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「差別主義者」などのツイートで名誉を傷つけられたとして、明治天皇の玄孫(やしゃご/孫の孫)で作家の竹田恒泰さんが、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんに損害賠償などをもとめていた裁判で、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は4月21日までに、竹田さんの上告を棄却した。これで、竹田さんの敗訴が確定となった。

ツイートは「公正な論評」であると認めた一審、二審判決に続いて勝訴した山崎さんは同日、記者会見を開いて「これだけでは終わらせず、裁判を本にします。自分が当事者になった戦史を書くのは初めて」と語った。

●ツイートは公正な論評であるとの判断

山崎さんは2019年11月8日、富山県朝日町の教育委員会が講演会の講師として竹田さんを招いたことについて、「この人物が教育現場に出してはいけない人権侵害常習犯の差別主義者だとすぐわかる」などとツイートした。

竹田さんはこれを含む5つのツイートを名誉毀損だとして、損害賠償やツイートの削除、謝罪広告の掲載を求めて裁判を起こした(2020年1月20日)。

一審の東京地裁(2021年2月5日)も、二審の東京高裁(同年8月24日)も、5つのツイートすべてが「公正な論評である」として、違法性を認めず、請求を棄却していた。

●山崎さん「裁かれているのは竹田さんだ」

勝訴した山崎さんは「裁判には不確定要素はあり、予想外の展開が起こるのではという不安は頭の片隅にあり。ひとまず安堵した」と胸をなでおろす。そのうえで、竹田さんの起こした裁判は「スラップ訴訟」(いやがらせの訴訟)だったと指摘する。

「一審の(竹田さんによる)陳述書はすごい分量でしたが、控訴審は弁護士から1通も準備書面がなかった。やる気はなく、アリバイ的な控訴で、勝つつもりもなく、物的心理的ストレスをかけているのだと感じました」

今回の裁判では、形式上、被告の山崎さんが"裁かれる立場"だったが、「裁判官は竹田恒泰氏を裁いた」と強調する。

「竹田氏は一審の途中から(ツイッターで)裁判に触れなくなりました。個人的な認識ですが、負けて悔しいというのもあるでしょうが、判決文を読むと、裁判官は竹田恒泰氏を裁いたとの認識があります。竹田氏も裁かれたという認識があるから触れないのではないでしょうか」

東京高裁の控訴審判決では、新たに次の文言が追加された。

〈被控訴人(=山崎さん)が、上記のような手法をも用いる控訴人(=竹田さん)の活動ないし言動に関し、『人権侵害常習犯の差別主義者』等の強い表現を用いて批判的な意見ないし論評を表明したことも、ツイートとして相当と認められる範囲にとどまるというべきである」

「これを普通に読めば、裁かれているのは竹田氏なんです。過去に竹田氏がどんな言論をしてきたか精査した上で判決をくださったはずです」(山崎さん)

●竹田さんが大学で人権を教えるのは「ブラックジョーク」

山崎さんは竹田さんによる著作を会見で手にしてみせた。

「韓国について『民族まるごとモンスタークレーマー』とか民族差別を露骨に書いている人です。そういう人がテレビに出たり、大学の講師として学生に現代人権論を教えたりしている。ブラックジョークですよ」

竹田さんを講師として迎えた大学や、起用したテレビ局にも見解を問いたいとしている。

「判決が出たことでテレビ局の倫理観も問われる。公共の電波にのせるにふさわしい人物か聞いてみたい」

●内田樹さん「竹田氏は自分の名誉に550万円の値をつけたのか」

山崎さんを支援する会代表で、神戸女学院大学名誉教授の内田樹さんは、言論の場でぶつかり合うべきだったと批判する。

「元々、先方も山崎さんも言論人であり、山崎さんが不当なことを言っているのならば、反論すべきだった。それをいきなり損害賠償をもとめたことに違和感がある。名誉の値段なのでしょうか。自分の名誉に550万円の値をつけたのかと。元々これは裁判にすべき話ではありません。スラップ訴訟と言ってよいと思います」

内田さんが協力を求めたところ、のべ1414人から1200万円を超える支援金が集まった。裁判費用など諸経費に総額250万円かかったが、多くは余ることになった。

裁判の経験をまとめて本にするという山崎さんの活動のサポートのほか、他にもスラップ訴訟で困っている市民へのサポートとしての使い道を考えているという。