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10年という節目を迎えるなかで、これまでの活動期間の中でZAQにとって各年がどのような意味を持っていたのかを振り返っていく連載企画。

今回は、デビュー曲の「Sparkling Daydream」から8期連続タイアップを果たし、アニソンクリエイターとして一気に花開いた直後の2015年を掘り下げるとともに、早くからニュースが先行して誰もが待ちわびたTVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』のオープニングテーマ「ASEED」とc/w曲「Coward」に込めた想いをZAQ自らが解説していく。

「できない、できない」って泣きながらレコーディングを



――前回のインタビューで、「hopeness」(2016/2/3リリース)くらいまでは、「Sparkling Daydream」とは異なる自分を表現するために様々なアプローチを続けていったと伺いました。そのなかで2015年は、どのような気持ちで作品を生み出す時期でしたか?

ZAQ 「次は何をすれば?」と迷っていた時期だったんじゃないかな?ぶっちゃけてしまえば、自分の音楽の幅というところでネタ切れを感じていた時期でした。やりたいことをやり切ったわけではなかったんですけど、Hip-Hopやラウドロックまで振り切ったり、「Philosophy of Dear World」で大好きな茅原実里さんっぽい曲を作ってみたり、色々やった結果の迷いが生まれた時期だとも言えますね。

――デビュー後、まったく新しいジャンルや路線に踏み入れようとするアーティストは多いですよね。

ZAQ そうなんですよね。「新しい扉を開き始めなければいけない!」みたいな。もちろん出した楽曲すべてが自信作なんですけど、デビューして2、3年経つと最初の壁にぶち当たるので。この頃は多分、編曲にめちゃめちゃ手こずっていた時期だと思います。実は「Philosophy of Dear World」では、「作詞・作曲・編曲:ZAQ」となっていますが、ドラム周りといったアディショナルアレンジをA-beeさん、ストリングスアレンジを加藤達也さんにお願いしていて、ギターもアレンジをギタリストさんにお任せしているんですよね。自分のテクニック面で少し行き詰っていて、どうしたらアレンジが上手くいくのかプロデューサーに相談したら、「全然良い曲だから、ほかの人に頼めばいいよ」的なことになったんですよ。懐かしいなぁ。「Philosophy of Dear World」のc/wのうちの1曲「ハルイロライフ」という曲では自分に音楽の才能がなさすぎると思って、レコーディング中に泣き出したんです(笑)。それまで、「おりゃっ!私、すごいだろ!」って走り抜けてきたんですけど、さらに高いクオリティーを求めようとしたら背伸びをすることになってしまって、テクニックが追いつかない状態だったんですよ。次の「カタラレズトモ」もそんな感じでしたね。出来上がったものを聴いたら、「すごいものができた!」と幸せになれたんですけど。



――自身を取り戻すきっかけがあったんですか?

ZAQ 自信を持たずに演奏していることを周りの方から怒られてですね。アーティストらしくしゃきっとしろ、みたいに。で、「hopeness」くらいから開き直りはじめました。

――では、2015年だけが谷だったんですね。

ZAQ 谷でしたねー。凹でした、

――演奏という話でしたが、2014年に1stソロライブ、2015年に初ライブツアーを開催したことでの影響もありましたか?

ZAQ ありましたね。「絶好調UNLIMITED」は1stライブを終えたあとに書き始めた曲なんです。2014年の10月くらいかな?だから、「ライブが楽しいなぁ」みたいなバイブスだけで書いていて、めちゃめちゃライブ映えするアッパーなロックポップになっています。書き出しもスムーズでしたね。そのとき、ライブで外に出ず、人の顔も見ず、曲をアウトプットしているだけよりは、周りから影響を受けながら楽曲を作るほうが自分は自信を持って書けるとわかったんです。隣で笑っている人がいると笑う人っているじゃないですか?本質的にそういう性格なのか、皆が幸せそうにしていると私も頑張ろうと思えるんですよ。

――それは、喜ぶ顔を見たいから曲作りをしているというスタンスは、10周年記念連載でも毎回出る話ですね。ライブが制作の答え合わせであるとか。

ZAQ やっぱり、作詞作曲編曲の全部を自分で、という売り方をしている以上、手詰まりしてはいけないというプレッシャーがずっとあったんです。そこに一番落ち込んでいたのが2015年ですね。でも、ファンの皆とライブで出会い、スタッフさんに助けていただき、サウンド面でアドバイスしてくれる先輩達も増え、「あ、皆がいるから私はまだ大丈夫だな」と気付き始めたのが2016年、という流れですね。

――1stライブや1stライブツアーの思い出というと?

