新型「カローラクロス」登場でトヨタSUVが万全の体制に! 魅力的でも“爆売れ”とならないワケ

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セグメント違いながらヴェゼルとライバルの新型カローラクロス

 トヨタの新型SUV「カローラクロス」が2021年9月14日に発売され、本格的な営業活動が始まった。

 出足を調べてみたら、基本的に好調。ただ「爆売れのため納期1年以上」みたいな大ヒットということではないようだ。

独自のフロントフェイスが与えられた日本仕様の新型カローラクロス

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 取材した2021年9月18日時点での納期は、地域差もあるけれど最短で12月上旬とのこと。グレードによって生産開始が2022年2月予定になっているらしく、納期はそれ以降になる。

 いずれにしろ新型カローラクロスの購入を考えているなら、納期待ちの長さが弱点になることもないのでご安心を。

 もうひとつ良い材料がある。新型車といえば値引きゼロというイメージだろうけれど、新型カローラクロスは最初から下を見て10万円くらいの条件を出してきている。なかには「そんなに!」という条件もあった。さすが「カローラ」だと妙に感心しきり。

 競合車として出てくるのは金額的に近いホンダ「ヴェゼル」だという。デビューする前からガチになると思われていたが、その通りになった。

 本来なら「フィット」級BセグのヴェゼルとCセグの新型カローラクロスは車格にしてワンランク違うのだけれど、実車を見ると同じくらいのサイズ感。リアシートに座ったら圧倒的にヴェゼルが広い。両車で迷う人も結構いると思う。

 意外なことにマツダ「CX-30」とのバッティングはほとんどないという。そもそもCX-30は売れていないため(8月の登録台数を見るとヴェゼル10位。CX-30は41位)、ショッピングリストに載せている人が少ないのかもしれない。

 ということで他銘柄だとヴェゼルとライバルいうことになります。トヨタ車を考えている人からすれば、新型カローラクロスは「ヤリスクロス」と「RAV4」の中間です。

 ここまで読んで、「トヨタには『C-HR』があるでしょう」と思うかもしれない。確かにC-HRもカローラと同じプラットフォームを使うCセグメントだし、価格設定だって極めて近い。

 けれどC-HRの売れ行きはマイナーチェンジでサスペンションのコストダウンなどをおこなって以後、急激に減少してしまった。

 2021年8月の登録台数は1304台で29位。いま売れ筋になっているSUVの台数として考えたら圧倒的に少ない。

 C-HRを見るとわかる通り、TNGAプラットフォームの「リアシートが狭い」という弱点をリカバリー出来ず、成人男性だと明らかに物足りない。

 キャビンスペースが広いというのもSUVの魅力ながら、C-HRはクーペのようなスタイルでスポーティさを重視していることからそれもさほど期待できない。

 ということでトヨタのSUVラインナップを見ると、大雑把にいって180万円スタートのヤリスクロスと、274万円スタートになるRAV4の間がすっぽり空いてしまっていた。

 だからこそ、ヴェゼルにユーザーを持っていかれていると思う。そこに、実質224万円スタートの新型カローラクロスを入れてきたワケです(最廉価グレードは199万9000円だが基本的にビジネス向け)。

 なるほどヤリスクロスだとファーストカーとして使うには少し物足りない。かといってRAV4や「ハリアー」だと大きい。新型カローラクロスならどう使ってもいいサイズです。トヨタの商品ラインナップとして万全になった。

 新型カローラクロスをCセグメントとして評価すると、強いていえばリアシートがやっぱり物足りない。TNGA GA-Cプラットフォームの弱点を完全に解決出来なかったんだろう。

 もうひとつ、新型カローラクロスをSUVとして使うことを考えた場合、160mmという最低地上高は圧倒的に物足りない。

 ヴェゼルを見ると195mm。RAV4やハリアーだって195mmある。これは、雪道や未舗装路など走る予定がある人にとっては大きなウィークポイントになってしまうだろう。

 はたまた4WDを選ぶとリアのモーターは7.2馬力。走り出すときだけしかアシストしない。

 日本のユーザーは驚くほど慧眼を持っている。魅力的に思える新型カローラクロスながら爆発的なヒットになっていないのは、スペックの物足りなさがブレーキになっているのかもしれません。

 新型カローラクロスの購入を迷っているのなら、今後辛口の試乗レポート(最初は皆さん甘い評価しかしない傾向)が出てきてから自分で吟味し、契約するのもいいと思う。