「実際のろう者が使う手話をスクリーンで見てほしい」。米映画『コーダ』手話演技監督の決意
■「歴史や文化に敬意を払いながら、映画のなかでその土地の手話を正確に表現することを目指しました」
─映画『コーダ あいのうた』(以下、『コーダ』)を通して、「DASL」という役割を初めて知りました。映画制作においては、どのような仕事をするのでしょうか。
ウェイルズ:本作で私が「DASL」として行なったのは、ろう者の持っている歴史や地理的条件に関する知識、私自身の経験などさまざまな要素を伝え、映画の内容に反映させることでした。そのために手話における適切な表現を選びとっていきました。
─同じ「ASL」でも違いがあるんですね。
ウェイルズ:私はニューヨーク州に住んでいるんですが、今回の映画の舞台はマサチューセッツ州なので、その地域で使われている手話にあわせることが重要でした。
例えば、手話で「ボストン」と言いたいとき、ニューヨークとマサチューセッツでは最初の音の「B」から表現が違う。また「ロブスター」という単語であれば、マサチューセッツ州の多くの地域では、(両手でピースサインをして、指をチョキチョキ動かす)こんなふうに表すんです。でもニューヨーク州の私が育ったエリアでは、(両手で親指と残りの4本指をハサミに見立てて、パクパク動かす)こういうふうに表すんですね。
同じ東海岸にある地域でも、手話がこんなに異なる。それは聴者が口で話すときと同じく、「アクセント」と呼んだりします。そういった違いを育んだ歴史や文化に敬意を払いながら、映画のなかでその土地の手話を正確に表現することを目指しました。
─面白いですね。でもここまで違うと、地域によって話が通じなくなったりしませんか?
ウェイルズ:それは、ろう者の多くに備わっている能力が発揮される場面ですね。例えば聴者は、方言でアクセントが違ったりすると、理解に時間がかかったり、ときには通じない場合もあると思いますが、手話の場合は身振り手振りなので、より感覚的にわかるというか。わからない言葉に、もっと臨機応変に対応していくことができる。
手話でのコミュニケーションは、そういう面に長けていると思いますし、それ自体が文化なんです。その場その場で言葉の違いを楽しみ、お互いがわかり合えたときに、手話っていいなあと実感するんです。