ZAQ 何だろう、めちゃめちゃ緊張していたから何も覚えていないかも?自分がZepp TokyoやCLUB CITTA’でライブするとは思っていなかったんですよ。それに、そのときの私は甘ったれで、豪華な花道を作ってもらうとか、色々やってもらうことにビビっていました。

――やりたい夢が叶ったという喜びを感じるのではなく?

ZAQ いや、やりたいと言っていたことがすべて叶ってしまって、「私はちゃんと皆に返せるのかな?」みたいな不安と共に走り抜けた最初のツアー、って感じでした。



――ただ、ライブの経験が楽曲制作のモチベーションになっていくわけですよね。

ZAQ 多分、2014年の日本青年館、CLUB CITTA’、2015年のBIG CAT、ElectricLadyLandを経て、Zepp Tokyoくらいからお客さんと一緒に盛り上がったり、コールをもらう喜びに気づいたりし始めたんですよね。イントロが流れた瞬間に膝から崩れ落ちる方とかいらっしゃるじゃないですか?ああいうのを見て、「この曲を書いて、このアニメに出会って良かった!」と思いました。最近のライブでも、2014、15年辺りで作った楽曲はめっちゃ盛り上がるので、その頃の曲に救われているな、とは感じています。

――ライブを楽しめるようになったきっかけというのは?

ZAQ 今も自分が一番楽しむことをライブのモットーにはしているんですよ。でないと、お客さんが楽しめるはずがないので。それは、私が5歳で初めてコンクールに出たとき、ピアノの先生が「その場を一番楽しむんだよ。そうすれば聴いている人達も楽しいから」と言ってくれたんです。それはずっと心に据えてきました。学生時代もオーディションでも。だからライブ前は必ず、「私は楽しむ、楽しむ、楽しむ」と繰り返しますね。あとは、スタッフの女の子にいつもハグする、というのがルーティン(笑)。ギューッてしてからステージに出ると歌詞を間違えないんですよ。

――2013年頃からイベントへの出演も増えました。Animelo Summer Live(以下、アニサマ)も2013年に初出場しましたね。

ZAQ アニサマはですね、あらかじめトラックを作って、曲と曲の繋ぎのMCをラップでやったんですよ。私は口下手なので、さいたまスーパーアリーナなんて大きなところでMCをする自信がなかったんです。最初は面白がってくれる人が5割くらいだったんですけど、次の年も歌詞に仕掛けを入れながらやったら受け入れられてきて。2015年にはmotsuさんと(「OVERDRIVER-ANISAMA Remix- feat.motsu」で) ラップバトルをしたんですよ。ここで、ラップの人、という印象が強くつきましたね。で、2016年のアニサマで「hopeness」をピアノで弾き語りをして……アニサマはいつもパフォーマンスで色々と挑戦をさせてくれる場所でしたね。だからこそMCができるようになったし、助けられていると思います。さっきも話したんですけど、(アニサマ統括プロデューサーの)齋藤さんみたいにZAQの音楽性を面白がってくれる人が、私に期待してくれる人がいると頑張ろうと思えるんですよ。この頃、シンガーソングライターとして一回り豊かになりましたね。

2020年から溜め込んでいた、「かっこいいZAQ曲を作りたい」欲の結晶



――続いて、9ヶ月連続シングルリリースの第4弾かつ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』(以下、B★★RS)のオープニングテーマとなる「ASEED」についても教えていただけますか?

