涙の逆転ゴール… 降格圏脱出の湘南、MF山田直輝が試合後に目を潤ませた2つのワケとは?
J1リーグ33節、ホームに横浜FCを迎えた大一番は2対1で湘南に凱歌が上がった。湘南は16位に浮上。勝点「1」差で自動降格圏を抜け出した。
逆転の立役者はMF山田直輝。
78分、FW大橋祐紀の同点弾の起点となるや、89分、コーナーキックからFW町野修斗が頭で落としたボールをジャンプ一番、頭でそらした山田にとって珍しいゴールとなった。
「空の近くから見てくれたかなと。そういう力がみなぎっていた」
「おばあちゃんの力を借りられた。ありがとうという気持ち」
終了後、両手を天にあげ、祈りを捧げるようにひざまずき、感謝を示した。
試合後の涙はプロになって2度目。1度目は浦和在籍時の2011年。鹿島とのナビスコカップ決勝戦。延長戦にもつれこんだ試合は1-0の敗戦。表彰台を見上げた山田は涙を流した。
「あのときは悔し泣きだったので」と回想している。
しかし、今回の涙の主成分は「亡き祖母」だけではない。山田なりの忸怩たる思いがあった。
今季、山田はリーグ32試合のうち26試合に先発出場。プロになって初めてケガなく、安定し試合に出続けている。一方、果たして勝利に貢献しているか、自らに問えば、納得できなかった。
せっかく試合に出してもらっているのに結果が出せてないという歯がゆさとともに出ていない選手の分も戦うという責任の重さを感じていた。
「自分の良さが出せれば」「自分の土俵で戦えれば」
思うようなプレーができないことに苛立ちを覚えていた。
結果が出なければ、序列に変化は出る。
山口智監督就任6試合、山田は4試合ベンチスタート。ルーキーMF平岡太陽とレギュラー争いをしている。それでも山田はベンチから指示の声を送ることでチームを助けた。また良い内容ながら勝てない状況に「ホントに勝ちたい。勝ちたい」と吐露したこともあった。
横浜FC戦の涙はようやくもぎ取った勝点3に関われた充実の涙、責任を果たせた達成感の涙かもしれない。
「一番、苦しんだのは(山口)智さんだと思う。良い内容なのに勝てず、選手としては申し訳ない気持ちだった。自分のゴールで勝利を届けられたことは価値があることだし、智さんにやっとおめでとうと言えた」
山田の表情は綻んだ。
【J1第33節PHOTO】湘南 2-1 横浜FC|湘南の山田が終了間際にゴール。劇的な逆転勝利で降格圏から脱出
ピッチに立つ責任と言えば、DF石原広教も同じ。
この試合で失点に関与。その後、ベンチに下がった石原は終了のホイッスルが鳴った瞬間、ひざまずき、タオルで顔を覆っていた。表情は分からなかったが、こちらが心配するくらい長く続いた。
こちらは安堵の思いか。
「それだけ選手が背負って、覚悟をもって試合に臨んでいるなによりの証拠。それだけ選手はギリギリで戦っている」と山口監督。
聞けば、石原は人一倍、責任感が強い選手。駆け寄るチームメイトも石原の気持ちが痛いほど分かったはずだ。
苛烈な残留争いを勝ち抜くには何が必要か。山口監督はこう断言する。
「どれだけ自分を、どれだけチームを信じ切れるか。そこに尽きる」
「智さんは常に自分のやっていることを信じていると言ってくれるし、選手のことも信じている。今日、結果を出せたことでみんなまた上を向いていける」(山田)
札幌、広島、仙台、徳島、G大阪。待ち受けるはひりつく残り5試合。
涙のむこうにあるのは嬉し涙かそれとも……。命運はチームの一人ひとりが握っている。
取材・文●佐藤亮太(フリーライター)
