、考えてみようか
テストの点数が悪かったときに、「なんでそんなに悪いの!」「ちゃんとやらなかったからでしょ!」などと責めてはいけません。それ以上によくないのは、「○○ちゃんは100点だったのに、なぜあなたはそんなに悪いの」などといった、他人と比較する言葉です。このような言葉をかけられた子どもは、ただでさえ悪い点数でつらいのに、さらに落ち込んでしまうことになります。
点数の悪さを深刻に受け止めて、ヒステリックに怒鳴ってしまうと、子どもは親の態度に恐怖を感じてしまいます。「お母さんはいい点数だとニコニコしているけれど、点数が悪いと怒るから怖い」と思うと、悪い点数のテストを隠したり、ウソをついたり、カンニングしたりしてしまうかもしれません。
■点数が悪かったら、原因を一緒に探ってみる
これでは親子の信頼関係を築くことはできません。子どもに「お母さんはすぐ怒るから怖い」と思われたら、子どもはお母さんになんでも気楽に話すことができなくなります。テストの点数が悪いときに限らず、感情的になって子どもを怒らないことが大切です。テストは一回だけではなく何度もありますから、毎回感情的になると、子どももやる気が失せますし、何もいいことはありません。子どもが「よし! 次は頑張るぞ」と思えるような前向きになれる言葉をかけましょう。
具体的には、点数が悪かった場合は、「どこで点を取れなかったのか、考えてみようか」と声をかけるといいと思います。一緒にテストを見直して、間違えた問題を解けるようにすることが大切です。見直しをした後には、「苦手なところがわかって良かったね」「間違えた問題を解けるようになったね。次は頑張ろうね」と、子どもが前向きな気持ちになれる声かけをしてあげましょう。
テストの点数をもっと気楽に考えましょう。テストで悪い点数を取ったとしても、見直しをすればいいのです。毎回、間違えた問題のやり直しをずっと続けていけば、少しずつできるようになるはずです。
■目標の点数に届かなくて悩む子にかける言葉
✕ 実力もないのに、そんな点取れるわけないでしょ。/目標が高すぎるんじゃないの
◯ いいときも悪いときもあるよね
大人だって、人生は思い通りにいきませんよね。お子さんが目標の点数が取れなくて悩んでいるときには、「人生はなかなか思い通りにはいかないよ」と笑い飛ばして、「いいときも悪いときもあるよね」と優しく声をかけてあげるといいのではないでしょうか。頑張ったからといって、すぐに点数が取れるとは限りません。
絶対に言ってはいけないのが、「実力もないのに、そんな点数を取れるわけないでしょ」といった、けなすような言葉です。そもそも、目標の点数があるのはやる気があるということです。せっかくやる気があって目標を設定しているのだから、やる気をそぐような声かけをするのはよくありません。
■クリアしやすい目標を設定するように促していく
ちょっと目標が高すぎると思っても、「目標が高すぎるんじゃないの! 自分の学力を考えてごらん」といったような、子どもを悲しい気持ちにさせる言葉ではなく、「はじめは目標の点数を少し下げて、それをクリアしたら少しずつ目標をあげていった方がいいんじゃない?」と声をかけるといいと思います。
到達が難しそうな目標ではなく、ハードルを下げてクリアしやすい目標を設定。そして、到達できたら少し目標を高くすることを繰り返す方が、レベルアップしていく感じがして、やる気が出ると思います。
親子ともに、成績やテストの点数が悪いときに学ぶことはたくさんあります。現状を正しく受け止めたうえで、どうすればいいかを考えて次に活かせるような声かけをすることが大切。どんなときも、子どもをけなすのはやめましょう。
■「ケアレスミス」はただの甘えである
✕ なんでこんなミスをするの?/実力はあったのに、ちょっとミスしただけだよね
◯ なんでミスをしたのか、原因を考えてみようか
よくある不注意によるミスは、記号で書くべきところを言葉で書いたり、「当てはまらないもの」を選ばなくてはいけないのに「当てはまるもの」を選んだり、「すべて」と書かれているのに「ひとつ」しか選ばなかったりといった、問題をちゃんと読まなかったことが原因の場合が多いですね。残念なミスで点数を落としたときに、つい「なんで、こんなミスをするの?」と言いたくなる気持ちはわかりますが、その言葉はぐっと飲み込んで、お子さんを責めないようにしましょう。