ZAQ スタッフさんから携帯電話に、「決まりました」「なんと『B★★RS』です」というメッセージが入って「えーーーっ!」となったのが最初で。

――「ブラック★ロックシューター」に関する知識は持っていたんですね。

ZAQ でも、今回の『DAWN FALL』は世界観がまったく違うんですよ。だからマインドを新しくして、(supercellの)ryoさんが作った名曲の記憶は1回消そうと思いました。引っ張られないように。アニメ制作側からいただいたオーダーは「ギターロックなバンドサウンド」「あとは自由にかっこよく」というものだったので、アニソン然とするよりは洋楽っぽい大きい譜割りを目指しました。だから、サビの頭でリズムがハーフになってから展開していくとか、でもラウドロック的なところもあるとかしています。あとは、2ブロック目からはさらに勢いがガーッて上がる曲になっていますね。



――皆が描いて期待するZAQ、という曲になっている印象を持ちました。

ZAQ そうありたかったんですよね。2020年はほとんどリリースがなくて、自分の中に「やりたいかっこいいこと」が溜まっていたんですよ。だから、作ったのは2021年の3、4月くらいで、ZAQの持ってるかっこいいをすべて4分間に詰めこむつもりでした。サビの展開が3回あったりBメロが多かったり。ラップに加えて、落ち着いたクワイアのようなコーラスラインもあるし、ZAQが盛り盛りな曲になりましたね。

――そんなにも、こういうラウドロックに対する想いが強かったんですか?

ZAQ ずっとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな曲をやりたくて(笑)。ラップのところで2バスがドコドコ入っているとか。でも、常識的な速さのパンクロックで、というオーダーもあったので、(オープニングで流れる)1コーラスは常識の範囲内で、でもフルコーラスを聴くと私のやりたかったビート感が導入されている曲になっているんです。最後は転調するという、アニソンっぽくて一番気持ち良いところも用意しています。

――では、あまり苦労した部分はないですか?

ZAQ そうですね。リテイクは1回いただきました。サビが少しシンプルなのでもう一展開欲しいということで。それでサビの後半が増えましたけど、それくらいです。『B★★RS』って意外と物語が勧善懲悪でわかりやすく、主人公が主人公らしく、悪役も悪役らしい王道、というのもあって作りやすかったですね。

――歌詞についても制作上のポイントを教えてもらえますか?

ZAQ 歌詞も制作サイドから、希望や絶望をキーワードにするといいと思います、というメッセージがありまして。絶望に陥った地球がエンプレスという希望を得て、そこから冒険が始まる物語なので、エンプレスの存在を希望の種ととらえて、「ASEED」――1つの種、というタイトルにしました。歌詞では、エンプレスが何のために戦うのか、何のために地球を守らなくてはならないのか、といった使命やそれに対する葛藤を書いています。

――歌についてはどのようなイメージでレコーディングされましたか?

ZAQ はい、ZAQはこれまで21枚のシングルを出してきました。大体、寝不足なんですけど、「ASEED」のレコーディング日が一番体調が良かったです(笑)。だから、声がめちゃめちゃノッていて、ニュアンスもバチバチに入れていますね。実はこういう曲って、疲れている方が良いところはあって……例えば「ア゛ーッ」っていう、ガラガラな声とか。でも、体調が良かったのと、何より曲に対する手応えで感情がノッていたので、すごく良いレコーディングにはなりましたね。バンドで「せーのっ」でレコーディングしたあとの歌入れでしたし、かっこいい歌を録ってやろうとすごく燃えていました。



――一方、c/w曲の「Coward」もパワーを感じる楽曲ですね。

ZAQ これはもう、メンヘラ曲です(笑)。恋の歌を最近書いていないという話を皆でしていて書きたくなったんですけど、どういう曲を皆が聴きたいのかと思い、Instagramで募集したんです。その意見を「ギュン!」って押し潰した曲がこれです(笑)。

――(笑)。意見をどうまとめたらこうなるのか、もう少し詳しく教えてもらえませんか?

