お門違いでは?ワクチン接種後の“満足度調査”に疑問の声、多数

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岡山大学がモデルナ製ワクチンを接種した人に対するアンケート調査結果を発表しました。

しかし、そのアンケート項目に否定的な意見が寄せられています。

ワクチン接種は「満足」だった?

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岡山大学では、大学拠点接種で行われた武田/モデルナ社新型コロナワクチン接種後1か月後の副反応や満足度を評価する追跡調査(※1)を実施しました。

この調査に、岡山大学教職員及び学生の合計3447人が回答。アンケートでは副反応についてなどの質問項目が並ぶものの、中には「接種から1か月経って、ワクチンを受けたことに満足していますか」といった質問も。これになんと87.2%が「満足している」と回答しています。

「満足度」を問う調査は適切なのか?

Twitterでは、“医療の疫学や調査において「満足」などという漠然とした主観的要素を盛り込むことに対し強い違和感や嫌悪感を覚えます 副反応の調査であれば「満足か?」ではなく「何をもって満足(不満)としたか」まで突き詰めなければ、何のための質問なのかが不明です”といった声や、“ワクチン製造期間は通常5年〜10年です。何故こんなにかかるかというと長期間の治験を行わなくてはならないからです。身体に問題はないか、とね。1週間だけ見て「満足」なというのは奇妙に思います”といった、ワクチン接種の「満足度」を問う調査内容に違和感を覚える人が続出しました。
 
筆者はこのアンケートを見たときに、産業医の大室氏が『来週に迫った“東京五輪”の「安心・安全」について』という記事で語ったことを思い出しました。

まず安全と安心を分けて議論をしましょう。安全に対する議論は取れるリスクを定量的に定めることですのでここは理屈で定量的な議論ができます。一方の安心は理屈ではなく感情です。ここを一緒にして議論をすると話が進みません。

『来週に迫った“東京五輪”の「安心・安全」について』

これは、2011年東日本大震災の際、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の統括産業医を務めていたという大室氏が、社員が安心して働くための施策を考える会議で発言したものです。地震とウイルスという状況が違いますが、新型コロナウイルスでも、上記は当てはまるのではないでしょうか?

今回の新型コロナワクチンの満足度を問う質問を考えると、ワクチンの「安全」「安心」どちらの観点からみても適切であったとは言えません。それらを踏まえても、一体何のための調査だったのでしょうか?

ワクチン接種はセンシティブな問題に

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岡山大学の頼藤教授はこの調査結果を踏まえ、「接種を考える際の判断や準備の参考にしていただけますと幸いです」とコメントしています。

この言葉から、主にワクチン接種を迷っている人や今後ブースター接種を考えている人にとって参考になるようにと「満足度」を問う項目を設けたとも考えられます。しかし接種を控えている人が懸念している点は「満足度」とは別の観点であると考えられ、この指標から得られる意味合いがズレていることから、項目として不十分だったように思われます。

また接種を控えている人は、重度な副反応や5〜10年後の長期的な副反応を恐れている人も多いでしょう。確率論ではなく、“もし自分が当事者になったら……”という将来的な不安が大きいのではないかと考えます。

一方、「満足度」という指標から読み取れるのは、結果として「ワクチン接種に重大な問題がなかった」と考える人が多いということです。また、何に対する「満足度」なのか不明確な質問ではありますが、「接種したから安心」「副反応が消えたから大丈夫だ」というような漠然とした安心感を得られたと感じた人は多いのではないかと考えます。

約9割にものぼる人がワクチン接種を「満足だ」と感じたとのことですが、重度な副反応や長期的なリスクなどを見据えた調査結果にはなっておらず、ワクチン接種を控える人にとっての参考材料になるとは言い難いです。

ワクチン接種に関しては、ますますセンシティブな問題になりつつあります。接種側の意見として発信する場合は、アンケート項目について詳細な定義や意図を説明する必要があるでしょう。

【参考】
※1 武田/モデルナ社新型コロナワクチン接種 1 か月後追跡調査報告〜接種 1 か月後の副反応の有無や満足度を評価〜-岡山大学
※@umi_ytr・@HS_kt/Twitter
※Krakenimages.com・Viacheslav Lopatin・BaLL LunLa/Shutterstock