レディー・ガガが信じた「悪女」の別の顔。『ハウス・オブ・グッチ』に重ねた女性たちへの思い
■メロドラマ調で描かれるグッチ一族のスキャンダル。レディー・ガガは「女性と生存の物語」を見出した
リドリー・スコット監督作『ハウス・オブ・グッチ』は、賛否両論を巻き起こした。関係者が存命の殺人事件を扱いながら、滑稽なところもあるメロドラマ調だったのだ。
パトリツィアとアダム・ドライバー演じるマウリツィオの出会いから暗殺までを描くなかでは、グッチ家の男たちの骨肉の争いも描かれている。ベテラン俳優が揃うファッション帝国版『ゴッドファーザー』といった趣もあるが、ジャレッド・レトが「純朴な愚鈍」かのように演じるパオロ・グッチ(グッチ創業者グッチオ・グッチの孫の一人で、マウリツィオの従兄弟)を筆頭に、コメディーのような雰囲気も醸している。こうした作風、その内容は、実際のグッチ一族の末裔の怒りを買い、抗議の声明を出されるまでに至った。
ここで重要なのは、レディー・ガガの起用理由だ。リドリーは、パトリツィア役の条件として、美や危険性に加えて、知性を挙げている。一方、劇中では、上流階級出身ではないパトリツィアとグッチ家の階級格差が強調されていく。舅から拒絶されたパトリツィアは、のちに、乗り気ではない夫を促すかたちで、ファッション帝国を自分たちのものにしようと画策する。彼女は「グッチ家に入りたいが入れてもらえない人物」なのだ。
夫を出世させたパトリツィアが、グッチの偽物商品を取り締まろうと社内で提言する場面がある。しかし、彼女に対し、アルドは「男の話に女が口を出すな」とはねつける。このあと、アルドは話をつづけるが、カメラがピントをあてるのは、不服そうに煙草を吸うパトリツィアの顔……リドリーいわく、グッチ家とのあいだに決定的な溝が生じた瞬間だ。
じつのところ、現存のグッチ家が最も怒りを示したのが、こうした描写だ。『ハウス・オブ・グッチ』におけるパトリツィアは、ビジネスの野心と素養がありながらも、グッチ帝国の性差別的な男たちに軽んじられてきた存在として描かれているのである。自身も女性として音楽業界をサバイブしてきたレディー・ガガは、本作を「女性と生存の物語」にしたかったと語る(*1)。