慰めるつもりで、「ケアレスミスがなければあと15点取れていたね」「実力はあったのに、ちょっとミスしただけだよね」などと声をかけるのはよくありません。自分の間違えたところをいつまでも「ケアレスミス」と考えているようでは人間は進歩しません。間違えたところは「不注意によるケアレスミス」ではなく、「実力不足によるただのミステイク」なのです。親が「ケアレスミス」という言葉を口にしてしまうと、子どもは「実力はあったのにちょっとの勘違いで点を落としただけ」と考えがちです。でも、本当の実力があれば、ちょっとしたミスなどはしません。「ケアレスミス」と言う時点で甘えがあるということです。
■「字を丁寧に書くこと」は受験の必須事項
よくあるミスは、数字を丁寧に書かなかったために、0と6、9と7などを見間違えてしまう計算間違いです。漢字も止めや払いを丁寧に書かないと字として成り立ちませんから点をもらえません。自分の書いた文字が汚かったため見間違って、正しい答えが出せなかったら非常にもったいないことです。私は、子どもたちにはあまり細かなことは言わずに育てましたが、「字を丁寧に書く」ことだけはしつこく言っていました。
子どもたちが通っていた中学受験塾・浜学園では、小5までは「楽しく」勉強することに重点を置いて、テストで少々字が汚くても、続け字になっていても○にしてくれましたが、小6からは厳しくなり、続け字だと×になりました。
やはり受験では、当然採点者に○をつけてもらって合格しなければなりませんから、「字をきれいに書く」ことは必須事項なのです。子どもには幼い頃から「字を丁寧に書く」ことを身につけさせるよう、留意しなければなりません。
筆算でよく計算ミスをするのなら、お母さんがノートに線を引いてあげたり、方眼紙のノートを使ったりと工夫するといいですね。幼いうちに字を丁寧に書く習慣を身につけておかないと、入試の数学で字の汚さがミスを誘発して、致命傷になりかねませんよ。
■「苦手だよね」と言われると、苦手と思い込む
✕ 暗記力ないよね。/暗記は苦手だよね
◯ 覚えにくいよね。工夫して一緒に覚えようか
なかなか覚えられなくて悩んでいるお子さんに、「暗記力ないよね」「暗記は苦手だよね」といった言葉はNGです。その言葉が刷り込まれて、子どもは自分で「暗記は苦手なんだ」と思い込み、苦手意識を持ってしまいます。同様に、「注意力が足りないよね」「のんびりしていて、何をするのも遅いよね」などと、子どもの能力や性格を責めるような言葉も言わないようにしましょう。
お子さんが覚えられなくて悩んでいるときには、「覚えにくいよね」とまず子どもの気持ちに寄り添ったうえで、「工夫して一緒に覚えようか」と声をかけるといいと思います。そもそも、暗記しなくてはいけないことは今まで知らなかったことばかりなので、すぐに頭のなかに入るわけがありません。
■暗記事項は「家中の壁に貼って」記憶に残す
わが家の子どもたちも、理科や社会などの暗記事項でなかなか覚えられないものがありました。私はそれらの項目を大きな字で何枚も紙に書いて、家中に貼りました。掲示物のように貼ると壁紙のように見えてしまって覚えないので、それぞれの紙をあっち向いたりこっち向いたりした感じで、少し斜めに貼りました。人間は、不規則に貼られているものは気になって見てしまうので、記憶に残りやすいのです。
また、紙に書く文字もいろいろな色のマジックで書くと楽しく覚えられます。受験の直前期には、ノートにテストで間違えた項目を大きな字でカラフルに書いて、食事の時間などに見せて知識の再確認をさせました。このほか、「一緒に10回言ってみようか」と声をかけて一緒に10回声に出して言ったり、「10回書いてみようか」と言って書かせたりするといいですね。声に出したり、書いたりすると記憶が定着しやすいです。また、覚えやすい資料を探したり、ゴロ合わせで覚えさせたりするのもオススメです。
子どもが一度覚えたことを忘れてしまったとしても、「せっかく覚えたのに、なんで忘れるの!」と責めないでください。忘れることを恐れずに、なかなか覚えられないことは、繰り返し繰り返し覚えさせるようにしましょう。
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佐藤 亮子(さとう・りょうこ)
浜学園アドバイザー
元英語教師。3人の息子と娘1人の4人全員が東京大学理科三類(医学部)に合格。ユニークな教育方法が人気。『3男1女東大理III合格! 教えて! 佐藤ママ 18歳までに親がやるべきこと』『東大脳を育てる! 読み聞かせ絵本100』など著書多数。
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(浜学園アドバイザー 佐藤 亮子)