アメリカ・ニューヨークの商品先物取引所であるニューヨーク・マーカンタイル取引所で、現地時間の3月6日にWTI原油先物の価格が急騰し、2008年以来の最高水準を記録したことが報じられています。原油先物価格の高騰は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻やイランの核合意に関する協議の遅れが原因とのことです。

Crude oil - 2022 Data - 1983-2021 Historical - 2023 Forecast - Price - Quote - Chart

https://tradingeconomics.com/commodity/crude-oil

U.S. crude oil tops $130 a barrel, a 13-year high on possible Western ban of Russian oil

https://www.cnbc.com/2022/03/06/us-crude-oil-jumps-to-125-a-barrel-a-13-year-high-on-possible-western-ban-of-russian-oil.html

アメリカにおける代表的な原油先物商品であるWTI原油先物の価格は、3月6日の取引で8%以上も高騰し、1バレル=125ドル(約1万4400円)を超える2008年以来の最高値を記録しました。一時は1バレル=130.5ドル(約1万5000円)にも達したとのことで、調査企業のAgain Capitalに務めるJohn Kilduff氏は、すでに高いガソリン価格がさらに押し上げられるだろうと指摘しています。

さまざまな商品取引価格のチャートを発表しているTRADING ECONOMICSが公開しているWTI原油先物の3月第1週目のチャートがこれ。3月初めは1バレル=100ドル(約1万1500円)を下回っていましたが、急激なスピードで価格が上昇しています。



1カ月のチャートを見ると、2月の時点では1バレル=90ドル(約1万350円)ほどだったことがわかります。



半年のチャートがこれで……



1年のチャートがこれ。2022年3月の価格上昇がいかに急激なのかがわかります。



5年のチャートを見ると、2020年3月頃にWTI原油先物がマイナスを記録していますが、これは新型コロナウイルスの感染拡大による企業活動の抑制や、外出規制によるガソリン需要の低下が原因でした。



10年のチャートがこれ。2022年3月のWTI原油先物は過去10年で見ても最高値です。



25年のチャートを見ると、2000年代後半にはWTI原油先物価格が過去最高値を続続と更新し、2008年9月には1バレル=140ドル(当時のレートで約1万5000円)を記録していることがわかります。なお、その直後の急落はリーマン・ショックによるものです。



1983年5月にWTI原油先物が上場して以降の価格推移は以下のようになっています。



WTI原油先物価格が高騰した原因の1つは、ロシアがウクライナに軍事侵攻を行ったことへの制裁として、アメリカや同盟国によるロシア産原油の禁輸が検討されていることです。アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は3月6日、「ヨーロッパの同盟国とロシア産の原油の輸入を禁止することについて積極的に議論している」と話したことが報じられています。すでに西側諸国のバイヤーはロシア産原油を避け始めているそうで、JPモルガンの分析によると、ロシア産原油の66%がバイヤーを見つけるのに苦戦しているとのこと。これに対し、サウジアラビアの国営石油会社であるサウジアラムコは、4月のアジアやヨーロッパ向けの原油販売価格を大幅に引き上げています。

また、これに加えてイラン核合意の立て直しに関する協議が停滞し、イラン産原油の輸出再開が遅れる見通しであることも原因となっています。イラン核合意の協議は最終段階に入っていますが、協議に参加しているロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、イランとの貿易・経済・軍事技術の協力を妨げないようにする確約を求め、ロシアに対する制裁が強化される中でアメリカをけん制しました。

イラン核協議 ロシアがアメリカをけん制 ウクライナ情勢影響か | イラン | NHKニュース

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220307/k10013517931000.html



原油先物価格の上昇は日本でも起きており、東京商品取引所で中東産原油の先物が急騰し、一時は指標価格が2008年以来の高値を付けたことも報じられています。

東京原油が急騰 一時13年半ぶり7万8千円(共同通信)|熊本日日新聞社

https://kumanichi.com/articles/579854