「閉経したら女じゃなくなるの?」「更年期は誰にでもあるものなの?」「いつ閉経するの」--いつかは訪れると思っていても、その実態がわかりにくい閉経や更年期について、産婦人科専門医・高尾美穂先生がわかりやすく解説。閉経前後からの十数年を上手に乗り切るコツをお伝えする『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)が10月13日に発売されました。女性の人生の大転換機である40代。人生100年時代を健やかに過ごすために必要なこととは? 特別に全4回にわたって本書の一部を公開します。第2回は閉経のサインについて。

40代以降、こんな症状があったら 更年期のはじまり

月経不順、疲れや老化を感じはじめたら

更年期がいつはじまったのかは、閉経したときから逆算してわかります。つまり閉経しない限り、更年期のスタートがいつなのかはっきりしません。ですから、閉経していなくても、40歳を過ぎたら「もう更年期に入っているかな」「更年期の不調もあり得るかも?」と考えて準備しておくことが大切です。

更年期に入っていることを示すもっともわかりやすいサインは、月経周期の乱れです。それまではきちんときていた月経が、何カ月もこなかったり、次の月経が半月程度できたりするほか、経血量が以前よりへった、あるいはふえた、長引く、短期で終わるなど、現れ方はさまざまです。

そのほか、肩こりや腰痛、不眠、イライラ、うつ状態、ホットフラッシュ、冷えなど、訴える症状は多岐にわたり、個人差が大きいのが特徴です。

更年期症状は体に現れる症状とメンタルに現れる症状に大別できます。

これらは白髪や老眼、抜け毛や薄毛など、加齢からくる症状と同時に感じやすく、身体症状としてとくに多いのが、ホットフラッシュというのぼせやほてりです。急に顔がカーッと熱くなり、汗が大量に出て止まらなくなったりします。

くわしくは後述しますが、これは女性ホルモンの乱れによって自律神経のコントロールがうまくいかなくなり、血管の収縮と拡張を調節する機能が阻害されることが原因です。

そのほか、イライラや神経過敏、うつ状態などメンタルの不調に悩む人も少なくありません。こうした症状が起こりやすいのは、更年期という年代にあります。

女性の40代は、ある程度の経験を重ねてきた人生の成熟期。結婚や育児、仕事など、脇目も振らずひたすら全力で走ってきた人生の折り返し地点にある年代です。

そんな人生の曲がり角には、当然環境の変化も伴います。たとえば、子育てに奮闘してきたけれど、子どもが思春期に差しかかって反抗期を迎えたり、成長した子どもが就職や結婚で自立し、夫婦二人だけの生活になったりするなど、家族関係に大きな変化が生じます。

あるいは、独身で順調にキャリアを積み重ねてきたけれど、体力が衰えてこれまでのような頑張りがきかなくなったり、転職や配置転換などによる環境の変化にとまどったりする人もいるでしょう。

さらには、昨今の晩婚・晩産化で、40代での出産もめずらしくありません。体は更年期で体力が低下しているのに、育児はフル稼働という人も少なくないでしょう。

年齢とともに性交渉の頻度が少なくなり、パートナーから女性として見てもらえないと感じるなど、喪失体験をするケースもあるでしょう。

つまり、身体的な変化とともに、環境の変動が起こりやすい時期であることが、更年期症状を引き起こす大きな要因なのです。

このように年齢的に不調が起こりやすい状況にあっても、さまざまな対策があります。

次章以降、生活習慣の工夫やセルフケア、婦人科治療など、具体的な方法を紹介していきます。

ちなみに、私がたくさんの女性と接して感じていることは、女性はあまりにも頑張り屋さんが多いということです。真面目で一生懸命で、家族のため親のためなど、自分以外の人のために役に立ちたいという自己犠牲型の人は、更年期症状が強くなりがちです。

更年期はいままでの人生を振り返り、体調や人間関係の状態を確認する棚卸しの時期。ていねいに自分の体と向き合い、ケアしましょう。

■書籍情報

『いちばん親切な更年期の教科書【閉経完全マニュアル】』(世界文化社)1,760円(税込)好評発売中