出場はなかった神戸MFイニエスタと鈴鹿のミラグロス監督の2ショット【写真提供:©鈴鹿ポイントゲッターズ】

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イニエスタ擁する神戸と天皇杯2回戦で対戦 YouTubeチャンネルで試合を生配信

 JFLの鈴鹿ポイントゲッターズは、16日に行われた天皇杯2回戦でJ1ヴィッセル神戸と対戦。

 試合には0-4で敗れたが、組織的なサッカーは称賛され、その名前は広く知れ渡った。この一戦をクラブ公式YouTubeチャンネルで放送した経緯や反響を、吉田雅一社長に訊いた。

 鈴鹿は2019年1月、スペイン国籍のミラグロス・マルティネス監督が、日本の男子トップチームを率いる初の女性指揮官として就任。1年目で16チーム中12位の成績を残してJFL残留を果たすと、2年目の昨季は6勝3分6敗の成績で5位に導き、契約を更新。今季はここまで12試合を消化し、9位(4勝3分5敗)につけている。

 5月23日に行われたFC刈谷との天皇杯1回戦は、2-1で逆転勝利。2回戦の対戦相手は、マルティネス監督と同じカスティーリャ・ラ・マンチャ州の出身で、地元クラブのアルバセテ・バロンピエ出身でもある元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタやMFセルジ・サンペールを擁する神戸となった。FC刈谷戦が無観客試合だったこともあり、吉田社長は神戸戦のYouTube配信を検討し始めたという。

「天皇杯1回戦は無観客試合でファンの方には申し訳ないと思いつつ、YouTube配信をやってほしいという声もありました。2回戦はヴィッセル神戸にイニエスタ選手、我々にはミラ監督がいて話題性はあるので、テレビ放送をしていただけるかと期待していたんですが、されないことが決まって。コロナ禍、18時キックオフで三重県から(試合会場のノエビアスタジアム神戸へ)行けない方もいるだろうし、スペインの方も見たいと思ってくれていると感じていたので、社内でも改めて相談してやろうと決まりました。やったことはないけど、『やってしまえ!』という感じです(笑)」

 放映権や機材代などを含めれば、総額は約200万円。それまでYouTubeで試合の生配信をした実績はなかった鈴鹿だが、機材トラブルの可能性を排除する体制を整えるとともに、「DAZN」などで活躍する寺西裕一アナウンサーを実況に迎え、怪我でベンチ入りができなかったMF佐藤和馬をサポートにつけた。吉田社長も、考えられるリスクはすべて回避できるように努めたと明かす。

チャンネル登録者数は400人から3100人超に急増

「『放送できませんでした』『途中でネット配信が終わりました』は絶対やってはいけないと思い、そのリスクマネジメントに努めました。YouTubeの配信は、カメラで映像を撮って、音声を入れ込んで、それをエンコーダに流し込んで届けるイメージ。動画と音声は何かあってもすぐに対応できるように、地元のテレビ局さんに依頼して、カメラマンと音声の方を1人ずつ用意していただきました。JFLチャンネルとDNP(大日本印刷)の技術者さんにもモニタリングしてもらいながら、現場にも1人来ていただいて。

 あと、(映像の)垂れ流しだと楽しみも半減してしまうので、実況・解説がいたほうがいいなと。我々がやっても良かったのですが、鈴鹿寄りにやってはいけないので、神戸さんのことを詳しく知っているプロの方にお願いして、50/50の感覚でアプローチしたほうがお互いに気持ちよく終われるかなと考えました。怪我をしてしまった佐藤和馬も、フロントでも働いているので、前日に聞いたらやりますと快く引き受けてくれました」

 試合後には、ツイッターなどインターネット上で鈴鹿のYouTube配信を称える声が多く見受けられた。天皇杯2回戦の放映権を申請した時点で約400人だったチャンネル登録者数も3160人にまで急増している。吉田社長も、改めてネット社会の影響力の大きさを感じたという。

「やってくれて良かったと言ってくださる方も多く、反響は十分あったと思います。本当は(登録者数)5000人までいきたかったんですが、そこは少し我々のPR不足でした。1回やってしまうと皆さんの期待値は上がるので、今後ホームゲームをどうしようかなと(笑)。将来的には自前で放送ができれば登録者数も増えていくだろうし、ファンの方が聞いて楽しい放送をお届けできればサポーター獲得にもつながると思います。今回、スペインを含めて世界で映像を見ていただくことができたので、ネット放送は凄い、メディアの在り方は変わりつつあると改めて感じました」

 鈴鹿の挑戦は、クラブとして新たな可能性を見出すものとなるかもしれない。(Football ZONE web編集部)