ZAQ ZAQが2016年にリリースしたシングル「hopeness」のc/w曲で、「ヒロインは嘘」という曲があるんです。自分が浮気相手になってしまった女の悲しいミドルロックソングなんですけど、これがコアなファン達にすごく刺さっているんです。で、そういう、女のドロドロした感情を聴きたいという意見も何通かあったんですよ。一方で、ライブで盛り上がれるバチバチにかっこいい曲、という意見もあり、A面の「ASEED」もそういう曲なので、続けて聴いたときに馴染めるところを狙ってもいます。だから歌詞は、悲しい恋をしている人の別れの歌で。でも曲調はマイナーロックですごくかっこ良く仕上げているんです。

――歌詞から浮かぶ曲のイメージと実際の楽曲が真逆な感じがするのはそういうことなんですね。

ZAQ アンバランスなものを混ぜているんですよね。でも実は、女の子が共感しやすいシチュエーションラブソング。最初に、彼女になりたいというところから始まり、彼女がいることに気づいて「世界一ムダな朝帰り」で終わる、という状況説明をしているんですよ。これだけでドラマを見ているような気分になるので女の子の心を掴めちゃうんですね。「何これ、どういう状況?」みたいに。だから、この曲もストーリーテラーなんですよ。未練がある女の、言葉にできない感情を叫んでいる歌。ぜひ、浮気するクズな男なのにどうにも離れられない女の子たちに聴いてほしい。

――聴いて、「目を覚ませ」と。

ZAQ そう。「ありがと、さよなら」と言え、と。

――「ヒロインは嘘」といい、実はこういう歌詞が得意ですよね。

ZAQ 得意ですね。人間のドロドロした部分がめっちゃ好きなので。どんなアイドルにも黒い部分はあると信じているから、私はそこを書きたいです。いや、ひたすら「陽」な子もいますよ。でも、家では膝を抱えてお風呂に入っていてほしいんですよ。

――まさに、ZAQのシンガーソングライターな部分から生まれた歌なんですね。

ZAQ あ、そうなんですよ。シンガーソングライターっぽいことがしたかったんです。女の子の揺れ動く機微を描くというか。女性のずる賢い部分を描きたくて。なんて言うとジェンダーの問題になってきますけど。

――むしろ「ずる賢さ」を持たずにいられない社会状況がまだ存在しますよね。そこから生まれた女性性を書いている、と。

ZAQ だから、悲劇ではあるんですけどそうは見せていない歌、ですね。最近、c/w曲でも作品に寄り添うような曲が多かったので、どこか俯瞰でZAQを見続けている感覚でした。「ZIGZAG」とか。だけど、心の奥底にあるドロドロした部分を出すと皆の心に響く、ということも知っているので。あ、別に私の経験を歌ったわけじゃないですよ(笑)。ただ、ギター1本で自分の気持ちをかき鳴らす女ってかっこいいじゃないですか?歌っている人が書いたと思わせる歌詞が説得力のあるライブを生むところがあるので。

――では、ライブで「Coward」を歌うときはピアノの弾き語りでねっとりと。深い共感というか、答え合わせが得られそうですね。

ZAQ 泣きながら歌ってみるとか!でも、ピアノだけにするとねっとり度が過ぎちゃいそうな曲ですね(笑)。

【連載企画第3回:ZAQUIZ!】



Q.3 ZAQの好きな色はなんでしょうか?

▼正解は第4回インタビューで!

連載企画第2回:ZAQUIZ!の答えは……

Alteration(2013/01/23)

Addiction(「NO RULE MY RULE」2016/07/13)

Against The Abyss(2019/02/27)

でした!

INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司

●リリース情報

22nd シングル

TVアニメ『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』オープニングテーマ

「ASEED」

2022年4月20日(水)発売

品番:LACM-24239

価格:\1,320(税込)

<収録曲>

M1. ASEED

作詞・作曲・編曲:ZAQ

M2. Coward

作詞・作曲・編曲:ZAQ

各インストも収録の計4 曲収録

●9ヵ月連続リリース情報

■第一弾

「ZIGZAG」

 

作詞・作曲・編曲:ZAQ

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■第二弾

TVアニメ『薔薇王の葬列』第1クールエンディングテーマ

21st シングル

「悪夢」



発売中

品番:LACM-24243

価格:\2,530(税込)

<収録曲>

M1「悪夢」

作詞・作曲:ZAQ 編曲:石川智久

M2「耺」

作詞・作曲・編曲:ZAQ

各インストも収録の計4 曲収録

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■第三弾

「ANTHEM」



作詞・作曲:ZAQ 編曲:ZAQ・RINZO

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